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冴えないおっさんプロゲーマー、TS美少女で成り上がりプロゲーマーに返り咲きます!  作者: 田中


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第二九話 愉悦と遊戯

 たった一五日間限定のGTA配信者混合鯖に、望は二日遅れで参加した。

 参加してから三日で白市民と黒市民の立場を手に入れ、バイクを手に入れ、ヘリの操縦を習い、そしてオイルリグまで経験した。残り一〇日でこのサーバーが終わるだなんて、望には考えられなかったのだ。


 誰もが、この短期間のサーバーに縋るように毎日何時間、何一〇時間もいる。

 食事も風呂も、全てGTAを惜しみながらログアウトしてから終わらせる。リスナーですら、そんな日々を楽しみに眺めているのだ。

 それは此夢望のリスナーも同じだった。

 GTAを始めたての望のリスナーは、GTAを遊ぶ望に対して辛辣だった。


──FPSでのし上がってきたんだからFPSやればいいのに


──FPSやらないならチャンネル登録解除します


──最近GTAばっかじゃね?APEXやれよ


 そんなコメントが次々と届く中、望はそれらを一切合切無視してGTAで遊んでいたのだ。

 さらばはバイクの操縦を練習し、時に警察を誘ってチェイスの練習をし、小型犯罪を積み重ねていた。

 自身の名(スパロー)を冠したヘリを操縦して遊ぶこともあった。


 事故を起こしたために破損したバイクに乗ってメカニックへ行くと、そこには初日に会った豆腐抜き湯豆腐が仕事をしていた。


「こんばんは、修理ですか? 購入ですか?」


 走ってきた女性の頭の上には“メカニック 宇佐山うさ子”と名が浮かんでいる。

 黒いスーツに赤いシャツ、そして覆面。確実に黒市民だと分かるだろう姿にも、メカニックは気にせずに近寄ってくる。彼らにとっては白市民も黒市民も同じく車両を愛する存在なのだ。


「あ! 電話くれたら出張行くって言ったじゃないですか!」


 声を上げてさらばの元へ走ってくるのは、さらばが初めて銀行強盗をした時に人質にした斬撃一閃だった。


「ちょっと、恐々邪魔。修理ですか?」


 宇佐山うさ子が斬撃一閃を殴って押しのけながらさらばへと問い掛ける。

 それに、さらばは思わず笑ってから言葉を返す。


「そう、さっき事故起こして破損したから頼む」


「はぁい」


「俺の扱い酷いって! 俺が五歳児だったら泣いてたからな!!」


 ここでも変わらずうるさい斬撃一閃に、しかし宇佐山うさ子は一つとして反応を返さない。

 バイクの様子を確認して診断し、修理をしていく。


「いいの、乗ってますね」


「だろ? 初日からの相棒だからな」


「素敵ですね」


 完全に元通りになり新車のようになったシッツ・ハクチョウドラッグに、さらばは思わず感嘆の声を漏らす。


「嬉しいですよね、新品みたいになると。そんなに酷い破損してなかったんで、一五〇〇万です」


「サンキュ、助かったわ」


 請求書が送られ、それにさらばがスマホで送金をすると、確認した宇佐山うさ子が「はい、頂戴しました」と頷く。


「私の連絡先これなので、また何かあったら声掛けてください」


「助かる」


 そう告げてシッツ・ハクチョウドラッグへ跨ったさらばへ、宇佐山うさ子が手を振る。


「行ってらっしゃーい!」


 サーバーが始まってから七日目、望が参加してから丁度五日目に、園夢かなうは白市民として働いていたクレープ屋を辞めた。

 辞めた時、クレープ屋の店長であった火雷神はその理由を一つも聞くことは無かった、ただ一言「園夢かなうの絶対叶うクレープはこのまま売るからね」と言ったのだ。

 そんな言葉に、かなうは「もちろん」と返してクレープ屋を出てすぐに夢梨さらばの姿へと変わる。

 ただ、黒市民であることが彼女にとっての真実だと、そう思ったのだ。


 いつも通りRe:VIVALの駐車場にシッツ・ハクチョウドラッグを置いてアジトの中へと入ったさらばを見て、仏はほっとけが「ちょうど良かった」とさらばに声を掛ける。六人の構成員が座っており、また何か大型犯罪かと理解したさらばが空いているソファへと座る。


「知っての通り、この街に俺たちがいられるのもあと一週間だ」


 静かな仏はほっとけの言葉に、誰もが次の言葉を待つ。


「これからの一週間、警察を暇にさせないために小型から大型の犯罪を絶え間無く行って、忘れられない一週間にさせてやろうと思う」


 その宣告に、茅葺茸(かやぶききのこ)が思わず笑う。


「さんせいでーす!」


 ギャングらしいそんな言葉に、さらばも思わず笑う。


「俺も、白市民の姿捨ててきたから。いつでも参加できんな」


 笑ったさらばに「本気だな」とジャバウォックが笑いを含んだ声で言う。

 遠くのほうでパトカーがサイレンを鳴らしながら走る音が聞こえる。どこかのギャングが犯罪を犯したのだろう。


「そういえば、†騎士†じゃNightってどんなギャングか聞いてなかったな、オイルリグにもいなかったし」


「大型犯罪は飛行場強盗しかしない小型犯罪メインの大型ギャングですよ。銀行強盗とコンビニ強盗、高級車窃盗が大好きな」


 フルーツポンチ〇ンポがそう告げると、再び警察車両が通る音がする。

 その時、仏はほっとけのスマホに電話が掛かってくる。


「サイレント†騎士†か」


 聞こえてきた言葉に、さらばが軽く頭を擡げる。彼女が初めて事故にあった時に出会った人間の名だった。


「ああ、今日から毎日犯罪を……そっちもかよ」


 微かな笑い声に、さらばはサイレント†騎士†という人物も犯罪を繰り返すことを知る。


「ご武運を」


 静かな仏はほっとけの言葉と同時に通話が切れると、続けざまに電話が入る。


「今度は鮫鑢かよ」


 笑い声と共に吐き出された言葉に、みっつの大型ギャングが同時に動くことを決めたことがさらばにも分かる。


「ああ、……あー……じゃあ次は飛行場強盗でもするか、†騎士†じゃNightにも連絡するわ。次は三ギャングに警察が入り乱れる大型犯罪だな二日後に。……おー、ご武運を」


 通話を終えた仏はほっとけがスマホを片付けると手をひとつ叩く。


「さて、次の犯罪が決まった。三ギャング合同の飛行場強盗だ」


 その言葉に爆音奏が「燃えてきた!」と声を上げる。


「お前が燃えてないこと無いだろ」


 ララバイアグラの冷静な指摘にジャバウォックが笑う。


「飛行場強盗ならヘリは不要か」


「確かに、それぞれのバイクと車だな。もしくは個人所有のヘリ」


「それまでにちゃんと自分の足修理してカスタムしとけよ!」


 その言葉に「了解」だとか「おつかれ!」だとかの言葉が重なり、それぞれが好きな場所へと向かって行く。

 コンビニ強盗でもしようと背を向けたさらばの耳に、仏はほっとけが電話をする声が聞こえてくる。


「サイレント†騎士†か? 二日後、YOTSUBAと合同で飛行場強盗をするから参加しろよ、今回は三ギャングに警察まで入り乱れた超大型犯罪だ」


 更に二度三度と相槌が続いて、そこでさらばには声が聞こえなくなる。

 シッツ・ハクチョウドラッグへ乗り込もうとしたさらばは、不意に思い至ってバイクをコンパウンドしてから屋上へと向かう。そのヘリポートで自分の“スパロー”を呼び出すと乗り込んでシートベルトを装着する。

 そこでスマホを取り出してウロウロの名を探す。

 呼び出し音がしばらく鳴ってから電話が取られる。


『もしもし』


「ああ、ウロウロ。もう仏はほっとけから聞いたか? ここから一週間、警察が暇にならないように俺たち黒市民は犯罪を繰り返すから、楽しめよ」


『はあ!? おい、さらば! どういう』


 そこでさらばは通話を切りスパローで飛び立つ。

 到着したコンビニの前へスパローを下ろし、監視カメラを破壊し、NPCだった店主を撃ち殺してからレジの中の金を奪いスパローに乗り込み近くのビル屋上へと上がる。

 そこでコンビニ前を眺めると、ただのコンビニ強盗にも関わらず三台のパトカーが到着する。


「ただのコンビニ強盗に三台は、警察暇すぎだろ」


 思わず呟いたさらばがフルーツポンチ〇ンポへと電話をかける。


「もしもし」


『どうしました?』


「警察がめちゃくちゃ暇そうだから、銀行強盗とコンビニ強盗しまくって忙しくしてやろうと思ってんだけど」


『ポッピンポップドッツさん達にも声をかけます』


 フルーツポンチ〇ンポの言葉にさらばが思わず笑い、それから鷹熊とサイレント†騎士†へも同様の電話を掛ける。

 ほんの数分でロスサントスの四方八方からパトカーのサイレンが鳴り響くようになるのだった。

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