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108話:修練の賜物

疲れてて更新が大分空きました。すみません

新藤・・・やはり恐ろしいやつだった。


海外勢ってだけあって発音が違うしそれを難なくやってのけるこのクールさ。そして数学のあの完璧な証明。この後の剣道次第だがマジで告白の嵐に遭遇するかもしれない。


嫉妬する要素が無くなっていて良かったと思う。もしも人並みに彼女を欲する男子高校生だったらあの辺で「クソッ、勝ち目が・・・」と悶えているのと同じだっただろうし。


でも、俺が彼の秘密を知らなきゃなんでそんなに色々出来るのかを聞いていただろう。新藤という男にとって憧れない要素がないような男から、自分がカッコよくなるにはどうしたら良いかを聞きたがるのは普通のシンキングだ。


こいつがもしもある話題に触れてきたら、()()()()()()()。俺が今見てる新藤と本当の彼の情報から推測するに根は良いやつだ。そこをどう踏みとどまらせるか。


素性は掴めてるし、石橋の事もあと少しで調べあげられる。そしたら、全ての線が繋がる筈なんだ。そしたら見えてくる。本当に倒すべき敵の姿も、逆に助けなければいけない真の被害者も。


今日から準備を進めるが、これの決着が付く日は、案外近いのかもしれないな。


俺は竹刀を見ながらそう思った。


「なあなあ、見たか?今朝のニュース」


「ああ。林の中で女性の遺体が複数見つかったんだろ?」


「なんか最近物騒だよな」


「確かに」


そんな会話が耳に入る。そういえばそんなこともあったななんて思って石橋を見る。


目が違った。いつもの優しそうな目ではない。今にも衝動的に動き出しそうな目だ。その目から察するにこいつが犯人・・・では無いな。ここからその現場までは300kmも離れてたはず。わざわざ死体捨てる為だけにそこに行ってるとしたら馬鹿だし。


では何故あんな恐い目をしているのか。あの男子生徒が何かあるなら後で口封じに行くだろう。少し尾行するとしようか。


チャイムが鳴るといつもの目に戻って整列してと声をかける。ここから推測するに、女性の遺体にトラウマでもあるのだろうか?


「今日は少しペースを上げて難しい所をやります。ちゃんと付いて来いよ?」


皆がはい!と答える。さて、異世界流の修行はこの世界でどの程度通用するのか見物だな。












俺は石橋嶄十郎。体育教師だ。


剣道は小さいころからやってるから自ずと上達は早かった。その剣道と健気で本当に可愛い妹が誇りだ。


だが、俺は今目の前の現実に戸惑いを隠せない。前回、1回目の授業では普通とか普通より下だった生徒がいきなり俺に匹敵しうる振り方、足運びの軽やかさになっている。


前回教えてからまだ3日しか経ってないのにこんなに上達するのか?俺は3日で玄人一歩手前まで育てきれると豪語出来る程の実力は無いし、教え方も知らない。じゃあ何故だ?


それも一人では無いのだ。確認できるだけで4人。そんなに多くの生徒が常識を覆すような速さで上達するものか?いや、訂正しよう。桜木さんは元から剣の経験がありそうだから分かる。堂本さんや相楽さんも血も滲むような特訓を頑張ったんだろう。でも・・・香坂さん。あの子は違う。全くのど素人だった。見れば分かる。そんなのも分からない程俺の目は耄碌していない。


誰かが教えたんだ。誰かの技の模倣。そうとでも考えなければあれを3日では無理だ。


ここで思い出す。そういえば、このクラスには他人にかけた操躯の術を解くという大それた事をやってのける化け物がいたのだった。


この術はかけた本人が解除するか、対象者が己の精神を研ぎ澄ませ、術を解くの2パターンしか無い。


あの時かけたのは何も殺すためでは無い。ああする事でメリットがあったからだ。強制的に解除される。本当に想定外だった。


それに何度か受けた殺気。彼のあれは冷や汗なんてものじゃない。腰を抜かすかと思ったほどだ。元々、ヤクザに単身で喧嘩を売りに行くくらいだから強いんだろうとは思っていた。


もしこれすら彼の修練の賜物なのだとすれば・・・僕は彼、桐生蒼矢がまるで底の見えない闇のようにしか見えなくなっていた。




















無事授業が終わり、戻る途中。


「本当、自分が自分なのか不安になります。ここまで出来るとは」


「そうね。今なら特殊部隊10人は瞬殺できる自信があるわ」


「詩歌はもっと凄かったな。あの流れるような動き。戦国の世なら剣姫なんて呼ばれていたかもな」


「そんなに褒めないでよ全く。でもそうね、今なら軍1つすら相手に出来る自信があるわ」


「それは調子乗りすぎだ」


「本当にな」


背後からこちらを見る視線に気付く。ちらっと見るとなんとライフル持ってるじゃないの。狙ってんのは誰だ?


「どうしたの?」


俺は小声で答える。


「後ろに・・・ライフル持ってる奴がいる。みんな気を付けろ」


「え、どこ!?」


香坂が振り向く。


「あ、バカ!!」


ここで俺は気付いた。ライフルのレーザーは香坂の眉間付近にある。という事は


「狙いはお前だ!!日和!!」


「え!?」


軽やかな発砲音がする。生徒の目がそこそこあるから下手に力は使えない。


いや、迷ってる場合じゃねえ。


イメージしろ。光の弾丸にも負けない鋼鉄な皮膚。それを俺の手に。


「届けぇ~!」


レーザーの位置と狙撃手の位置から角度はおおよそ分かる。そこに俺の手を。


「蒼矢!危ない!」


3人の声が重なるが、聞く耳はもたない。俺の腕が吹っ飛んでも再生できるが、香坂の脳幹やられたら、流石に無理だから俺が止める。


俺の動体視力なら見える。弾が丁度手の真ん中に来たところで手を握る。こうして弾を掴むのだ。


「くっ」


弾が貫通はしなくても加速度までは消せない。お陰様で手が飛んでいく方向に体も少し飛ばされる。その姿はさながらアニメあるあるのダメージを受けたキャラの様だろう。


すぐに狙撃手の方を見る。狙撃に失敗したからか、撤収し始めた。


「お前らここから離れろ。上には注意しながらな」


俺は走り出す。あの狙撃手を捕まえるためだ。


謎が2つある。1つ目は何故俺や相楽達では無く、香坂を狙ったのか。そしてもう一つ。何故学校の敷地に奴はいたのか。


ここを聞き出さないと危険だ。俺の本能はそう訴えかけていた。


学校の構造上、あの建物は武道場だけでなくその下には部室。上には巨大な倉庫があったはず。倉庫には鍵がかかっているから入られる事は無いだろうがもし入られてたら厄介だ。相手は身を隠すのが上手い。物がたくさんあるなんて地の利は向こうにある。














2階、武道場へ到着すると狙撃手と石橋先生が対峙していた。後ろには生徒がいる。1人では危険か。


「先生、共闘しませんか?」


「何を馬鹿なことを。生徒なんだから下がってなさい。と言いたいが、君ならこちらから頼みたいくらいだ」


横に並ぶ。


「捕縛で良いですよね?」


「ああ。君がメインで行くかい?」


「いや、俺はサポートで。相手が銃を使う以上、木刀では破壊される可能性が高い」


「そこは安心してくれ。僕の技術で力を分散させるよ。それを言うなら素手の君もヤバいんじゃないのか?」


「俺は特別製ですから。行きますよ」


「うん」


いつもなら刹那で背後に回り瞬殺だが今回は違う。


「先生、()()をお願いします。先にお膳立てはするんで頼みました」


「了解した」


俺は剣気を当てる。


相手の顔色で分かる。怯んだ。


「操躯の術」


動きが完全に止まる。


後ろの生徒は何が起きたか分かっていないようだが、これで止められはした。


警察もその後到着し、一件落着となった。

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