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アドミラル~魔法艦隊の艦長に転職したら、彼女(提督)ができました~  作者: 九重七六八
第1章 パンティオン・ジャッジ ~魔法王国メイフィア編
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処女航海に出たけれど…分からないことだらけです!(四)

今回は主人公たち第5魔法艦隊のライバルみたいです。

「女王陛下、第5公女フィン・アクエリアス嬢は、マルビナ浮遊島付近に処女航海後、首都クロービスに三日後に寄港予定です。明日には第4公女、明後日には第3公女殿下が到着の予定です」

「いよいよ…ですね。外務大臣」


 魔法王国メイフィアを統べる女王マリアンヌ・ノインバステンは、傍に控える外務大臣ジオ・ハムラビに確認する。目の前には地図が広げられ、第1大陸とその周辺。メイフィア所属のパトロール艦隊の位置と、対ドラゴン用の打撃艦隊の位置が示されている。そして、今回の主役の公女が率いる5個の魔法艦隊の位置も示されている。探索魔法により、おおよその位置がわかるのだ。


「ジャッジメントの日まで1年を切りました。我々、人類の存亡がかかっています。どの公女が我が国の代表になるか」

「ふふふ…。それは私に決まっておりますわ。お母様」


 傍らにいた金髪の美しい娘が口を開いた。ピンクのルージュが艶かしく光っている。


「マリー。パンティオン・ジャッジは真剣勝負の艦隊戦。油断しているといくらあなたでも、楽に勝てるとは思ってはダメよ」

「5人いる公女と言っても、私以外は王家とは何のつながりもないわ。前回のジャッジメントで世界を守った英雄の子孫であるノインバステン家の血を引くものとして、この国の代表は私が務めます」


「あの第5公女フィン・アクエリアスには、異世界から召喚した青年が艦長として従っています。あなたは私たちの祖先がかつて異世界より召喚した人間と結ばれて、今日に至っていることを忘れていませんか?」


 マリアンヌ女王は、娘であるマリーの実力をよく知っているだけに、自信に満ちた娘の言動には理解があったが、それでも何が起こるか分からないのが代表を決めるパンティオン・ジャッジであり、その後の対ドラゴンとの戦いなのである。我が娘が代表になり、見事に世界を救うことを女王として望むが、母としては何事もなく結婚し、幸せになってもらいたいと思ってしまう。


「お母様。私の旗艦、コーデリアⅢ世は史上最大、最強の戦列艦よ。そして、私の第1魔法艦隊は他に戦列艦5隻、巡洋艦9隻、駆逐護衛艦14隻の艦隊。他の公女の艦隊とは、戦力が圧倒的に違いますわ。この第5魔法艦隊なんか、旗艦でさえ、高速巡洋艦であとは駆逐艦2隻?これで勝てるはずありませんわ!異世界の男がいようとも、優越がひっくり返るとも思えませんことよ」


(私のライバルになるのは、せいぜい、第2艦隊のリメルダぐらいよ。それでも、私の方が戦力が上だわ。問題は他の国家の艦隊ですわ。なんとしてでも、私が勝ち残り、この世界を救う英雄になるのです)


 マリー・ノインバステン王女、20歳。透き通るような美しい金髪に真っ白な肌、抜群のプロポーション。国民から愛され、魔法王国メイフィアの至宝とまで言われている第1公女である。マリーはそう言うと、長い手足が優雅に映えるドレスを翻しながら、軽やかに部屋を出て行った。



「パンティオン・ジャッジ?」


平八は聞きなれない言葉に思わずナセルに聞き返した。


「ああ、パンティオン・ジャッジさ。5人いる公女の魔法艦隊が戦い、この国の代表を決めるのさ。そして、他国の代表と戦い、勝った艦隊がドラゴン、エターナルドラゴンと戦う」


「戦うって、味方同士で戦うなんておかしくないか?」

「それが昔からの決まりだから仕方ない。それにパンティオン・ジャッジじゃあ、船は撃破されるけれど、乗組員は死なないよ。緊急脱出魔法が自動で作動するからね。おっと、そろそろ、演習空域だな。攻撃準備にかかるから、話しの続きは後だ」


 そう言って、ナセルは席に向かい、何やら操作をし始めたので、平八は艦長席に戻るしかなかった。


平八は心のメモに整理する。


<平八メモ>

その6 魔法艦隊の目的は、この世界を滅ぼすというドラゴンを退治すること。

その7 その前にパンティオン・ジャッジという予選みたいなものがある。

その8 パンティオン・ジャッジで戦って負けても艦は破壊されるが、命までは失わないらしい。


 艦橋から見る景色にマルビナ島と言われる浮遊島が見えてくる。その周りに無数の岩が浮遊している。風が強いのか、その岩は風に合わせて複雑に移動している。


「これより、第5魔法艦隊は想定戦闘空域に急速接近、急上昇の後、上空4千メートルより、急速下降し、主砲、副砲を3連射して離脱。目標を破壊する。艦長及び提督よろしいでしょうか?」


ミートちゃんが作戦を告げて、平八とフィンに同意を告げる。


「ああ、何だか分からないけれど、やってくれ」

「了解しました。あ、あの…」


 フィンは何か平八に言いかけたが、またもや顔が真っ赤になってしまう。それを察したミートちゃんが、


「護衛の駆逐艦2隻は、本艦の後に続かせます。艦長は魔力を集中してください。魔力エネルギーが100%の状態でないと敵の防御壁を打ち破れません。フィン提督は他の船にも魔力を割かなければいけませんので」

「え?」


そうミートちゃんに言われて、平八は混乱した。


(魔力を集中と言っても、一体どうすればいいのだ?)


「あと20秒で上昇に移ります。総員は体を固定してください」


 航海士のカレラさんがそう告げる。平八は慌てて座席のベルトを付ける。艦の魔力を示す半球の珠が青から黄色に変わる。魔力が下がっているのだ。平八は慌てて、魔力を送り込もうとするが、要領が今ひとつ、つかめない。


「主砲、副砲とも準備OK。38センチ魔法弾は、火属性を選択。ファイアエクスプロージョンL10とL5を斉射する」

「目標に接近後、魔法防御クリスタルウォールを発動」


攻撃担当のナセルと防御担当のパリムちゃんの声。


「18、19、20。レーヴァテイン上昇します!」


 カレラさんの操縦で高速巡洋艦が150mの長さの艦体を上に向けて急上昇する。魔法エンジン全開で、あっという間に目標中域へ到達する。そこから、放物線を描くように目標の浮遊岩に急降下で接近する。


「艦長!エネルギーが足りない!ファイヤーエクスプロージョンレベル主砲で3」

「魔力あげるって、どうすれば!」

「きゃっ!」


 平八はフィンちゃんの声を聞いて瞬時に振り返った。急降下のためにフィンのタイトなスカートが少しめくれて、それをフィンちゃんが慌てて抑えている場面を直視することになった。


(フィンちゃんのパンツ…!白!?ラ、ラッキー!)


たちまち、魔力ゲージが黄色から青に上がる!いや、青から紫色に変化する。


「レベル10オーバー!ファイヤーエクスプロージョン発動、斉射三連!」


2門の主砲と1門の副砲が火を噴いた。高速巡洋艦レーヴァテインの主力武器だ。目標の浮遊岩が粉々になる。後に続く、駆逐艦も魔法制御の高速魚雷を発射し、2つの浮遊岩をくだいた。


「レーヴァテイン、敵より離脱。これより水平航行に移る」


 カレラさんの冷静な声に平八は脳裏に焼き付いたフィンの姿を脳内フォルダにしまっていた。


(煩悩で魔力が上がるなんて、僕はなんてハレンチな男なんだ!ごめん、フィン)


 今のところ、バッテリーの役割しか果たしていない自分が情けなく思う平八であった。


「今の攻撃、主砲は1つ外したわね。ナセル、一撃必殺じゃないと、この船では勝てないわよ」


 ミートちゃんが、後方の目標の破壊状態を調査して、そう攻撃担当のナセルに告げた。ナセルは、主砲の弾道記録を確認しながら原因を分析する。


「ああ、わかっているけど、思いのほか振動が激しいんだよな。補正値をもう少し調整しないとダメだな。外したのは前方下の主砲だよな」


 レーヴァテインには3門の主砲と2門も副砲があるが、それぞれ1門ずつは後方用であるために、突撃して撃つのは前面の上と下につけられたものだけになる。


「2隻の駆逐艦の高速魚雷は、6発中2発命中よ。まあ、及第点かな。フィン、初めてにしてはうまく艦隊を操っているわ」


 フィンちゃんがコクッとうなずく。平八は一人だけ、何もしていない自分が恥ずかしかった。艦長として何かできることはないかと考えても、思いつくことはなにもない。だが、平八が何げに視線を向けた東方向に何か羽ばたいて飛んでいる物体を見つけた。


「何か飛んで近づいてくるけど、あれはなに?」


指を差した。乗員が一斉に目を向ける。


「うそ!こんなところで出くわすなんて!」


 ミートちゃんが慌てて索敵魔法装置で確認する。しかし、その物体はアンチ探索魔法をかけているらしく、正確な距離がつかめない。


「ありゃ、こちらを認識しているな。追ってくるぞ」


 ナセルがどうするかの判断をして欲しいと平八とフィンちゃんの方向を見る。フィンちゃんがそれに応える。おとなしい顔をしていても、この緊急事態にはとっさの判断をする。


「全力でこの中域を離脱します。パリムさん、至急、近くのパトロール艦隊に連絡。至急来援をお願いしてください」

「はい。提督。こちら、第5魔法艦隊旗艦レーヴァテイン。ドラゴンらしき生物と遭遇。至急、救援を乞う。繰り返します…」


パリムちゃんの通信を聞きながら、平八はフィンちゃんに聞く。


「フィンちゃん、あのドラゴンから逃げ切れるのか?」

「わ、分かりません」


 命令しておいて、この答えはない。とりあえず、フィンちゃんとしては想定外のことが起こったので逃げようと思っただけであろう。だが、どんどん追いついてくるドラゴンを見るとこれでは追いつかれるのも時間の問題だろうと平八は思ったので、ナセルに、


「後ろの主砲であのドラゴンは倒せないのか?」


と尋ねた。


「ありゃ、Sクラスのドラゴンだ。耐性は何か不明だから、確実を期すなら、攻撃魔法ドラゴンバスターを発動だな。それなら、火耐性でも冷気耐性でも対応できる」

「耐性?って攻撃の耐性ってこと?なるほど!」


 平八はこれがRPGゲームと同じだと思えば、自分も役に立てると希望がわいてきた。この船は魔法使い、自分(艦長)がその頭脳だと思えばいい。それに船の動きはアクションゲームだと思えば分かりやすい。


「ナセルは主砲のドラゴンバスターの準備を。ミートちゃんは、敵の耐性を調べて!フィンちゃんは後方の駆逐艦から機雷を発射する準備を」

「へ、平八くん、何を?」

「このままだと追いつかれるから、戦おう。前方に大きな浮遊岩がある。あの手前にあいつの弱い耐性に応じた機雷を敷設。急速にあの岩を迂回して、奴を機雷源に追い込み、ドラゴンバスターを撃つ」


「おおお!さすが、異世界から来た艦長。プロみたいな作戦が立てられるとは」

「艦長、ドラゴンの素性が判明。ブルードラゴンの幼生。よって、弱点は雷撃系」


「サンキュー。ミートちゃん!フィンちゃん、駆逐艦の機雷は雷撃属性に変換。ありったけを射出して!」

「は、はい」


 平八の作戦が実行される。後方の駆逐艦からフィンちゃんによって、雷属性の機雷が射出される。ブルードラゴンは、この機雷源で立ち往生した瞬間を狙って、後方の主砲で機雷を爆破させる。電撃攻撃にブルードラゴンが、大ダメージを受けている間に全速力で右から回り込んだレーヴァテインの主砲が雷撃にのたうちまわるドラゴンを捉える。


「今だ、ナセル、撃て!」

「ドラゴンバスター、撃て!」


バシシュウウウウ・・・と2本の光の矢が放たれる。聖属性の攻撃魔法ドラゴンバスターだ。ドラゴンの対魔法障壁を無視して体に物理的に突き刺さる魔法だ。



ぎゃうううう・・・

翼と体にヒットしたドラゴンはぐったりとし、翼の動きが止まって下へ落ちていく。


「やったあああああ!」

「きゃあ、すごいわ!わたしたち!」


 ナセルとミートちゃん、艦橋の女の子たちから歓声が沸き起こる。平八はフィンの方をそっと見た。にっこりと笑ったフィンは、ミートちゃんに、


「ミート、討伐1よ。ボーナスよ!お肉が食べられるわよ」


とお姫様らしくないセリフを言った。



討伐1って?お肉が食べられるって?そう言えば、艦内の食事も安いハンバーガーみたいでしたし…。フィン第5公女…何だか謎です。でも、パンツは「白」

やりい~っ!

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