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冴えないおっさんプロゲーマー、TS美少女で成り上がりプロゲーマーに返り咲きます!  作者: 田中


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第一四話 招待と購入

 GTA鯖への招待を受けた此夢望はYouTubeの配信をつけてGrand Theft Autoを開いてキャラクリエイト画面へと移る。


「これってみんな自分に似た感じでキャラクリしてんの?」


──大体そんな感じ


──うおちみたいに人外の顔面してるのは色だけ近いのにしてたりするけど


──テュルちゃんは完全に自分だったな


──杏仁見たらやばかったw全然自分じゃない、アイツww


「やっぱ自分っぽいキャラクリしてんだ」


 そう言いながら此夢望は男性アバターを選び、黒い髪にキリッとした黒目、引き結んだ唇を選択していく。


──聞いた意味www


──男じゃねーか!!!


「良いだろ、かっこよくね?」


──かっこいいけど


 服は白のワイシャツにジーンズを履かせて黒のスニーカーを選択する。


──完全に望じゃなくて草


──自分に似せろよww


──性別から違って草www


──草に草を生やすな


「良いだろ、これも俺なんだから。……名前か」


 ギシ、とゲーミングチェアが軋む音が配信に乗る。名付けに、随分と悩んでいるようだった。

 ゲーミングチェアに片足を乗せて、その白い膝に顎を乗せる。


──見える見える!


──桃源郷が!


──望!足足足!パンツ見える!


 コメントにも頓着せず、此夢望はキーボードへと指を伸ばす。細く、白い指がパチ、パチ、とキーを叩く。普段戦場を踊っている指とは全く違う動きだった。


 画面に映るのは“園夢かなう”の文字。


──此夢望と園夢かなうか


「……良いだろ、この名前」


 そして、もう一度キャラクリ画面へと戻る。

 女性アバターへと変更して白髪をポニーテールにし、赤い猫目を選ぶ。

 先程までの立花勇人を模したキャラクターは、既にそこにいなかった。


──結局自分にすんのかよ!


──望はこうじゃないとな


 リスナーからのコメントに、普段の勝ち気な笑顔では無く、薄い笑みを浮かべてキャラクリを完了させる。スポーンしたのは何も無い街の中だった。

 望はその場で操作方法を確認する。上下左右の動き、しゃがむ、ジャンプ、ほとんどの動作を確認し終えると、どうするかと息を吐く。

 これがFPSなら……と考えて小さく首を振った。これはFPSではなく、新しい世界なのだ。


 不意に、見知った声が聞こえてくる。


『望!』


 バイクで走ってきたのは白髪に赤い目、モノクルをかけた男性アバターだった。頭の上には、“警察官”と“ウロウロ”の文字が浮かんでいる。


「右往左往?」


『このサーバーの中ではウロウロだな。お前は……かなうか! よろしく!』


「ウロウロね」


 かなうはそう話しながら周囲を眺める。


『かなうは初めてだよな。まず、このサーバーには警察・救急隊・個人医・飲食店・ギャング・半グレ・メカニック・タクシードライバーなんかの職業があって、その中から職業を選んだり、定職に就かずに色々齧っても良い』


 ウロウロの説明に「へえ」とかなうは頷く。

 その様子を見たウロウロが『それから』と言葉を重ねていく。


『水分補給とか、食事とかをしなかったら死ぬし、煙草を吸わないとストレス値が溜まったりするから気を付けてな。運転できるのはヘリ・車・バイク辺りだから、触りたくなったら触ってみんのもアリかも』


 説明してないこと無いかなと、ウロウロは配信画面の向こう側で指折り数えていく。

 そして、『そうだ!』と声を上げる。


『来たばっかだとスマホも持ってないよな』


「スマホ? ゲームの中にスマホあんの面白いな」


『そう、あるんだよな。スマホ無いと困るから買いに行こうぜ!』


 ウロウロが乗ってきたバイクの後ろへとかなうが乗り、e-Bayへと向かう。

 そしてウロウロが一旦かなうのスマホ代を立て替え、かなうへと渡す。


『これがスマホで……かなうの電話番号教えてもらって良いか?』


「えー……電話番号? この四七番ってやつ?」


『それは送金の時に使うやつ! プロフィールのところに……』


「あ、これか」


 かなうの読み上げる数字を入力して番号交換を無事に終わらせる。


『友達は多ければ多い方が良いから! あと、かなうは四七番だよな!?』


 ウロウロが、かなうが何かを言う前に三億五〇〇〇万円の入金をする。


「は? なにこれ」


『今度ボイス撮ってちょうだい!前払いな!』


「ボイス?」


 困惑したようなかなうの言葉に、ウロウロが『そう』と肯定する。


『着信音とかに設定できるボイスを撮ることができるんだよな、GTAって。そのボイスファイルを一つ一億で買わせてほしい』


「……返していいか? これ」


『返されたら二倍送るからな』


 ウロウロからの言葉に、かなうが唇をへの字に曲げて、そして数瞬悩んでから「分かった」と頷く。


「ボイスはなんでも良い?」


『良い、良い! かなうのならなんでも!』


「後でリスナーからボイスの撮り方教えてもらうわ。ありがとな、色々教えてくれて」


『あ! 俺は警察でテュールは個人医だから! 多分テュールにお世話になるからな。それから、車両が乗り上げて動かなくなったら警察に通報してコンパウンドしてもらったら大丈夫だから。それからこれ、一応飯と水な、店がここからちょっと遠いから』


 ウロウロから伝えられた言葉に、かなうが「サンキュ、分かった」と返して受け取った食事をそのタイミングで口にし、振り返り街を見るために歩いて行く。


「あ、車両ってどこで買ったら良い?」


 リスナーへ問いかけたかなうに、コメントがワッと湧く。


──メカニックのとこ


──この鯖だと2802のとこ


「二八〇二な。ウロウロから金貰ったしバイク買いに行くか」


──先に飯と水分買いに行け、死ぬから


──望の死亡理由は餓死だと予想


──飯はタコス屋とかクレープ屋とかで買えるから


「クレープ屋とかタコス屋な。いやでも足のほうが大事だろ」


 かなうが地図を確認して自分の位置と二八〇二までの距離を確認する。


「近いじゃん」


 かなうが走り出す。

 比較的すぐに到着したオートショップに入ると、そこには“メカニック豆腐抜き湯豆腐”という人間が立っている。


『お、いらっしゃーい』


「どうも。今日からこの街に越してきた園夢かなうですー。バイク欲しいんだけど、いくら?」


 かなうの言葉に、豆腐抜き湯豆腐が『えっ!?』と声をあげる。


『今日来たばっかで? 金ないでしょ』


「親切なおまわりさんに貰ったんだよね、三億」


『三億!?』


「ついでに五〇〇〇万」


『ついでに五〇〇〇万!?』


 金額に、素っ頓狂な声を出した豆腐抜き湯豆腐に、かなうが頷く。


『えー、それだけあったらニトロ加速ある結構良いの買えるけど』


「じゃあそれ」


『じゃあそれ!? まあ、試乗できるし、乗ってみる?』


 豆腐抜き湯豆腐の言葉に「試乗できるなら乗るか」と告げたかなうに、豆腐抜き湯豆腐がニトロ加速ができる三億以内で購入できるバイクをいくつか出す。

 その中で、シッツ・ハクチョウドラッグにニトロ加工を施したものをかなうが「これが欲しいんだけど」と告げる。


『良い選び方するな! これ、この街でも速いバイクだからマジでオススメ。塗装どうする? 三億あるなら全然塗装してもお釣り来るけど』


「じゃあ、赤と黒で塗装してくれるか?」


『はいよー、すぐ終わるから』


 流線形の黒いスポーツバイクに赤い塗装が施されていく。

 完成したバイクに、かなうが「うおおおお!!!」と声を上げる。


『そんな喜んでもらえてメカニック冥利に尽きんね』


「また故障したら直しに来るからよろしく! 最高のバイクだわ!」


『はーい、またね』


 かなうの言葉に手を振った豆腐抜き湯豆腐が声を上げる。

 オートショップを出たかなうが、リスナーたちへ声をかける。


「いい買い物できたわ」


──良かったな、望


──望が嬉しそうで何よりです


──これからどうやって金稼ぐん?いつまでも右往左往にたかるわけにはいかんだろ


「あー、何が儲かるか次に会うヤツに聞いてみるか」


 カスタムされたバイクに乗って道路を走っていくかなうがリスナーと話しながら街を見て回る。


──犯罪が一番儲かる


──銀行強盗とか


「へー、なんか特別な技能いんの? やってみるか、犯罪」


 楽しそうな声で告げたかなうの排気音が空気に溶けていく。

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