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107話:襲来

翌日、月曜日は体育のある日。俺の教え子たちはちゃんと出来るのだろうか。


そんな事を考えながら通学路を歩いていると


「なんだ?あの黒いリムジン」


朝の爽やかな感じには不釣り合いな黒いリムジンや黒い乗用車が路肩に止まっていたり、走っていたりと普段とは違う光景が目に付いた。


「警戒だけはしておくか」


そのまま俺は学校へ向かう。





その車には男が複数乗っていた。


「親父、今回は随分と気合が入ってますね」


「まあな。まさかあの赤弾(あかだま)を退けるとは流石に驚いたってもんだ。そういえば調べろって言ってたのは終わってんのか?」


「はい。報告にあった男ではなくどうやら女だったらしいです」


「ほう?女?」


「話によるとまだ高校生になったかくらいの女にやられたとの事で」


「ハッ、赤弾が耄碌したのか、はたまたその女がバケモンなのか。どちらにせよ強い女ってならいっぺん会ってみてえな」


「それよりも、こんな大騒ぎになるような事しなきゃいけないんでしょうかね」


「やらなきゃいけねえんだよ。取引先からの指示だ。別に突入すんのは少数、俺達は事の顛末持ち帰るだけよ。この世界じゃ上の命令は絶対。逆らう事なんか許されねえ」


「考えても無駄って訳ですか。まあそうですよね。馬鹿な事聞いてすいませんした」


「わかりゃいい。とは言え、なんかやな予感するから気乗りしないのは・・・同感だぜ?」


「って、お、親父!あそこに歩いてるの例の男では?」


「あ?何寝ぼけた事言ってんだ?ヤクザにカチコミ入れる馬鹿がこんなクソ真面目に登校なんざしてるわけ、ってほんとや~~!?お、おい。待ち伏せすっぞ。車出せ」






















お、駅が見えてきた。そんじゃICカード出して


「兄ちゃん。少し話良いっすか」


「ん?どちら様です?」


「自分の心に聞いてみ。思い当たる節はあるやろ」


「さて?そんなものありませんけど?」


「この期に及んで白切りとおすのは賢くないな。ほんならこっちから名乗ってやるわ。わしは美濃連合直系、橋平組の立川いうもんですわ」


「美濃連合・・・」


「なんややっぱり知ってるじゃないか」


「星連会だったか?の上の」


「そうや。てことはそんな奴らが雁首揃えてここにいる事の意味・・・分かるよな?」


「お礼参りって訳か」


「そん通り。聞けばなんやら、友達助けるために単身カチコミかけたらしいが、こうやって報復されるんは・・・まさか想定外なんて言わないよな?」


「ま、来るとは思ってたけどまさか朝っぱらからとは思ってなかったよ」


「あんたが強いのは知ってる。だから容赦はすまんが出来ん」


ぞろぞろと人が出てくる。拳銃に、日本刀。金属バットまで用意してあるところを見ると本気でやりに来たのか。上で見ているあの()()は何のためにそこにいるんだろうってのはとても不思議だ。


「総勢116名。武装してあるこの人数。相手にするのは不可能やろ?今頭下げれば命だけは助かる」


「こっちは悪い事してないんでね、頭下げる義理もない。すまないがそっちこそ例え腕失おうが文句は言うなよ?」


「ま、これだけの自信は当然か。よっしゃ!お前らこいつ殺したれや!」























丸腰の蒼矢が最初に取った行動。それは


「さて、武器の調達から始めるか」


一瞬で日本刀を持っている男の目の前に移動する。


「なに!?」


「悪いな。眠っててくれ」


首に手刀を落とす。力を失った手から刀を取る。


「武器が渡った!!チャカ持ってる奴はさっさと殺しにかかれ!」


「おせえよ」


気付けば両方の手に刀が握られている。


「お前アホなんか?両手塞がってたら対処出来ないじゃないか」


「良いんだよ。対処なんて。だってさ?」


目が変わる。それはいつか見せた狂気の目。


「全員殺しちまえば・・・対処になるだろ?」


「!!すぐに距離取れ!斬られるぞ!」


その声にあるものは背を向け、あるものは銃を構えながら後退。だが


「遅いって言葉知ってる?」


既に体のどこかを斬られた後だった。銃を持っていた奴は両手首を半分くらいまで、金属バットは腹を。それぞれがろくに使えなくなるように。


だが、斬り終えた後の間にある男が拳銃を撃つ。これには蒼矢も


「戦える奴いたんだな」


と嬉しそうだった。残念ながらその弾は斬られたが


「弾を斬った?」


「マジかよ・・・相当の剣豪であり、動体視力も相当でないと出来ねえぞ?」


「単身カチコミはまぐれじゃなかったって事か?」


「狼狽えんな。迷えば・・・やられる」


現場に緊張が走る。この場所は住宅からそう遠くはない。銃声は聞こえたはず。一刻も早くこの事態を終わらせないと。蒼矢は急激にスピードを上げた。


「見えねえ」  「斬られる!」  「あ゛ぁ~~」


気付けば立川一人を除いて無事では済まない状況になっていた。


「で?あんたはまだ動けそうだが来ないのか?」


「ば」


「ば?」


「化け物・・・」


気絶する。


近くを巡回していた警官が通りかかってしまう。


「な、なんだこれは!!君がやったのか?」


「ん?警察の方ですか。丁度良かった。この人達連れてってくれません?」


「き、君を逮捕だ~~」


「は?は~~~!?」


この後30分説明して全てを理解してもらった。


「ってことは?その日本刀は奪ったもので、彼らがしかけてきたから返り討ちと」


「そうです」


「いや、確かにこいつは橋平組の奴らだけど、でも・・・血の付いた刀もって立ってちゃダメだよ。みんな君のほうを疑っちゃうから」


「確かに。そうか」


「一応署の方で話は聞く。にしても、これだけ人を斬って、血も見てるのによく平然としてられるね。僕なんか血の気が引いてるっていうのに」


「あははは・・・なぜでしょうね」


些かやりすぎた。確かにこんな光景普通なら目が虚ろになってても不自然じゃないな。これからはそういう演技も気を付けていこう。


























その後、事情聴取から解放され学校に行くと


「やあ、朝からヤンチャをした桐生くん」


「また危ない事してきたんだね?」


「ほんと・・・凄いよ。うん」


とクラスメイトからは言われる始末。


「それで?今回は何があったんだ?」


「いや、美濃連合の橋平組?って所に喧嘩売られて」


「売られて?」


「全員返り討ちにしました。誓って殺しはしてません」


「いや、しないでくれ。しかし、美濃か。また随分とデカい組織だな」


「ねえ、覚えてるか知らないけど3年前に起きた抗争の時に相手方をたくさん殺したのはその美濃って所だったと思うんだけど・・・私達大丈夫だよね?」


「まあ、まず学校を襲ってきたりはしないよ。くれぐれも皆が相手方を刺激しなきゃ良いだけさ」


「説得力あるというか・・・なんというか」


「てかさ?みんな慣れすぎてね?こういう話」


《誰のせいだ誰の!!》


クラス中の声が重なる。そこへ先生が入ってくる。


「うるさいぞお前ら。さて、そこのアホのお陰で朝から話題には困らないが」


「先生、アホって誰の事ですか?」


「自分の心に聞いてみろ。今日はちょっと前にも予告のあった転校生が来たから紹介する。そんじゃ入ってこい」


その転校生は、ってまたイケメン??幼さというかあどけなさを適度に残しながら爽やかさも兼ね備えた野郎がまた来やがった。俺の顔面偏差値ももう少し高くなりませんかねチクショウ。


「女子共。見惚れるもは良いが、まずは自己紹介聞けな?そんじゃよろしく」


「はい。皆さん初めまして。アメリカから来ました、新藤 拓人です。一応日本語も英語も喋れるので英語に関しては聞いてください。きっとお役に立てると思います。宜しくお願い致します」


くっ、眩しい。あの屈託のない爽やかスマイル。結構な長身。直視できない!!


「それじゃ、新藤は桐生の隣に座ってくれ」


そう促されて横に座る。


「よろしくな。桐生蒼矢だ」


こっちも爽やかスマイルをするが


「うん。よろしくね、蒼矢」


どうやっても勝てる気がしなかった。

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