10話:年の功はすごい
12月になったら不定期になるかもです
俺は標高1000Mのハイキングに適した山を見つけた。今そこに隠密魔法を使いながら空を飛んで向かっている。口コミを見ると自然が豊かで傾斜も比較的緩やか。ただ、電波は入山すると入りにくいからライブ中継をするには向かないのだそう。いや、登山の様子をライブ中継って・・・
などと考えていたら、入山口が見えてきた。
「人はあんまりいなさそうだな。車が3台か」
と、ここで学校に休むという連絡を入れていなかったことに気が付く。時間にして8時57分。授業開始前だからギリセーフと思いたい。
電話をかけるとすぐに先生が出る。
「もしもし。1年の桐生です。欠席の連絡をするのを忘れていました」
「桐生君、担任は誰だ・・・って桐生!??」
「え?はい。桐生です」
「ちょ、ちょっと聞かせてくれ。今どこにいるんだ!」
「え?今ですか?山登りに来てますが」
「山登り~?どこの山だ!」
「すみません。今日は気分転換したくて来ただけなんです。明日にはちゃんと登校しますので」
「そうか。ってそうじゃないよ。どこって聞いたのに返ってこないし、今君のクラスがパニックなんだ。君が朝は見かけたのにHRにいないって大騒動になってるんだよ。クラスの人に話をしといてくれないか?」
「そうだったんですか。私なんかの事をまだ心配してくれる人いるんですね。了解です。すぐにクラスの人に連絡しますので切りますね」
「私なんかってお前・・・まあ頼んだぞ」
電話を切って冷静に考えてみるとそりゃそうだ。あのクラスで俺を心配しない奴は東雲しかいない。そもそも、俺のこの行動は最低な行為である事を自覚している。でも、気分転換に来た甲斐があったというものだ。何故なら
「この禍々しい感じは放っておけねえからな」
まるで幽霊屋敷にでも来たかのような不気味さが山からは滲み出ていた。帰れない理由が出来てしまったが、これも説明する訳にはいかない。秘密がまた増えた。
「とりあえず電話をっと」
颯斗にかけると2コール目で出た。
「お、もしもし。颯斗?」
「蒼矢!お前無事なのか?」
「は?何のこと?五体満足ですが」
「そうか。生きてるならよかった。早く来いよ」
「そうだなー、努力はするよ」
と会話していると
「桐生君!あんたって本当人でなしね!ここまでの馬鹿に出くわすのは初めてよ!!どれだけの人に心配かけてると思ってるの!」
「その声は東雲か。全て否定は一切しねえよ。だが、一つだけ聞きたい。お前ら幽霊とか目に見えない物って信じるか?」
「蒼矢?お前どうした?」 「そんな与太話してる暇じゃないのよ!!今すぐ来なさい!」
「良いから答えてくれ。どうなんだ」
「俺は信じない」 「当たり前よそんなのある訳無いわ」
ま、だよな。常識外の事は信じようともしない。それが人間だ。そんな超常現象を信じて尚且つ口が堅い無二の親友にしか俺の事は語れない。そして、これが話せないうちは俺はゴミのままだ。
「美奈は信じるよ」
「ん?伊藤は信じるのか」
「名前で呼んでほしいとは思うけど今はそれどころじゃないね。なんでそんな事を聞くの?」
「俺が楽になりたいからさ。そんじゃ、切るぜ」
「あ、ちょとま」
伊藤か・・・あいつが話せる相手なら俺は話すだろう。この事実を一人で抱えるのは辛い。
さて、母さんにも連絡して
「さーて戦い始めますかね」
俺は山へ入る。
入山から程なくして、とあるお爺さんとすれ違った
「お?若人など久々に見たわい。こんな日も高いうちに何故こんな山におるのじゃ?」
「こんにちは。今日は学校に行きたくなかったので少し気晴らしに登山でもと思って」
「フォフォフォ。そうかい。どれ、儂で良ければ聞いてやるぞ?」
「え?良いんですか」
「構わないわい。どうせ人間関係で悩んでおったのじゃろう?そんな顔をしている」
「そうですね・・・では少し相談に乗ってください」
粗方話すと、お爺さんはこう言った。
「それはそれは・・・お前さんが未熟という物もあるじゃろうが、その女子もなかなかに厳しい物言いをするお嬢さんじゃのぉ」
「まあ、全て私が悪いですから仕方ないんですけどね」
「致し方なきことよ。人間言えない事の1つや2つはある。じゃが、本当に絶縁する前にどうにかせんとな。儂なら・・・核心に迫られない程度で上手く喋るかのぉ」
「それが出来たら苦労なんてしてませんよ」
「それを考え苦労するのも人生という物じゃ。焦らなくて良い。帰るまでに考えれば良いのじゃよ」
良いアドバイスを貰えた気がする。この人に相談して良かった。
「すみません。ありがとうございました。もう大丈夫です」
「おー、そうかそうか。この老人の言葉が役立ったというならそれは嬉しい事じゃな」
別れて俺は山頂を目指す。そして道中で確信を持った。
この山の不気味さの原因に。




