99話:大事
「しっかし、そんな事になってるなんてな。驚きだぜ」
「そうね。ねえ、蒼矢は後悔してないの?」
「何が?」
「言ってたじゃない。俺はこの世界で誰も殺さないって。もしかしたらさ?殺人をする時が来るかもしれないんだよ?」
「道の往来だ。もう少しボリューム下げろ。とは言え、そうだな。実際、詩歌なら仮に捕まってもどうにかなるかもしれないが、もし姉貴とか捕まったら・・・四肢くらいは落とすかもしんない。俺ってさ、やっぱり馬鹿なガキなんだよ。誰だって思うだろ?ヤクザ潰すってのが如何に危険かは。でもさ?友達が危険な目に遭いそうってなったらどうしてもただの高校生じゃなくて元勇者の高校生になっちまう。変わらねんだよ本質は。いや、違うか。一度変わっちまった本質はそう簡単に変えられないが正解か。
でも、そんな馬鹿がいなきゃ何の関係もない善良な人が消えちまう世界だってんなら、その馬鹿貫き通したい。もう割り切ったとはいえ、ライラって言う俺と人格的に相性が良い女性と会っちまうとな?もう他の女だとか世間の目とか、どうでも良くなっちまう。好きな人にはカッコいい所、見せたくなるし。ま、気にしなさすぎたら警察から釘刺されたけど・・・とりあえずは警察に迷惑かけない程度にやっていくさ」
そう言って笑ってみせる。
すると、ずっと背後を付いてきてた奴から声がかかる。
「おうおう、随分と物騒な話をしてるじゃないか」
「ビックリした!ってなんだよ、グロニスか」
「いやー、やっとマスターの背後取れるようになったか。それはそうと聞いたぜ?なんかヤバい事に首突っ込んだらしいじゃないか」
「ハダルに聞いたか?」
「もち。そんでよ?私も調べてたんだが一個気になる情報を見つけてな?」
「・・・すっげー気になる。てか、お前喋り方変わった?」
「マスターの年相応に合わせてみた。とりあえず家帰ってから話すから寄り道せず帰れよ?」
「元々そのつもりだ」
そう言うとどっかへ消え去る。俺たちは帰路を急いだ。
「ただいま」
「ただいま帰りました~」
「おかえり・・・さて、蒼矢?なんだかカッコいい事したらしいじゃない?崎田先生から本人が詳しく話すって言ってたけど」
「あ、おかえり。何?朝のあの騒ぎってあんたが何かやったの?」
「あー・・・実はな・・・」
土師への協力要請とかの直接関係ない所を除いて全てを隠さず話す。怒られる事は覚悟の上だ。
「星連会・・・ねえ、その大谷って人もしかして顔に長い傷あった?」
「あったな」
「・・・そう。何の因果かしらね。貴方のお父さんもね?前にカツアゲに遭ってた同級生を助けたことがあるの。その時、一緒に戦ってくれたのが大谷っていう当時有名だった不良だったのよ」
「・・・マジか。父さんも武闘派・・・」
「だったが正解よ。まるで人間じゃないような強さだったの。何せ当時はお父さん相手にするなら60人がかりで挑まないと喧嘩にすらならないって言われた程だったし」
「ん??ちょっと待って!?もしかして超人的な動きとか出来た?」
「さあ?ただ、相手が次どんな動きをするかを読むのには長けてたわ。凄かったわよ?その読みが外れたとこ見た事ないもの」
「・・・そうなんだ。あ、ありがと教えてくれて」
「ま、とりあえずお咎めは無し。クラスの女の子助けるためだったなら何も言わないわ。ただ、もしも私達に何か災いが降りかかるようなら守る事。良いわね?」
「ああ」
「こりゃ明日また色々聞かれそうだなぁ~~~。「弟君また何かやったの?」とか「弟君ヤクザと殴り合って勝ったとかマジ?」とか」
「あ、全部ワンパンで沈めてるんで殴り合ってはないです。はい」
「十分凄いわよ。まあ良いわ、よくやったってお姉ちゃんが褒めてあげる」
「おいやめろ。頭わしゃわしゃすんな」
こんな何気ないやり取りに俺の心は満たされていた。
その少し後・・・
「さて、そんじゃ第何回だ?緊急会議を始めます」
「ういー」
「はーい」
「うぃーす」
「・・・みんなやる気皆無かよ」
「まあ。暑いですし・・・」
「ま、良いや。さて、今回は私の手にした情報を伝えるぜ。ラムール・ジュバって組織についてはマスター聞いてんな?」
「ああ。ってお前盗み聞きしてたのか」
「まあな。お陰でマスターの覚悟も聞けたわけだが、こいつに関してはちと、興味深い情報を手に入れてんだ。まず、こいつは海外のマフィアなんて一言で片づけられる物じゃない。テロに麻薬の密売に希少動物の違法取引にも手を染めている本当にヤバい連中だ。そしてこの組織の幹部候補にはある一人の若い男がいるんだ」
「ほぅ・・・すげえな」
「そう思うだろ?そしてこいつの名前は、タイキ・イシカワ」
「ん?日本人?」
「そう。しかも年は16。なんとマスターの姉と同じ年だ」
「は?デカい組織の幹部候補で16歳!?え?ずっとそこで育ってきたのか?」
「いや、実はそうじゃない。こいつは元々普通の中学生だったよ。だがな、、、どうやらいじめを受けたせいで姿を消し今に至るようなんだ」
「それって・・・」
「そう。たった3年で役職に就く程の化け物。いったいどんな思考をしてんのか・・・想像付かねえだろ?」
昨日こんな話をされたせいで翌日の授業は耳に入ってこない。詩歌も驚きが凄いようで身が入ってない。
正直、昨日の呼吸困難を考えてる場合じゃなくなった。そっちの犯人も何故を突き詰めなきゃいけないのに・・・
そう考えてると昼休憩のチャイムが鳴る。とりあえず確認することは2つ。まず一つ目から潰すか。もし、俺の想定通りなら協力を仰げるかもしれない。
そう考えてやってきたのは屋上。詩歌と一緒だ、
「何しに来たの?」
「父さんに電話をかけようと思う」
「いきなりだね」
「ああ、聞いておきたいことがあるからな。それにこの時間なら休憩だろ」
すぐに電話は繋がった。
「お、蒼矢か。いきなりかけてきてどうした?」
「俺さ、父さんに聞きたい事あるんだ」
「お、なんだなんだ?」
「父さんさ、昔戦いに明け暮れてたんだね」
「あー、若気の至りって奴だな。あの頃は楽しかったぜ」
「それでさ?母さんから相手の動きを読むのが得意だって聞いたんだけど」
「おう、その通りだが」
「単刀直入に言うね?父さんさ・・・異世界からの帰還者でしょ」
「・・・お前、なにもんだ」
「え?」
「てめえ息子の皮被ったなにもんだって聞いてんだよ」
「正真正銘桐生蒼矢だよ」
「嘘つくな!蒼矢がそれに気付けるはずないだろうが!」
「父さん、同類だからこそっては考えないの?」
「あ?・・・まさか!」
「そうだよ。俺もお仲間だ。だからさ、少し今日の夜話したいんだ。良いか?」
「・・・良いぜ。だが、本当に蒼矢本人だってんなら俺の家まで来い」
「おっけ。そんじゃ夜お邪魔するわ」
「バックレんなよ?」
そう言って電話が切れる。
「なんか・・・お父さん怒ってたね」
「まあな。気持ちは分かるが息子だって信じてほしいわ。でもこれで判明した」
「もしかして、來妃ちゃんの記憶喪失事件?」
「そう。詩歌が忘れてないのに母さんと姉貴は忘れてて、父さんも覚えていた謎が解けたんだよ」
俺は詩歌のほうへ向き直る。
「何らかの術がかけられた時点で一定以上の魔力のような物がある奴には・・・効かなかったんだ。その謎を解くために夜行ってくるんだよ」




