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冴えないおっさんプロゲーマー、TS美少女で成り上がりプロゲーマーに返り咲きます!  作者: 田中


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第三一話 両替と屋台

 坂からオレンジが、目の前で死亡している人物を前に呆れたような声を漏らす。


「コンビニ強盗してんのは良いけど……俺、初めてよ? ボブに殺されてる奴見んの。強盗できた?」


 コンビニ強盗が起きているという通報を受けて駆け付けた坂からオレンジは、床に倒れるトゥ†騎士(ナイト)†を見て二度目の溜め息を吐き出す。


「お前さ、ほんと向いてないよ。犯罪。やめたほうが良い」


 深々と息を吐いた坂からオレンジが救急隊を呼び出す。


「悪い、五二二〇のコンビニに一人寄越してくれ」


『あ、はぁい。さっき死亡者の通知来たのでマイッカーが向かってまーす』


「はいどーも」


 救護しやすいようトゥ†騎士†を外へと運び出すとすぐに到着したマイッカーが坂からオレンジへと声を掛ける。


「お疲れ様です!」


「はいおつかれ。コイツの蘇生頼むわ」


「分かりました! コンビニ強盗制圧お疲れ様です!」


 マイッカーがそう言うと、坂からオレンジが軽く頭を押さえる。


「そう、ね? 制圧、制圧ね」


「違うんですか? あ、院外なので五〇万お願いします!」


 すぐに蘇生されたトゥ†騎士†が立ち上がると同時に請求され、「うああ……」と唸りながら五〇万を支払う。


「では!」


 マイッカーがバイクへと跨り去っていくと、手錠を掛けられたトゥ†騎士†が「あのー」と声を出す。


「オレンジさぁん、見逃してくれません?」


「俺だって見逃したいよ、お前何回捕まってんの。成功した犯罪いくつよ?」


「サイレント†騎士(ナイト)†さんと良く聞か†騎士(ナイト)†さんと一緒にやった銀行強盗以降〇ですね」


「お前マジで向いてないよ、辞めた方がいい。辞めて警察来な? せめて」


 呆れ果てたような坂からオレンジの言葉に、しかしトゥ†騎士†が「でもぉ」と情けない声を漏らす。


「俺が警察行ったら裏切りになるじゃないですかぁ」


「多分サイレント†騎士†も喜ぶよ? お前絶対向いてないから。向いてる仕事やりな? 飲食店とか」


 そう告げながら坂からオレンジがパトカーへと乗り込んで警察署へとトゥ†騎士†を連行する。到着した警察署の牢へとトゥ†騎士†を拘束してから坂からオレンジが再び深い溜め息を吐き出す。


「お前、保釈金払えんの?」


「もう素寒貧です……」


「だよなぁ? やっぱりやめな? 犯罪者。ギャング向いてないよお前」


 それでも「でもぉ」と「だってぇ」を繰り返すトゥ†騎士†に、坂からオレンジはスマホを取りだしてサイレント†騎士†の名前を探す。見つけたその番号へと電話をかける。


『はい、もしもし』


「あー、サイレント†騎士†? おたくのトゥ†騎士†、またうちで捕まってるんだけど、保釈金払いに来れん?」


『あー、……いつもお世話になってますぅ。いまから両替所強盗するから……えー、三〇分後には迎えますね』


『三〇分もかかんの?』


『良いって、警察なんて待たせとけば』


「聞こえてんぞ」


 坂からオレンジの言葉にサイレント†騎士†が笑う。


「お前! いま両替所強盗って言ったか!? 強盗した後に来るんじゃねぇよ! なんだお前ら、トゥ†騎士†はボブに殺されるし、お前は強盗してから来るって言うし!」


 坂からオレンジの言葉にサイレント†騎士†が思わず黙り、そして確認するように口を開く。


『え? あの、ボブに殺されたって』


「コンビニ強盗に行ってボブに殺されて床に転がってたわ」


 その言葉に、サイレント†騎士†が「ああ……」と思わず漏れたと言った様子の声を落として、それから静かに口を開く。


『トゥ†騎士†に犯罪やめな? って言ってもらえません?』


「もう何回も言ってんのよ。コイツ、俺の事務所の後輩だからこんな姿見たくないわ」


 サイレント†騎士†が思わずといった様子で小さく笑い、それから『じゃあ、両替所着いたんで行ってきます』と告げる。


「おい! 警察の前で犯罪してくる宣言やめろ!」


 通話を切ってから、坂からオレンジがトゥ†騎士†へと向き直る。


「サイレント†騎士†もお前のこと心配してたわ。やっぱやめな? 犯罪。流石に無罪にはできんけど、俺もお前のこと可愛いからさ」


 そんな坂からオレンジの言葉にトゥ†騎士†が項垂れる。


「飯とか水とかあんの?」


「全然無いです。そろそろ餓死しそうで」


「一旦手錠外してやるから食いな?」


 坂からオレンジがトゥ†騎士†の手錠を外してタコスと水をやると、渡す端からトゥ†騎士†が貪っていく。その様子に、本当に彼が餓死寸前だったことが坂からオレンジにも察せられる。

 ついでに五〇個のタコスと同量の水を渡してやり、煙草も五つ渡してやる。


「やっぱ飲食店とかどうよ。クレープ屋の火雷神が人足りないって話してたけど」


「うう……飯ありがとうございました」


「聞いてる?」


 もう一度手錠を掛けた瞬間、トゥ†騎士†が逃げ出し、扉を潜ろうとした瞬間坂からオレンジのテーザー銃がトゥ†騎士†に当たり感電して倒れ伏す。


「お前、ほんと向いてないんだからやめな? 保釈金高くなるだけよ、そんなことしても」


「でも……ボスに払ってもらうなんてダサすぎる」


「お前もう三回は払ってもらってるから四回目よ。一回目で言って、それは」


 手錠をかけられ痺れたままのトゥ†騎士†を牢の中へ片付けてから、坂からオレンジが無線を取る。


「あー、……いや、すみません。俺……あー、トゥ†騎士†の見張りを……はい、またです、はい。お願いします」


 それだけを告げて無線が切れる。


「まあ、ギャング辞めないなら辞めないで白市民の身分手に入れな? いま稼ぎ〇でしょ」


「はい……」


 しっかりと項垂れたトゥ†騎士†の様子に、坂からオレンジが牢の前へと座る。


 都合三〇分程度でようやく警察署前にさらばのスパローが停まり、そこからサイレント†騎士†が降りてくる。その足で地下にある牢へと向かうと、そこには座ってトゥ†騎士†と話している坂からオレンジの姿があった。


「遅くなりましたー」


「やっと来たか。両替所強盗はどうだった?」


「なんのことか分からないですね」


 サイレント†騎士†が肩を竦めて言うのを見た坂からオレンジは息を吐いてからサイレント†騎士†へ請求書を送る。


「ん? 安くない?」


「流石にもう……もう、こんなの見てられんよ……他には言うなよ」


 坂からオレンジの言葉に「はーい」とサイレント†騎士†が返事をして保釈金を支払い、牢から出たトゥ†騎士†と共に外へと向かう。


「お前さ、†騎士†じゃNight辞めるか」


 サイレント†騎士†の言葉に、トゥ†騎士†が迷子になった子供のような声で「え?」と呟く。


「残り一週間だけど、こんな失敗ばっかだと辛いだろ、俺はうちにいてくれても構わないけど」


 トゥ†騎士†は少しだけ悩んで、そして「そうですね」と呟く。


「ちょっと考えな?」


 サイレント†騎士†の言葉にトゥ†騎士†が頷き、サイレント†騎士†はサイクロンへ乗って走り出す。


 三時間後、トゥ†騎士†はクレープ屋の屋台を引いて警察署へとやって来ていた。

 ギャングの犯罪がどうにか一段落して、警察官たちが戻ってきていたところに屋台を引くトゥ†騎士†の姿があり、警察がわらわらと集まってくる。


「お前、また犯罪したのか!?」


「クレープ屋に就職しました! 見てください、俺の名前!」


「マジだ! おいおいおい! トゥ†騎士†が更生してる!」


 集まって来た警察が、安堵からトゥ†騎士†の背中を叩く。そして、一人一〇個二〇個とクレープを買っていくのだ。

 そこへ坂からオレンジが警察署から出て来る。


「お前! トゥ†騎士†! え、クレープ屋!?」


「はい! 更生したんで!」


「マジか、お前……もうギャングに戻るなよ!」


 坂からオレンジがトゥ†騎士†を二度殴ってからそう言うと、トゥ†騎士†が嬉しそうに応える。


「当然です! だって俺、こんなに稼いだのこの街来て初めてですよ!」


「……良かった、マジで。一〇〇個買うわ」


「あざーす!」


 嬉しそうにクレープを焼き続けるトゥ†騎士†の姿に坂からオレンジが安心したように頬を緩める。

 その日から警察署には毎日インしている限りは常にクレープの屋台が鎮座するようになっていた。

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