高速巡洋艦レーヴァテインの秘密(壱)
第2魔法艦隊をパンティオン・ジャッジから離脱させたローザ・ベルモントかなりのバカお嬢様のようです。お父様のお金のチカラで調子こいてますが・・・。リメルダさんの倍返しリベンジなるか?
第5魔法艦隊の奇跡的な勝利と第2魔法艦隊が第3魔法艦隊に敗れるというニュースは瞬く間に魔法国家メイフィアを駆け巡った。第3魔法艦隊が第2魔法艦隊を打ち破ることができたのは、第2魔法艦隊がMクラスのドラゴンと死闘を演じ、かなり戦力を失っていたことが原因であったが、経済界を牛耳り、マスコミにも力が及ぶベルモント家の威光が働いてか、そのことは一切国民には知らされなかった。
だが、第12パトロール艦隊の生き残りの兵士が帰還するにつれて、第3魔法艦隊の卑怯な振る舞いは少しずつであるが国民の知るところとなっていった。
「ローザ、ローザはいるか!」
首都クロービスにある広大な邸宅で、ベルモント財閥総帥フェルナンド・ベルモントが愛娘を探していた。ローザの父である。
ローザは第2魔法艦隊との戦いを終えて帰投し、昨日まで連夜のパーティを繰り広げて馬鹿騒ぎをしていた。パーティ疲れでソファに寝転び、うたた寝をしている娘を見つけたフェルナンドは、バカ娘をたたき起こした。
「なあに?パパ」
目をこすり、あくびをしながらローザは目を開けて体を伸ばした。
「お前、第2公女リメルダ様に卑怯な手で勝ったそうだな?」
「ああ、そのこと?」
「第2魔法艦隊は第12パトロール艦隊の救援に行き、見事にMクラスドラゴンを退けたのに、お前はその直後に傷ついた第2魔法艦隊を襲ったと聞いたが?」
「はい、そうですわ。千載一遇のチャンスでしたから」
「・・・・・・・。さらに、レジェンドフォレストに落下したリメルダ様を救出せずにさっさと帰ったと聞いたが?」
「あれは、彼女が逃げたからですわ。逃げたものを探すことなんてできませんわ」
プルプルとフェルナンドは体を震わせた。彼は現在60歳を超えており、ローザは長いこと子供ができなかったところに生まれたたった一人の後継であった。そのせいか、幼少の頃より猫可愛がりに可愛がりすぎたところがあり、育て方を間違ったと最近やっと理解できるまでになったが、それでもバカ娘が引き起こす問題の尻拭いに奔走してしまうバカ親からは卒業できていなかった。
「ば、馬鹿者!世間でお前がなんと言われておるのか分かっているのか!」
「庶民は馬鹿ですから噂もすぐ消えますわ。現にマスコミは何も報道していないんじゃない?」
「それはわしが抑えておるからこそだ。それにリメルダ様を救出しなかったことは、貴族の中で問題になっている。なあ、ローザ、もう提督ごっこはやめて家でおとなしくしておいてくれ」
「やだやだ、わたし、そんなのつまらない!」
「パンティオン・ジャッジは遊びではない。この世界を救うための予選会なのだ。お前のような遊びで参加など、全世界の危機に許されない」
「パパはわたしが世界の救世主になることに反対なんだ。もうパパのこと嫌い!」
そう言われてフェルナンドはひるんだ。経営の鬼と言われ、非情な判断を次々と下して大きくしてきた巨大財閥の総帥も娘には大甘の大甘ちゃんになっていた。
「そんなことを言わないでくれ。お前に嫌われたら、パパは生きていけない」
ローザの豊かな金髪もクリクリした大きな目も今はなき妻そっくりであり、フェルディナンドは娘を通して最愛の妻を思い出していた。
そもそも、このパンティオン・ジャッジに娘が選ばれたのも財閥の豊富な資金を動員してのこと。本来、ローザ程度の魔力では都市の代表程度にはなれても国の代表には遠く及ばない。順位的には50番台だった娘を3位まで上げるのに一体どれだけお金を使ったことだろう。
「ねえ、パパ。マリー王女様の旗艦コーデリアⅢ世なみの魔法障壁を構築するのに、あと100万ダカット必要なの。改造費お父様のツケでいい?」
「ひゃ、ひゃくまんダカットだと!?」
100万ダカットは現代日本の20億円相当に当たる。このパンティオン・ジャッジのために娘につぎ込んだお金はすでに数百億円に達していた。さすがにポケットマネーで何とかできるような金額ではない。
「ねえ…買ってよ、パパ。それとも可愛い娘が惨めに負ける姿を見たいの?」
「仕方がない。旗艦の改造をパパが支払う。だがなローザ。お遊びは決勝戦までだ。我が国の代表はマリー様にやっていただき、お前は代表になってはいかんぞ。ドラゴンと戦うなんてそんな恐ろしいことをやって欲しくない」
「わかってるわよ、パパ。さすがにわたしもあんな怪物と戦うなんて面倒だわ!マリー様とよい戦いができればいいわ」
(はあ~っ)
とフェルナンドは安堵のため息をついた。娘の気まぐれに付き合うのはいいが、危険なことは絶対させたくなかったのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「で、第3魔法艦隊の陣容は、戦列艦5、巡洋艦7、駆逐艦12、戦力差は絶望的ですね」
第5魔法艦隊の艦長付き副官のトラ吉がそう机上の駒を見ながら言った。ここは、マグナカルタの港に停泊する第5魔法艦隊旗艦レーヴァテインの作戦会議室。ここには、司令官であるフィン、その副官のミートちゃん、旗艦の攻撃担当のナセル、航海長のカレラさん、第5魔法艦隊に正式に加わった第2魔法艦隊提督のリメルダ、その副官兼旗艦ブルーピクシーの艦長であるナアムと平八の7人である。
第2魔法艦隊は第3巻魔法艦隊に撃破されたのだから、第3魔法艦隊に編入されると思ったが、旗艦が破壊されたわけでなく、正式にはダメージは与えられたが負けたわけではないという判定となった。しかし、提督のリメルダ自身が第5魔法艦隊に降伏したので、こういうことになっている。
もう一人、負けて編入された第4魔法艦隊提督リリム・アスターシャがいるが、彼女は応援ありがとうツアーと称するコンサートの最中で来ていない。第4魔法艦隊から受け取ったのは、使えるのは巡洋艦1隻しかなく、大破した戦列艦は6ヶ月は修理にかかるということで、第3魔法艦隊との戦いには使えなかった。
(ついでに修理費が高くて、修理ができないでいた)
「リメルダさんの戦列艦1、巡洋艦2、駆逐艦3の戦力が加わって少しは戦力は上がったんだ。勝ち目はあるさ」
そう平八は力強く言った。対面にいるフィンを見つめながら、励ますようにだ。だが、平八の横にはいつもリメルダが位置していて、意識的に体を寄せてくる。
「へいはち、わたしのブルーピクシーも役に立てるわ。火力で負けるなら、作戦で勝ちましょうよ。こちらは魔力ではローザを上回っているのだから…」
「じと…っ」
フィンちゃんの視線が痛い。やっとリリムちゃんが離れてくれて、ほっとしたのにガールフレンドと称するリメルダが親しげに話してくるので、フィンちゃんの機嫌が直らないのだ。機嫌といえば、トラ吉はブルーピクシーの艦長であるナアムと知り合いのようで、どうも様子がおかしい。ナアムは救い出された時にトラ吉に話しかけたのだが、トラ吉自身が素っ気ないのだ。
トラ吉の奴は第2魔法艦隊の救出を主張したのにこの態度は謎であったのだが、平八としては、今は第3魔法艦隊の決戦に備えて策を練ることに専念することにした。
(これだけの戦力差だ…。勝つためには敵の旗艦のみ、一点集中で撃破するしかない。だが、第5魔法艦隊には一撃で敵を倒す火力がない)
一撃で戦列艦級を撃沈するには、やはり戦列艦級の主砲で周りから集中砲火を浴びせるか、最大の攻撃デストリガーしかない。だが、第5魔法艦隊の旗艦レーヴァテインには、戦列艦でないためにデストリガーが撃てない。この攻撃法はパンティオン・ジャッジにおいては旗艦のみに許されているのだ。
よって、リメルダのブルーピクシーは封印されており、デストリガーを発動することができないのだ。
デストリガーがなければ、正攻法で攻めるしかないが、そのためには旗艦の周りに存在する敵艦を排除する必要があるが、それができるだけの戦力がないのだ。
(どうするべきか…)
「ああ~いい案が浮かばない!今日はこれまでにしよう」
「そうですね。まだ戦いまで2週間あります。それまでに良い案を考えれば…」
そうフィンちゃんが作戦会議を打ち切った。
資金豊富で戦力も充実している第3魔法艦隊にどう挑む?艦隊戦じゃ、盗賊倒したみたいにチート技は使えないぞ!




