106話:ボーナスステージ
あれから少し経ち日曜になった。
「さて、そんじゃ最後にまた俺とやりあってみるか。ちなみにだが、俺も本気で動くから前回と同じようなレベルだと思ってたら前回と同じ事になるから教えた事を全て思い出して戦ってくれ。あ、この剣は受けるためのだから」
「そうね。今日は双剣だものね」
「動きだけでも本気を出してもらえるというのは嬉しいものだな。しかしあれだな。鋼の剣をずっと持っていたから木刀が軽すぎてちゃんと振れるか不安だぞ」
「そうですね。私は剣触って間もないですけど、今ならちゃんと剣を振れるって胸を張って言えますね」
「剣道の上の方の段位なんて人生それに捧げてる人しか無理と思ってたけど私でも上の方受かれる自信があるわ」
「もう40近いおばさんだけど案外まだ動けるものね。先生の教えが良いのかしら?」
「いや?家事とかいつもなんなくこなしてるから筋力自体は結構あったよ。母さんは柔軟性を重視したからね」
「ちなみにさ?」
「うん?」
「私達ってそっちの世界だとどのくらいの強さなの?」
「そうだなぁ・・・相楽とか詩歌とかは既に中の下だな。最低でも下の中ではあるよ」
「なんか・・・微妙?」
「いやいや、戦闘が絶えないような世界での中だぞ?相当の強さだから安心していいよ」
お世辞ではない。この先戦うこともあるであろう相楽達に関しては目も鍛えておいた。お陰様で銃弾の軌道すら見えるくらいになってしまったが。暗殺者が暗殺出来ない化け物を私は生み出してしまったかもしれない。
「ま、やってみれば分かるさ。いかに自分達が化け物みたいに強くなったかはな」
制限時間は15分。その間俺に攻撃をしかけ、木刀を当てる。それがルール。詩歌も魔法なしで頑張るようだ。
俺は開始5分で後悔している。まさか
「隙あり!」
「!!あぶねっ!!」
と何回かピンチな場面も出てきているからだ。まさか出来るだけの身のこなしをしてるのにヒヤヒヤさせられるとは。6も頭数がいるとは言えたった160時間。それだけしかやってなくてこれだけ追いつめられるなら
「ヒヒッ、本当の逸材は別にいたって所か」
「何ぶつぶつ言ってんの・・・よ!」
「ま、こっちも楽しくなってきたしな。残り3分時点で俺も攻撃する。攻守共に頑張れよ」
「え?急に?」
「体力もつかな」
「心配すんな。何事も経験さ」
そもそもだ。これからデカめの組織の兵隊を相手にしなきゃって可能性あるのに攻めるだけじゃ限界が来るだろう。敵は想定通りには動いてくれないし事前に伝えてるだけマシなんだが。
ま、一番は石橋に何かされても大丈夫なようになんだが。
残り3分になった。ここまで息切らしながらも追いついたってのだけで普通に凄い。母さんが俺の性格を知っているからか苦手な所から攻撃してくるしやりにくいったらありゃしねえ。
ま、この辺で一発間合いでも取らせるか。
「そらよ!」
脇を閉めて薙ぎ払う。何人かは回避行動も間に合わず吹っ飛ばされた。
「ここからが・・・本番ね」
「体は温まってるから丁度良いわ」
「御託は良い。とっとと来い。リミットまで戦おうぜ」
「やっぱただの戦闘狂じゃない!」
こんなやり取りの最中にも香坂が後ろを取れる場所に移動しているのは把握済み。なるほど。一番軽やかに動けるという俺のアドバイスをちゃんと生かしてるな。
「だが!」
後ろに斬撃を飛ばす
「あぶなっ!」
「おお!さっきのよく躱したな。すげーぞ香坂」
「ちょっと!それは卑怯じゃない?」
「というよりは、木刀で斬撃飛ばせるっておかしいのでは?」
堂本さん、その通りです。木刀で飛ばそうと思う人はアホです。
その後切ったり受けたり、とても濃密な時間を過ごして時間切れになった。
「お、終わった・・・」
「疲れた・・・」
「でも、良い実戦にはなったわね」
「てかさ?強くなりすぎ。6人とは言えまさか疲労を感じるなんて」
「息が切れてないのが本当凄いわね。みんな息も絶え絶えなのに」
「ま、とりあえずこれで十分強くはなっただろ。また何かあればここで教えるよ」
「お願いね」
こうして剣の指導は終わった。
そして俺はこの世にとんでもないやつらを解き放ったと同時に思うのだった。
その日の夕方。事件は起こった。
「買うもの買ったし、帰ろ」
香坂日和は道を歩いている。鍛えたおかげか、歩くスピードもかなり上がっているようだ。
「でも先輩ってやっぱりかっこいいよね。剣は一流だし、同級生の為に単身で戦うし。まあちょっと危ないけどそれでも優しいし」
なんて考えたその時だった。
「ん?なんか視線を感じる?」
何気ない日常。なのだが
「これは・・・何かを探すかのような・・・ってあれ?なんで私こんな事言ってるんだろ」
ふとその先輩の言った事を思い出す。
「良いか?戦う時には冴えわたる感覚こそ最大の武器だ」
「もしかして、感覚が強化されてるから?!!殺意に変わった!!」
一瞬で気付く。これは殺す者の視線だと。
(放っといちゃダメよね。先輩から貰った力なんだもの。役立てなきゃ)
まずはその源を探る。
(どこ?どこにいるの?)
ふとあるビルの屋上に視線が行く。
「あのビル・・・怪しい」
そのビルの屋上へ向かうのだった。
「ターゲットは・・・いた。暢気に歩いてるねぇ。お前の咎考えたら不用心に歩いてちゃダメってなんで分からないのかな」
この男、職業は殺し屋。この日はある依頼を受けて狙撃をするのだ。
「ま、善も悪もどうでも良いんだけど。金さえ手に入ればそれで良いから。でもま、あんただって人平然と殺してるんだ。例え死んだとて」
引き金に力を入れる。
「恨みは言えないよな?」
「そこまでよ!!」
「な!?」
後ろから声をかけられるという不測の事態に思わず引き金を引いてしまう。
「ちょっと!何撃ってんのよ」
「お前が驚かせるからだバカ女!って引き金引いちまったがどうなってる?」
確認すると当たってはいるが傷は浅そうだ。
「クソッ、殺し損ねたか」
「死ななくて良かった・・・」
「てめぇ、どこのモンだ?」
「え?」
「とぼけんな。俺がここから狙撃するなんての知ってるのはあいつらだけに決まってるだろうが!」
「あいつ?いや、殺意を感じたから止めに来ただけよ?」
「・・・は?今なんつった?」
「え?だから止めに来ただけだって」
「てことは、あんたは俺のマトも知らないと?」
「うん」
「嘘ついて・・・はないな。え?じゃあ本気で止めに来ただけ?」
「はい」
「・・・今すぐ俺の顔忘れろ。そしたら見逃してやる」
「あ、分かりました。でも、もう殺しちゃダメですからね?」
「わかったよ。悪かったな」
そう言うと香坂日和は踵を返す。
スナイパーはすぐさま狙撃体制に入る。
(馬鹿じゃねえの?この女。背向けるなんて、殺してくださいって言ってるようなもんじゃねえか。ま、逃げ切れたとしても素性調べて殺しに行くだけだが)
「あばよ!このバカが!」
狙うのは頭。こんな近距離の狙撃。外すわけがない。勝ちを確信した。
そう、外しはしなかった。
「な、、、な、、、な?なんで手で止めてんだよ・・・」
「止められたから。さて、警察呼びましょうか」
「チクショウ!」
そのまま隠していたナイフを持って向かってくる。女一人なら強引に行けるだろうとそう思ったのだ。
しかし
「先輩に比べれば・・・亀じゃないですか。身構えて損しました」
そう言って間合いを詰める。
「な?早い!」
「あんたが遅い!」
そのまま顔に一発。そのまま腹に一発入れる。
「いって!なんつう力だよ。こいつ本当に女か?カハッ」
意識を失う。
「か、勝った!私、こんなに強くなってたの?」
喜びを噛みしめる香坂。その後到着した警察にスナイパーは連行されていった。
最近は周囲の女性が良い人なんだよなぁ(歪むと気付かないってあるよね)




