第二六話 集合と交戦
ヘリポートにはRe:VIVALのマーベリックとフロガーとYOTSUBAのフロガーが停まっている。空にはRe:VIVALのマーベリックとサベージとYOTSUBAのサベージが一機だけ留まり、警察のポリスマーベリックが三機滞空している。
「警察は一〇人! うち三人が飛行部隊! 署長の俺、副所長ののれんに柳川含む七人が地上部隊だ!」
ウロウロの声が施設内に突入した夢梨さらば達にも届く。
その時だった、仏はほっとけの声が響く。
「銃撃! 開始!!」
その声と同時に、さらばがマークスマンライフルMk2を手にする。目の前には運搬係のフルーツポンチ〇ンポがいる。
彼を守らなければオイルリグは失敗と言っても良い。
これは一種のタワーディフェンスだと、さらばはゆっくりと細く息を吐き出してからゆっくりと壁から廊下の先をクリアリングする。そこに見えた緑のつなぎを着たYOTSUBAの構成員に、その頭へと照準を合わせて撃つ。
通常のFPSと違い僅かに上ブレしたその銃弾と銃声に、YOTSUBAの構成員である“猫キャット”が即座に振り返りさらばのいた場所へと銃弾を撃ち込む。
それに、フルーツポンチ〇ンポが拳銃を取り猫キャットの肩へと銃弾を撃ち込み、その一瞬の隙にさらばのマークスマンライフルから発射された弾が猫キャットの頭を撃ち抜く。
『警察! 突入!!』
無線から聞こえてきた声に、さらばとフルーツポンチ〇ンポが「了解」と返す。
「猫キャットダウン!」
『ナイス!』
互いに無線で言葉を返し、状況を共有しながら施設内を進んでいく。
『ララバイアグラ、ダウン! ポリス、早乙女トトロ!』
『のれんに柳川ダウン取った! YOTSUBA、狸ダウン!』
目まぐるしく変わる状況に警戒を解かず木箱を取るフルーツポンチ〇ンポを警護している中、施設外から爆発音が聞こえるのがさらばにも分かった。
『ポリスマーベリック、一機ダウン!』
それはパンプパンパースからの無線だった。
「ナイス!」
パンプパンパースへと返る言葉に『あとポリスマーベリック二機とYOTSUBAのサベージ一機!』と彼女が返す。
『ポリスマーベリック! プレス! 煙吹いてる!』
続くジャバウォックの言葉を聞きながら木箱を取ったフルーツポンチ〇ンポと警護のさらばがヘリポートへと走り出す。
その目の前に、YOTSUBAの鷹熊が現れる。
「流石にそれ、持ち出されんの困るんで!」
その瞬間、ローリングしたさらばがその勢いのままに鷹熊へ照準を合わせて弾を撃ち込むが、それをローリングで避けられる。さらばが思わず舌打ちをするも、鷹熊は楽しそうに笑い声を零すのだ。
その動きに、さらばの口元へも笑みが浮かび、壁に半身を隠したさらばとその後ろへ隠されたフルーツポンチ〇ンポへと鷹熊が様子を伺いながら近付く。
「守るものがあったら自由に動けなくて大変すよね!」
ローリングで壁の後ろへと隠れたさらばへと近付いた鷹熊の頭へ、近距離から拳銃の弾が三発撃ち込まれ、持ち変えられた軍用マシンガンMk2の弾が鷹熊の体へと降り注ぐ。
『ポリス、十々承知ダウン! 仏はほっとけ!』
「それ、卑怯でしょ!!」
「FPSに卑怯もクソもあるか!」
鷹熊の言葉に返したさらばがフルーツポンチ〇ンポと共に走り出す。
「YOTSUBA鷹熊ダウン!」
『ポッピンポップドッツダウン! YOTSUBA穴熊!』
『爆音奏ダウン! YOTSUBA穴熊!』
『ポリス、ケツに鉄パイプダウン! 仏はほっとけ!』
二度目の爆発音がさらばの耳に届く。
『ポリスマーベリックプレス! YOTSUBAのヘリを狩る!』
フルーツポンチ〇ンポを警護しながらヘリポートへ辿り着いたさらばが、フロガーへ木箱を積み込むシャチの姿を確認する。
誰も警護する人間のいないその頭へ、さらばのマークスマンライフルの弾が吸い込まれ、ダウンを確認する。
「YOTSUBAシャチダウン!」
そこへRe:VIVAL最後の地上部隊である仏はほっとけが木箱を手に戻ってくる。
「ほっとけ、フルーツポンチ〇ンポの警護よろしく! 俺は残党処理してくる!」
走り出したさらばに仏はほっとけが声を上げる。
「残り何人か分からないけど大丈夫か!?」
『サーマルで補助する! パンプパンパース、ごめん、YOTSUBAのヘリとポリスマーベリック頼む!』
ジャバウォックの言葉に、パンプパンパースが『任された!』と声を上げる。
サーマルを起動したジャバウォックの視界に、施設内で動くさらばと仏はほっとけ、フルーツポンチ〇ンポを除く五人の形が明らかになる。
『敵は五人! うち強敵穴熊はまだダウンしてないはず!』
「了解」
極限まで抑えた声がジャバウォック、仏はほっとけ、フルーツポンチ〇ンポの耳へと届く。僅かに掠れた甘い声に、仏はほっとけが思わず喉を鳴らす。
「接敵! YOTSUBA、鮫鑢と穴熊!」
拳銃を構えた穴熊の不意の一発をさらばがローリングで避ける。穴熊の背後には木箱を持つ鮫鑢がいる。
ここでさらばが狩られればRe:VIVALの勝利は無くなる。それを、誰よりもさらばが理解していた。
『YOTSUBA、ヘリダウン! ラストポリスマーベリック!』
全ての音が、さらばの耳には届いていなかった。
ただこの極限の状態だけが、さらばの脳を、心を高鳴らせる。
壁の後ろへと身を隠したさらばがゆっくりと呼吸をする。半身を出してクリアリングすると、穴熊も同じくクリアリングをしているのが見える。
その動きだけで彼女がFPSをメインで遊んでいることが分かる。
彼女の手の中で、拳銃がライフルへ持ち替えられるのがさらばの目に映る。
互いに互いの隙を狙い、その動きの一挙手一投足を見つめる。
互いの唾液を嚥下する音すら聞こえるかのような、静寂と緊張の中、勝負はほんの一瞬、ひとつの瞬きで決まることを互いに理解していた。
さらばの唇が舌でなぞられる。
赤い唇がリップを塗ったかのように唾液に光る。
その唇から、細い吐息が漏れてモニターを見つめる瞳は瞬きすら忘れられたかのように、ただ穴熊の隙を探り続ける。
緊張に重なる緊張。
穴熊の吐息が、微かにさらばの耳へ届く。
彼女も理解しているはずだった。自分がここでダウンすれば、鮫鑢をヘリへ連れて行くためにサポートする人間がいなくなると。
他の構成員が残っていたとして、さらばが鮫鑢をダウンさせるまでのあいだに間に合う保証は無い。
一瞬だった。
続く緊張の中、僅かに緩んだ穴熊の緊張の糸が、一瞬解けて先程よりも大きく壁から体が出る。
その頭へさらばのマークスマンライフルが銃弾を撃ち込んだ。
二度、三度と重なる銃声に穴熊がダウンする。
「穴熊ダウン!」
次いで鮫鑢へと近付くさらばに、彼は両手を挙げて降伏し逃げることをしなかった。その動きでYOTSUBAに残数がいないことを、さらばは理解する。
「鮫鑢ダウン! YOTSUBAクリア!」
そこでようやくさらばの耳に無線音声が聞こえる。
『残敵、二人!』
それに、穴熊がさらばと接敵する前に警察を一人ダウンさせていたことを知る。
『さらばの背後左側、一人!』
届いた無線に「了解」と再び一言を返すと、マークスマンライフルを手に壁へ背中をつけてゆっくりと歩を進める。
決して気取られないように、その足音が聞こえないように進めた先に、僅かに青色が見える。
壁に半身を隠してライフルを構えたさらばの目に、青い制服に制帽を被った警察の姿が入る。
潤滑文和と名の浮かんだその体に、躊躇いを見せること無く、さらばは銃弾を撃ち込んだ。
しかし、それは彼が思わず木箱の後ろへ隠れたことで避けられる。
「うわうわうわうわ! 最悪だ、俺銃撃戦苦手なのに!」
情けない声と共に壁裏へと隠れる潤滑文和のその動きにさらばの眉間に皺が寄せられる。まるで初心者のような言葉とは裏腹に、その動きは明らかにFPSに慣れている人間の動きだった。
さらばが侮って追ってくることを誘っているような、そんな動き。
「ポリス、潤滑文和と接敵」




