115話:タンジーとアザミ
蒼矢、暴走開始
「な、貴様どこから!」
「うーん、説明する必要も無いんでしませんが。ていうか、その花見て何も思わないんです?」
「可愛い花じゃないか」
「ふーん・・・そっかそっか。なら教えてあげますよ」
そして背後から聞こえる
「ぎゃぁぁ!」
突然の悲鳴。
日本刀を持った男が大臣の側近の腹を一突きしていた。
「アザミにもタンジーにも花言葉があるんです。アザミの花言葉は"報復"。そしてタンジーの花言葉は・・・"あなたに戦いを宣言する"ってのがあるんです。もう分かりますよね?遊びに来たんですよ?森山大臣に大切な者奪われた・・・飢えた狼たちがな」
その言葉を皮切りに20人くらいが攻め込む。
「な!?下は何をやっている!!」
「あの警備員達?殺気当てたら泡吹いて倒れましたが・・・何か?」
「ええい、そんなのデタラメだ。銃の使用を許可する。この不届き者達を撃て!!下からの応援を待つんだ」
「ああ・・・やめた方が」
日本刀を持った男に一人が発砲する。したのだが、
「がはっ」
倒れたのは撃った男。
「あーあ、自損かい。こんな男の下で働くからこんな事に・・・ご愁傷様!!」
「貴様、何をした!?」
「ま、銃刀法の整備されてるこの国で警察でもないのに銃使ってる時点で真っ黒確定だから教えてやる必要も無いが、その銃の構造を変えてね。後ろに弾が行くようになってるのさ」
「は?」
「は?なんてすっとぼけるなよ。あんただろ?このやり方見出したの。7番目の犠牲者の時にあんたがやった事を今やってるだけだが?」
「な、何故それを!」
「さあねぇ・・・いや~にしても人間ってのは怖い怖い。まさか犯すだけ犯して反対方向に射出される銃渡してこう言ったんだっけか。"逃げたければどうぞお逃げなさい"って。現世ではなく幽世へお逃げなさいなんて、よくもまあこんな鬱展開思いつくよね」
「お前、あの場にいたのか・・・」
「他にもさ、女陰に大根入れたり、中には焼いたのもあったみたいじゃん。良くさ?こういう権力者の悪事は首突っ込まないやつが賢いとか言われるけど、少なくとも怯えて何もしない事を取り繕って生きるくらいなら、おめえみたいなのバラバラにした方が正しい生き方だと思うんだよね」
「何が言いたいんだ!」
「ん?お前ら大人が腐ってるって話。考えなかったの?どんなに権力があろうと、どんなに経済力があろうと、全ては人間社会の中での優越に過ぎない。最近は、こんなクソ狭い箱庭の中で偉くなる事ばかり考えてる愚者が多いからさ、そろそろ教えてやらないとって思うんだよ。そう、あんたみたいに善悪の判断すら付かなくなった小学生のガキンチョ達にね」
俺は妖刀を抜く。月明かりに光るその刀身に畏怖の感情を皆が覚えた。
「命あっての物種。命あっての権力。力は正しく使わないと・・・命と引き換えになるってね。ここまで沢山人を弄んできたでしょ?なら今度は・・・君が地獄を見る番。それが世の理って奴じゃないのかい?」
同時刻、警視庁。
「総監、ただいまよろしいでしょうか」
「入れ」
時刻は9時近く。警視総監とは言えもう署内にはいないはずなのだが
「こんな時間になんだ」
「文部科学省、森山大臣が襲撃を受けていると」
「何!?そんな事をする奴がいるというのか?特殊部隊を派遣しろ。出来る限りの総戦力を投じるんだ」
「かしこまりました」
そう言って出ていこうとする。が、ここでおかしい事に気が付く。
「待て」
「はい?なんでしょうか」
「そんな重大な案件、私に話を通さなくても対応するべきだっただろう」
「ああ、その事ですか。申し訳ございません。今回ばかりは許可をいただくべきかと」
「何故?」
「え?あ、そういえばもう一つお伝えしたいことがあったんです」
「答えろ」
「・・・分かりましたよ。なら正直に打ち明けさせていただきます」
懐から紙を取り出す。そこには
「わ、私の逮捕状?」
「ええ、最近話題の林の遺棄事件。それと十数年前の女子暴行致死事件。この二つ、あなたが隠しましたよね?それとあなた自身強姦していたと分かってるんですよ。お話お聞かせ願えますか?」
「な、何のことだね」
「とぼけるなよ、森山の協力者あんただろ。証拠はあがってるんだ。大人しく聴取されてください」
「いま私に銃を向けている君達。そこの不届き者を始末しなさい。私の権限で君たちの階級を上げてあげよう。地位が欲しいものは私を守れ」
その言葉で半分が銃口の向きを変える。
「さて、君は確か佐川君だね?ダメだよ?警察ってのはブラックホールなんだ。大人しく上の言うことに従っていれば死なずに済んだのにね」
「半分あんたに向いているのに随分余裕そうだな」
「君を殺してしまえば彼らは私の味方となる。惜しかったね、その勇気に敬意を表し私の手で仕留めてあげよう」
そう言うと懐から拳銃を出す。
「さあ、一転窮地だ。どうする?今謝るなら降格だけで許してあげよう」
勝った。総監はこう思ったが、たった一つ。正義感の強い化け物の事を思い出せなかったのが敗因である。
「聞き捨てならんな。正しきを行う若人を殺す等、貴様が死ね」
佐川に銃を向けていた者達が次々と倒れる。
「遅いっすよ。ま、間に合ったから良かったですけど」
「フンッ、あの化け物に敵わぬと知って落ち込んでいたが、私もまだまだ現役で行けそうだ」
「貴様!凸守か」
「お前などに苗字すら呼ばれとうないわ。全く・・・権力者と言うのはどいつもこいつも。子供が勉強をしないだのなんだの、全て貴様らのせいではないか。人の上に立つ器量のあるものが育たぬのも自明の理よ」
「私の罪は、誰も裁く事など出来ぬ!私は総監、警察のトップだ。私が裁かれればこの国の根幹が揺らぐぞ?」
「貴様、真性の阿呆ではないか?お前にこうして面と向かっている佐川こそが相応しいに決まっておろう。貴様は用済みだ」
「な!?」
「副総監もどうせ加担しているのだ。そんな奴を次期総監に据えるなど断じて許されん。悪との調和を保つのは結構だが、悪に呑まれすぎたな。この大馬鹿」
日本最強と称される男に向けられる銃口の数およそ15。どう考えても詰みだった。
「ボス、協力者が行動を開始しました」
「そうか、いよいよだな。計画を遅らせるというその采配、よくやった」
「ありがとうございます。本来であればハイジャックテロは明日決行だったのを2週間遅らせて正解でした。彼が殺気立っている状況でやれば確実に止められてしまう」
「そうか、I、お前のもう一つの目的は達せそうか?」
「ええ、行くべき場所はもう行ってきました。後は、お礼参りをするだけです」
「・・・Iよ、いや、タイキ。私はね、後悔しているんだ」
「後悔?」
「ああ、君を拾ってきた事は間違っていない。そう言い切れるが、君を裏社会の人間として育てた事、間違いだったのではないかと・・・そう思ってしまうんだ」
「やめてくれボス。俺は今の自分に満足しています。少なくとも馴れ合うだけで己を高めない集団の中で埋没したくはありませんから」
「そうか、お前は・・・本当に優しい子だ」
「本心です。それじゃ、明日もあるのでこの辺で」
「うむ、ゆっくり休め」
「はい、おやすみなさい。ボス」
通信は切れた。
「俺がなよなよしてるからボスが思い詰めてしまう。失態は成果で返しますよ。ボス」




