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29.意外な訪問者①

「我々も下に降りましょうか」

闘技場はまだ熱気に包まれていたが、トルベは冷静にあたしに声をかけてきた。

「あ、もう帰るの?」

あたしはもう少しこの熱気に浸っていたかった。しかしトルベの次の言葉で一気に現実に引き戻された。

「違いますよ、我々も引き抜きの交渉に行かなければならないでしょう?」

「え、でもハーヴィン局長は今回は手を引いてくれって」

「召喚士に関しては、ですよ。少なくともあの召喚士と同格の魔法少女が1人はいるのですから、行くべきでしょう」

確かにそうだ。近衛兵10000人級が1人ずついると、トルベは言っていた。1人はあの召喚士だろう。しかし今回は目立たなかったが、相手側にもいるはずなのだ。

「ルナ、階級は今はどうでもいいと思うの。今日参戦していた魔法少女たちは、少なくともわたしより上だから誰であっても来てくれたらたすかるはずよ」

マリーネがあたしの考えを読んだかのように、これ以上ない正論を言ってきた。

「うん、そうだね。マリーネの言う通りだ。あたしたちは贅沢なんて言っていられないんだった」

昨日今日立ち上げたばかりの無名ギルドには、入ってくれたらそれでラッキーなのだ。

「じゃあ、行こっか」

「うん」

「行きましょう」



あたしたちは意気揚々と地下の控え室にむかったが、あっけなく、あまりにあっけなく門前払いを食らうことになった。

理由は至極簡単だった。


何の実績もないギルドに、これまで手塩にかけた魔法少女を預けられない。

そして信頼して我々に預けてくれた、魔法少女の親たちの了解を得られる事はない、と。


丁度その場にいたハーヴィンも、さすがにこれは説得するのは無理だ、と肩を竦めた。

しかしあたしは全く気落ちしていなかった。というよりもむしろギルドがまともだったことが、少し意外だったのだ。

ハーヴィン局長が例外で、他は魔法少女の事を金儲けの道具にしか考えていないと思っていた。

内情はもしかしたらあたしの考えていたものとは別ものなのかもしれない。

「交渉が無理なら帰りましょうか。あまり長居すれば会いたくない人物に会うかもしれませんから」

トルベの言葉にマリーネがビクッと肩を震わせ、周りを見渡した。

そうだった。ここにはマリーネのママがいるはずなのだ。あの召喚士をスカウトしに来ているに違いない。


あたしたちは足早に控え室を後にした。

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