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11話:怨霊師との邂逅。その時クラスでは・・・

シリアスが続いてます

1年2組は慌ただしかった。クラスメイト、桐生蒼矢が山登りに行った事が判明したからである。


ある者は羨ましい、俺も行きたいと羨み、またある者は本当に山登りなのか。自殺を考えているのではないかと推測し、授業を平静に受けられる状態の者は誰一人いなかった。


普段はクールキャラで通してい東雲 亜矢もその一人である。


(どういう事?彼と別れてから30分も経ってないのよ?そんな短時間で山ですって?まるで最初から学校にくるつもりじゃなかったって事じゃない。どこまで逃げの姿勢なのよ。やっぱりクズなのね桐生君は)


等と考えていると颯斗と煉牙から声をかけられる。


「なあ、東雲。一つ聞かせろ」  「蒼矢と朝会ったって本当なの?」


「ええ、本当よ。それがどうかしたの?」


「だとするならやっぱり・・・」   「そうだね。いつもの蒼矢じゃないと思うよ」


「どういう事?」


「お前も知ってるだろ?昨日あいつが走り去っていったって話」


「ええ、勿論よ。今日の朝それについて聞いたら女として許せない事を言ったから関わるなって突き放したわよ」


「ふむ。東雲、お前はそれが真実だと思ったのか?普段のあいつを知ってるだろ。お前が頼んだことを律義にこなすような奴だぞ」


「それは僕も同感だよ。東雲さん。どうだと思う?」


「それは・・・」


「だいたい、普段お前が便利な奴としか思ってないから話してもらえなかったとは考えなかったのか?実際のところなんて言われたのか教えてくれ」


「分かったわ・・・実は」


と、語りだそうとした時


「あの!桐生先輩が来てないって本当ですか?」


近所の中学校の制服を着た女子生徒が殴り込みでもかけるような勢いで入ってきた。


「君は誰だ?中学校に戻りなさい」


「私が原因なんです。朝先輩が高校生と喋っているのを見ていました。その人がいるなら何を言ったのか教えてください!」


「待ってくれ。君が原因とはどういう事だ?私にはよく分からなくなってきたんだが・・・」


最早担任教師は自分のキャパシティをオーバーしていると投げだしたそうにしていた。


「私よ。朝話していた高校生って言うのは」


東雲が自ら名乗りを上げた。


「遠目から見てましたけど同じ顔ですね。先輩、何を言ったんですか?」


「あなたがしつこく誘うから無理矢理逃げたって聞いてるわ。後輩の女子が勇気を出して誘ったというのにあんな態度を取ったことと、謝る気が無さそうだった。だから軽蔑すると言っただけよ」


「それであんな事に・・・先輩が何を知っているっていうんですか!!先輩はきちんと謝ってくれました。それに話せない事があるとも教えてくれました。その話せない事を知らないのに糾弾するなんて酷すぎじゃないですか?」


「でも、彼はあなたがインスタ映えの為に誘ったとしか思えないと言っていたわ。女心は私も女だもの、理解しているつもりよ。女を泣かせるなんて男の風上にも置けないわね」


クラスの一部が桐生を本当に最低な奴なんじゃないのかと噂しだす。


「おい、煉牙。まずいぞ」   「うん。後輩ちゃんの言う事なんて聞こえてないね」


すると香坂 日和が怒気を発しながら一喝する。


「お前らなんも知らねえのに好き勝手言うなよ!!先輩が泣きながら走っていったのを知ってたらそうは言えない筈だろ!!本当に最低なのはお前らだ!お前らにとって先輩は都合のいい時に頼れる便利屋なのかよ!」


「え?桐生君が泣いていた?」


「そうよ!私が話してるといきなり悲しそうな顔をしだして泣きながら走り始めたんです先輩は。あんな顔をさせてしまったから私は泣いちゃったんです」


クラスは静まり返る。もはや誰にも真実の検討を付けられなくなっていた。


「そこのババアが軽蔑なんて言い出すから余計に傷ついたんだ。あんたさえいなければ・・・」


そこへ先生が止めに入る。


「君、落ち着いてくれ。東雲はもう心が折れている。そういえば、颯斗お前連絡先知ってたな。私が許す。教えてあげてくれ。それと桐生がなにか言ってたならそれも教えてやってくれ。これ以上は怪我人が出るから止めさせてもらうぞ」


「先生、すみませんでした。あのままだったら私・・・」


「それ以上は考えるな。その方が良い」


「名前が分からないから後輩さんって呼ぶけど、連絡先渡すからこっち来て」


「颯斗先輩、ありがとうございます。香坂って呼んでください」


「分かった。あーそれと香坂さん。蒼矢は幽霊とか目に見えない物って信じるか?って聞いてきた。何か関係あるかもしれないから」


「はい、わかりました。ありがとうございます。お騒がせしました」


香坂 日和は教室を後にする。


彼女に聞こえないであろう場所まで言った事を確認し、担任教師は告げる。


「東雲、お前は糾弾したらしいな。それを間違いとは言わない。だがな、現に普段のあいつを知っておきながら言葉の裏を探ろうともせず鵜呑みにするというのはあまり褒められたことではない。まだ高1だから強くは言わないが、お前こそ言い方は謝っておけ。最も、隠し事をしているっぽい桐生も悪いんだが」


「はい」


「今聞いてるお前らもだ。全く、集団心理というのは怖いと改めて思わされたよ。一部を除き根拠のない噂をこのクラスは信じた。桐生はあれでも心は強い方だろう。それで死にはしないだろうが、繊細な人間はそれだけで自傷行為に走る。それを肝に銘じておけ。このクラスでこれ以上この件を徒に探る事は禁止とする。桐生が香坂に喋ってから始めて我々は知ることが出来ると思え」


「はい」


「それじゃ私は桐生の親御さんにあった事を話してくるから授業を受けるように。何か桐生から連絡が来た場合は私にも伝えろ」


と言い残して教室から出ていく。


そこへ教科担当の教師が


「えーと、授業しても大丈夫?」


と聞いてくるので生徒たちはコクコクと頷いた。







授業が始まる頃、蒼矢は山頂を目指していた。


「魔法無しで登ろうと思うと案外時間がかかるな。ちんたらしてらんねえんだが。さっさとこの禍々しさの元凶突き止めなきゃならんってのに」


今はこの山だけで済んでいるがこれが外に漏れれば耐性の無い人々は為す術なくやられるだろう。そう考えた蒼矢は慎重に周囲を確認しながら進んでいく。


「これが終わったらどう話すかを考えないと。まさか、あそこまで優しさを欲してるとは思わなかった。自分が強いなんて傲慢があったんだろうな。反省しないと」


と今後の事も考えていると、ある木に目が留まった。


「あれが原因か?だとしたら何十年前からあんな状態なんだよ。む?」


こちらを見る視線に気が付いた。だが、俺に対して敵意は無い。警戒はされているが。


「ま、いっか。登ってから帰ってきてもまだ間に合うだろ」


と走り出そうとしたその時


「ヒヒヒっ。先ほどの若人じゃないか。何故このような場所におるのじゃ?」


少し前に色々教えを授けてくれた爺さんがいた。


「何故もなにも登ってる最中ですよ?お爺さんこそどうしてこんな所に?」


「同じじゃよ。儂も登りに来たのじゃ」


「そうなんですか。でも、だとしたら妙ですね」


「妙?なにかおかしな所でもあったかの」


「そりゃそうでしょう。俺と別れてお爺さんは下山したはずですよね?なのに、なんで俺と同じところまで登ってきてるんですか?烏滸がましいかもしれませんが、お爺さんよりは身体能力はこっちの方が高い筈です」


「ワッハッハ。やはり聡いの。じゃが、それは知らん方が身の為じゃ。はよ山頂を目指せい」


「そんな言い方されたら何か訳があるって言ってしまってるようなものですよ。別に怖い訳でも怯えてもいません。お爺さん、あんた何者だ」


瞬間、醸し出す雰囲気が老人のそれから実力者であることを示す隙の無い佇まいへと変わる。


「こんな若人を殺めるは忍びなし。だが、致し方なき事じゃ。その無鉄砲な勇気に敬意を表し名乗ろう。我は怨霊師、蘆屋道巌(あしやどうげん)である」

次回は蒼矢が久々にカッコよく見えます。(予定)

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