処女航海に出たけれど…分からないことだらけです!(参)
魔法艦隊の船は艦長ないし、提督の魔力供給を受けて動きます。攻撃も然り…。
精神的ダメージを食らうと魔力供給に一時的な悪影響を受けることがあります。
(魔法艦隊艦艇操作マニュアルより)
「そろそろ、お昼ご飯の時間ですよ~」
そう言って、艦橋にメイド長のアマンダさんが給仕の女の子2人を連れて現れた。ワゴンに飲み物とパンらしき食べ物が乗っている。メイド長のアマンダさんは、エプロンドレスがよく似合う長身の新妻って感じの人だ。長い髪をポニーテールにしていて、フリフリのメイド姿でボディは、出るところはしっかり出て、引き締まっているところはきゅっと引き締まっている感じだ。
(こんなところで、リアルメイドさんに会えるとは…)
平八は少し感動していた。そして、アマンダさんと一緒に来た2人を見た。
給仕している2人の女の子は、ちょっと変わっている。よく見ると、メイド服の背中に小さな翼(コウモリ?)が生えていて、ひらひらしているし、よく見ると口元に小さく2本の牙?が見え隠れする。二人共、ミニスカートから細い生足を出し、ハイヒール姿であったが、てきぱきと給仕する。顔は二人共ソックリであるが、一人は金色の髪、もう一人は銀色の髪である。
「はい、艦長閣下。本日のランチは、一角獣のヒレ肉が少しだけ入ったサンドイッチだわん」
金髪の髪のメイドさんが、そう言って平八に食事を差し出す。
(だわん?)
おかしな語尾に平八は金髪のメイドさんの顔を見る。幼い感じもあるが、顔は恐ろしいくらいの美形である。にっこり笑うその顔を見ながら、平八は差し出されたカップに口を付ける。魔法王国メイフィアで広く飲まれているシャワソーダという炭酸水だ。色は赤いが味は、コーラと変わりがない。金髪ちゃんが持ってきたサンドイッチもいわゆるハンバーガーと大差ない。
「にゃうん!ダメだにゃ」
前の方で後ろのスカートを抑えている銀髪ちゃんが声を上げた。どうやら、ナセルの奴がミニスカートをめくったらしい。
「あなたねえ!使い魔のスカートめくって何が楽しいのかしら?」
「イタタタタ…」
またしても、ミートちゃんに耳を引っ張られている。
「使い魔?」
平八は給仕を続けている2人を見ながら、つぶやくとアマンダさんが笑いながら、
「艦長、2人は私が召喚した小悪魔なんです。金髪の方がゼパル、銀髪の方がベパルといいます」
「召喚魔法ですか?」
「はい。メイド長の資格があると召喚魔法の使用が許可されるのですわ。まあ、契約上、彼女たちはメイドの仕事以外には使役できませんので、くれぐれも夜伽などを命じられませんよう」
「夜伽って…」
平八は顔が真っ赤になる。すると、なんだか後方からゴゴゴ…と黒い重苦しい圧迫感を感じた。そちらを見ると、フィンと目が合う。ちょっと怒ったような目つき。でも、フィンはすぐ下を向いてしまった。
先程まで食べていたハンバーガーのタレが口元に付いているのが超絶可愛い。フィンちゃんってお姫様なのに、なんとなくそんな感じがしない。いや、普通の女の子よりはどことなく、気品があるにはあるが、いいところのお嬢さんという感じで、お姫様という近寄りがたいオーラがないのだ。手を伸ばせば届く?みたいな親近感がいい。
「おや?おかしいわ…。機関室、船の推進力が落ちているわ!浮遊力も下がってきている」
カレラさんが、そう報告する。通信担当のプリムちゃんが、機関室からの報告を伝える。
「魔力が後退しています。30%低下、どんどん、低下していきます!」
「まずいぞ!原因は?」
カレラさんとプリムちゃんが、同時に平八を見る。平八はドキっとしたが、平八を見ていたのではない。後ろのフィンを見ていたようだ。ミートちゃんがフィンのところに駆け寄り、そして、平八に叫ぶ。
「艦長、魔力をアップさせてください。提督の魔力供給に問題があるようです」
「え?魔力アップって…」
「目をつむって、船を上昇させるイメージです!早くしないと、船が下降して酸の海に突っ込んでしまいます」
確かにレーヴァテインは、下降して下の分厚い雲の層に突っ込もうとしていた。高さ1000メートルまで下がっている。
(目をつむって、船を上昇って…どうすりゃいいんだ!?)
「レーヴァテインさらに下降中」
カレラさんの声が聞こえる。
「仕方ないなあ!世話の焼ける艦長だこと!」
ミートちゃんが平八の席に来る。後ろから抱きかかえるように、平八の右手に手を添えた。右手はレーヴァテインの魔力供給を行う透明な半球上のものに添えられている。現在は赤色になっている。魔力供給が足りないのだ。
「提督の魔力供給が止まって、艦長からだけのものになっています。全開で供給しないと船の浮力に影響します」
「ううう…全力で供給するといっても、どうすりゃいい」
「できます。艦長の魔力は桁外れですから。まだ、それをコントロールする術がないだけです。大丈夫です。わたしが教えますから、私に任せて」
(私に任せてって…)
平八はその言葉でドキドキしてしまった。気がつけば背中にミートちゃんの柔らかい胸の感触が…これは…平八の煩悩が、妄想が爆発する。
ベッドに女の子座りしているミートちゃん。白いバスタオルをまとっている。大きな胸の谷間が見え、バインバインっと誘っている。
「大丈夫です。落ち着いて、そうゆっくりなでるように気を送り込んで…そう、上手よ!」
実際のところ、平八は半球上の魔力供給装置に魔力を送っているだけだが、妄想ではミートちゃんのおっぱいを撫で回している映像が頭に浮かんでいる。あまりの心地よさに、思わず、右手でもみもみする仕草をする。赤い半球が黄色に変わり、やがて青になった。
「魔力供給、飽和状態。レーヴァテイン、上昇する」
カレラさんがレーヴァテインの体勢を立て直す。
「はあ~まったく世話が焼ける。艦長はそのまま、魔力供給を続けて。相変わらず、すごいパワーだわ。びっくりしちゃう。それにしても!」
ミートちゃんは、平八から離れて、再び、フィンのところに行く。フィンの手を取ると艦橋を出て、フィンの部屋(提督の私室)に行く。
「フィン!どうしたの?急に魔力供給を乱して」
「だ、だって、平八君の夜伽に使い魔をって」
「ば、馬鹿ね。あんなの冗談に決まっているじゃない。男はエロい動物だけど、艦長はそこまで度胸はないわよ」
「そうでしょうか…」
「もう、フィンたら、私の前では普通にしゃべれるのに、どうして男の子の前だとそんなに恥ずかしがるの。それじゃあ、思いも伝わらないよ。フィンって男嫌いなの?」
「ち、違うよ。どちらかというと、男の子大好き。男の子とお話、もっとしたいし、男の子に触られて、ちょっとエッチなことされてみたい」
「エ、エッチって、第5公女ともあろう方が大胆な。でも、男の子なら誰でもいいわけじゃないよね」
「う、うん」
そううなずくとフィンは顔が赤くなる。
(艦長か、艦長だよね。この反応。はあ~)
と心の中でため息をつくミートちゃん。どうやら、今回、第5公女に選ばれた親友は、異世界の青年に恋をしてしまっているらしい。ミートちゃんが見たところ、相手の平八もフィンに惚れている様子だから、これは相思相愛である。ただ、問題は2人とも恋愛初心者で簡単に進まないだろうと想像できたことだ。それにフィンには第5公女、魔法第5艦隊提督としての責務がある。
「わたしが艦長…平八に、代わりに言ってあげようか?フィンは平八のことが大好きって」
「だ、だめえ!言っちゃダメ。わ、わたしから伝えるから」
「いつ?」
「こ、心が通じてわたしに勇気がわいてきたら…」
(はあ~)
この恥ずかしがり屋では、一生言えないとミートちゃんは思った。それは、平八も同じだろうとも。いずれにしても、平八のことで心を乱しただけで、艦の操縦に支障がきたしたら意味がない。
「フィン、多分だけど、平八もフィンのことが絶対好きだよ。これは間違いないよ。だから、安心して。あと、男の子は女の子に一途でも、つい目が他の女の子にいっちゃうことがあるの。そういう動物だから、いちいち、落ち込まないの。でも、フィンの方も少しはアプローチしないと、他の女の子にとられちゃうぞ」
「う、うん。ちょっとは、恥ずかしいけど、がんばって、平八くんと話してみる」
「そうするといいよ。じゃあ、艦橋に戻ろうか」
ミートちゃんは、部屋を出るフィンの後ろ姿を見ながら、この親友の数奇な運命を思いやった。
フィンちゃん、おとなしい顔していて、「男の子大好き~」とか止めてください。萌え死んでしまいます。




