高速巡洋艦レーヴァテインの秘密(七)
今回はレーヴァテインの艦内捜索に向かったラブコメカップルの話し。確か、封印がどうのこうのという話でしたから、大変な事態に・・。
軽い男、ナセル、男の意地を見せられるか!?
ナセルは向かってくるガーディアン(金属でできた魔法生物、アイアンゴーレム)に向かって2、3発ハンドガンをぶっぱなした。だが、無情にもそれははじかれてしまう。すぐ頭を引っ込めて移動する。
先刻、レーヴァテインの中枢部に侵入したナセルとミートちゃんの二人は、封印を守るガーディアン二体に襲われたのであった。一体は頭を使ってなんとか転倒させて、二人の魔力を統合した雷撃魔法サンダスレベル3で行動不能にさせたが、そこまでであった。
残り一体に追われ、二人はなんとか逃げ隠れていたのだが、見つかってしまうのは時間の問題であった。
ナセルはミートちゃんを隠した通路脇の隙間にたどりついた。彼女は、壁に寄りかかり、息を荒げている。右肩をガーディアンに掴まれて床に叩きつけられたことで、右腕と肋骨が折れているようであった。ナセルが上着を破り、包帯替わりに応急処置をしたが、早く治療したほうがよいと思った。だが、そうするためには、ガーディアンをどうにかするしかない。
「はあ、はあ…ナセル、あんなものが艦内にいるなんて…」
激痛に耐えながらミートちゃんは、ナセルに話しかけた。話していないと気を失いそうだ。
「あまり、しゃべるなよ。ミート。折れた肋骨が肺に刺さると大変だ」
「大丈夫よ、肋骨はヒビが入っただけよ。それより、アイツ、どうするの?」
「倒すには魔力が底をついている。無理だな」
先程は二人の魔力を合わせて、ハンドガンから強力な魔法を発射したが、それによりミートちゃんの銃は使用不能になった。今はナセルの銃でわずかばかりの魔力をのせて撃つだけだから、威力はハンドガンの粋を出ない。
「あそこよ、あそこ。ガーディアンが両サイドに配置されていた中央の制御盤。あそこが封印解除するパネルよ。おそらく、起動するにはIDとパスワードが必要だわ。でも、それはレーヴァテイン起動のものと同じかもしれない」
「じゃあ、あそこになんとかたどり着いて、それを入力して封印解除すれば奴は動かなくなるというわけか?」
「分からない…わ、それは」
「教えてくれ!」
「はあ、はあ、ダメよ。もし、解除できなかったら?解除してもアイツの動きが止まらなかったら、あなた、死ぬわよ」
「ここにいても、そのうち見つかるさ。そうなれば、2人とも殺されるな。賭けに出るしかない。奴は俺たちを探して徘徊しているから、今なら解除パネルに近づけるだろう。IDとパスワードを教えてくれ…」
「IDは(マグナ・カルタの公女)、パスワードは(スキスキ、平八くん、愛してる)よ」
「フィンちゃんらしいけど、この緊迫感でこれはないよな」
「フフフ…そうよね。ナセル、無理してはいけないわ。奴に見つかったら迷わず逃げてね」
「君を置いて逃げない。必ず、解除してみせるさ。なあ、ミート」
「なに?」
「もし、解除できたらさ…いや、こういう状況で言うのは卑怯だなよな。やめておく」
「言って、言いなさい。聞かずにあなたが死んだら、寝覚めが悪いから」
「怪我しているのに相変わらず、口は悪いな」
「早く言ってよ、激痛で気を失いそうだわ…」
「だからさ、解除できたら…付き合ってくれないかな?なんてやっぱり、卑怯だよな」
「…卑怯じゃないよ…」
ポツリとミートちゃんが言った。
「あなたは女の子には誰にでも優しくて、軽い男だけど…そう言われて、うれしい…。返事はO.K.よ。だから、死なないでね。彼女がここで助けを待っているのですから」
「や、やった!勇気百倍だ」
ナセルは右手に持ったハンドガンの弾数を見た。魔力をのせて撃てるのは7発である。
「ま、待って」
ミートちゃんは、ナセルのズボンを引っ張った。ナセルが腰を下ろすとその顔を引き寄せた。軽くキスをする。
「わたしの残った魔力を移したわ。全弾を一つに集中させれば、サンダスレベル1ぐらいは撃てるでしょう」
そう言って、ミートちゃんは気を失った。ナセルはハンドガンをじっくり見る。装弾数は魔力によって変わる。7発が24発マックス状態を超えた。この場合、全てを1発にこめるバースト射撃ができるのだ。ミートちゃんが言ったとおり、それは雷撃のローレベル、サンダスレベル1程度であった
が、アイアンゴーレムの弱点である雷属性なら、なんらかのダメージは与えられるだろう。
ナセルは思い切って飛び出した。前方の解除パネルまで30mの距離だ。だが、運悪いことに左の通路からガーディアンが侵入してきた。ナセルたちを見失って、元の位置に戻ってきたのだ。
「ち、ちくしょうめ!」
ナセルは走りながら銃を構えた。レベルが低いだけにできるだけ近づいて撃たないと意味がないのだ。
(できればゼロ距離射撃)
ガーディアンは腕を振り上げる。その距離、5m。だが、そこでナセルに運命の一撃が襲う。足がもつれたのだ!バランスを崩したナセルは手前3mでコケた。コケるだけでなく、ヘッドスライディング状態でガーディアンの足元に滑っていった。
「わああああっ~」
止まったところは、ガーディアンの股の下。
だが、このことは思いがけない幸運をもたらした。攻撃対象がこのような突拍子もない行動に出るとはまったく予想していなかったガーディアンは、振りあげた手をそのままにして、攻撃対象を見失った。キョロキョロと左右を見渡している。
「カッコ悪いけど、ミートが見てなかったことがラッキー!ついでにガーディアンのケツにぶち込んでやる!」
ナセルは銃を構える。ゼロ距離から放たれた雷撃弾は、尻から脳天に突き抜けた。プスプスっと音を出して、その場に膝をついたガーディアンは動きを止めた。
「やったか?いや、動きを止めただけか」
崩れ落ちてないということは、完全に破壊できてないということだ。おそらく、メインの伝達経路は破壊できたが、サブの経路で体のコントロールをするための一時的なフリーズ状態なのだろう。せめて、サンダスレベル2以上なら、破壊できたかもしれない。
だが、時間稼ぎができたことは間違いない。すぐに置き上がったナセルは、すぐさま、IDとパスワードを打ち込む。
「えっと、マグナ・カルタの公女…と、パスワードは(スキスキ、平八くん、愛してる)っと。これで解除できなきゃ、お笑いだな!」
ナセルはボタンを押す。ピーっとなって、下にコメントが出る。
第1パスワードは解除できました。
第2パスワードを入力してください。
「はあああああ!マジかよ!」
後ろでガーディアンが立ち上がる音がする。起動したのだ。ナセルを殺すために動き始める。
(第2パスワードだって、なんだ?第2だろ?艦長のか?平八、お前どんなパスワードなんだ?)
ナセルは考えた。後ろのガーディアンが近づき、攻撃態勢に入っている。渾身の一撃パンチをくらったら、ナセルの体は粉々に砕けてしまうだろう。
「仕方がない!これだろう、平八、お前のパスワード」
ナセルは素早くキーボードを撃ち込み、速攻で解除ボタンを押した。ガーディアンのパンチがナセルを捉える瞬間…キュイン、キュインとパトランプが鳴った。解除できたのだ。
ガーディアンは動きを瞬時に止めて、その場に停止したのだった。
「や、やった!ミートやったぞ」
ナセルは思わずガッツポーズをした。彼が入力したパスワード。
(スキスキ フィンちゃん 愛してる)
バカップルに助けられ、ここにまたカップルが成立したのだった。
パスワードが
スキスキ・・平八くん、愛してる・・・
スキスキ・・フィンちゃん、愛してる・・・
マジですか?バカップル。
書いてる私も暴れそう!




