第二二話 銃声と並走
「さて、やるか」
望がヘッドセットを着けてOBSを立ち上げてからGTAを開くと、徐々に同接が重なっていく。
以前までは同接五万程度が最大だったにも関わらず、既に六万を数えるほどになっていた。
それにも望は興味を抱く様子が無い。ただ、ファンが騒ぐだけだった。望の一〇〇万人登録者記念の時にはファンが金を出し合って駅に広告が掲げられたのだ。
──望おつ
──今日はGTAか
──オイルリグ明日だろ?今日はFPSで良くね
──そういえばオイルリグあったな
「バーカ、ヘリの運転教えてもらう約束してるだろ。ぶっつけ本番でヘリ墜落させたらどうすんだよ」
望がそう笑ってGTAへとログインする。
──ロスサントス
相変わらずビルだらけの中で地図を開くと四〇八八に自分がいることが分かり、近場の駐車場を探す。
ようやく見つけた駐車場でバイクを取り出してエンジンをふかして一七四三へと走らせる。
到着したRe:VIVALの根城へとバイクで入り駐車場で降りると鍵を取る。
名前を夢梨さらばへと変更して服をスーツへと着替え、頭に覆面を被る。
「ん? 誰?」
頭上に茅葺茸と名前の浮かんだ女性がさらばへ声を掛ける。
「初めまして、昨日からここの構成員になった夢梨さらばです」
「あー! ほっとけが言ってた! ヘリの練習だっけ?」
「そうすねー」
茅葺茸が「こっちこっち」と昨日は入ることが無かったアジト内へとさらばを案内する。赤い絨毯が敷かれた中にはテーブルとソファが置かれており、そこには数人のスーツを着た者たちが座っている。その中には覆面を被っている者も複数人いる。
「全員紹介するのは大変だからさ、後でにするね。ここから上に上がれるから」
茅葺茸が階段を二つ上がると、アジトの屋上へと出る。そこにはヘリポートがあり、黒の無骨なヘリコプターが置かれている。
「うちにあるヘリは全部で四機で、オイルリグとか客船襲撃の時は全部のヘリが使われるよ」
「ヘリ四機ってどれくらいすごい感じ?」
さらばの問いに茅葺茸が「うーん」と暫し考えてから口を開く。
「警察のヘリが全部で二機、YOTSUBAが二機、†騎士†じゃNightが一機持ってるから相当だよ。っていうのも、Re:VIVALは大型犯罪と中型犯罪がメインなんだよね。あんまり小型犯罪をやらないグループなんだ」
「なるほど?」
あまり理解をしていない様子のさらばの様子を見た茅葺茸が少し黙ってから、「えっとね」と考えながら話し始める。
「もしかしてほっとけはあんまり説明してないかな。小型犯罪っていうのがコンビニ強盗とか、フリーカ銀行強盗とか高級車窃盗なんだよね。警察からもまたやったなー! って言われるくらいの犯罪」
そしてパラパラと紙を捲るような音がマイクに入って、また茅葺茸の声が聞こえる。
「中型犯罪になると、パレト銀行強盗とか、ボブキャット強盗、宝石店強盗とかになって、大型犯罪になるとユニオン銀行強盗、飛行場強盗、パシフィック銀行強盗、オイルリグ強盗とかになるんだよね」
「どんどん規模が大きくなるってことか」
「まあ、そんな感じ。大型犯罪になると銃撃戦もあるし、他組織とのいざこざもあるから死人も多くなるんだよね。で、今回は海上にあるからヘリが必須なの」
その説明を聞いたさらばが「なるほどね」と頷く。
「YOTSUBAとか†騎士†じゃNightは大型犯罪をあんましないってことか?」
「あんまりっていうか、他のギャングのことはあんまり分からないんだけど、YOTSUBAは違法薬物がメインで、時々大型って感じかな。大型ギャングなんだけどね。†騎士†じゃNightは基本小型犯罪ばっかりで、大型も飛行場くらいって言ってたんじゃないかな」
「へえ。サンキュ、教えてくれて」
「どういたしまして! それじゃあ、実際にヘリの操作覚えてもらうから、ちょっと待っててね」
アジトの中へ戻って行った茅葺茸がすぐに一人の男性プレイヤーを連れて戻ってくる。
「初めまして、フルーツポンチ〇ンポです」
「夢梨さらばです」
互いに自己紹介を終えると、フルーツポンチ〇ンポが「ヘリの操縦は初めてですか」とさらばへと問いかける。それにさらばが是と答えると、フルーツポンチ〇ンポは僅かに考えてからさらばへ背中を向ける。
「まず飛行スキルを上げましょう! 簡単に上げる方法があるので!」
そう言うと走り出したフルーツポンチ〇ンポにさらばはついて行きながら、茅葺茸へ「教えてくれてサンキュ」と告げる。
そんなさらばに茅葺茸は「はぁい! 頑張ってねー!」と応える。
駐車場へ到着すると、フルーツポンチ〇ンポが自身のチーターの鍵を開ける。
「なんか乗り物あります? 無かったら乗せますけど」
「バイクがあるから大丈夫です」
自身のシッツ・ハクチョウドラッグに鍵を差し込むとフルーツポンチ〇ンポが「うおー! えっ! めちゃくちゃかっこいいじゃないですか!!」と声を上げる。
そんなフルーツポンチ〇ンポに、さらばも「俺の相棒ですね」と得意気に告げる。
「うわー! 乗りてー!! 今度後ろ乗せてくださいよ!」
「帰り乗せても良いけど?」
「マージですか! 最高! さっさと行きましょう!」
弾む声のままチーターのエンジンをふかしたフルーツポンチ〇ンポがさらばを先導して飛行場へと向かい走る。
「あっ! すみません、ガソリン無いんで入れて行って良いですか?」
「俺も無いわ、丁度良かった」
二人揃ってガソリンを入れているところへ男性プレイヤーと女性プレイヤーの二人組がガソリンを入れにやってくる。
「こんばんはー、ガソリンすぐなくなりませんか?」
「こんばんは、もう少しもって欲しいですよね」
“タコス屋蛸無したこ焼き あああああ”と“タコス屋蛸無したこ焼き ボンゴレ味噌汁”がさらばとフルーツポンチ〇ンポへ話しかけてくる。
それにフルーツポンチ〇ンポが応えて、白市民と黒市民の和気あいあいとした会話がガソリンの補充終了に伴って終わる。
「じゃあ」
「はーい! 今度うちのタコスも買いに来てねー!」
ボンゴレ味噌汁の声にフルーツポンチ〇ンポが「また行きまーす」と応えてさらばと共に走り出す。
「ヘリだと飛行スキル上がらないんですよ」
「へえ」
「飛行機じゃないと上がらなくて。でも飛行機でも上がる値って微々たるものなんで、一番簡単に上がる方法教えますね」
暫く走って到着した飛行場でフルーツポンチ〇ンポが自身の小型機を取り出す。
「まずこれに乗って、低空で水平飛行して二秒くらいで降りるを繰り返してください。Wで上昇、Sで下降、テンキーの八で前進、五で後退です。これで爆速で一〇〇まで上がるので」
「分かりました」
小型機に乗り込んださらばにフルーツポンチ〇ンポが「あ! シートベルト絶対締めてください!」と声を上げる。
その声にシートベルトの存在に気がついたさらばがシートベルトを締めてから飛行機を上昇させて少し進み降りることを繰り返す。
ぐんぐん上がっていくスキルに、さらばが「これってバグですか?」と問い掛けるもフルーツポンチ〇ンポは「実はこれ、正規の方法です!」と言ったために、さらばは思わず笑ってしまった。
いつの間にか一〇〇まで上がっていたスキルに、さらばはシートベルトを外して小型機を降りる。
「あ、上がりきりました?」
「はい、無事に」
その言葉に、フルーツポンチ〇ンポは小型機を格納してから駐車場へと向かう。
「じゃあ、帰りましょう。ハクチョウ乗るの初めてなのでもう、練習中からソワソワしちゃって!」
「いくらでも乗せますよ、俺もあれお気に入りなので」
「えっ! じゃあ連絡先交換してくださいよ!」
そこでようやく二人は連絡先を交換し、フルーツポンチ〇ンポは自身のチーターを格納してからハクチョウの後ろへと乗り込む。
「発進します」
「お願いします!」
シッツ・ハクチョウドラッグのエンジン音が響き、一気に加速して走り出す。
「うおおおお! かっっっこよ!」
「ニトロいきます」
「ニトロ積んでるんですか!」
フルーツポンチ〇ンポの問いに答える前に一気にニトロ加速して赤い燐光だけを残して道路を走る。
到着したアジトに、フルーツポンチ〇ンポが「さいっこうでした! 今度ヘリプレゼントします!」と告げる。
「ヘリくれるんですか、後ろ乗せただけで」
思わず笑ったさらばに「それくらいの価値ありましたね」と応えて二人で屋上のヘリポートへと向かう。




