第九話 水が澄む日
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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一週間後、カーセン村を再び訪れた。
秋の朝は冷たかった。草の上に露が残っていて、ミリアが「今日は寒いですね」と言いながら両手をこすり合わせていた。
村に入ると、子供たちが元気に走り回っていた。それだけで、大体の答えが分かった。
エルンストがいつもの場所で待っていた。俺たちを見て、少し間を置いてから言った。
「腹を壊す人が、半分以下になった」
「孫御さんは」
「熱も出ていない。今週は普通に飯を食っている」
村長の声に、安堵が滲んでいた。
「上流の死骸を埋めた。水源も清掃した。水は毎日沸かしている。あんたたちの言う通りにやった」
「ありがとうございます」
「礼を言うのはこっちだ」とエルンストが短く言った。頑固な老人が、それ以上のことは言わなかった。
俺は水源を再診断した。褐色の靄が、先週より随分薄くなっていた。完全ではないが、大きく改善している。
「まだ完全ではありませんが、この調子で続ければ十分です。ミリアさんの薬草浄化剤はまだ使えますか」
「使っています。水の臭いが変わった気がする、と皆が言っています」とエルンストが答えた。
ミリアが「まだ少し残してありますが、次の分を置いていきます」と袋を取り出した。
帰り道、二人で並んで歩いた。
「やった」とミリアが言った。声が弾んでいた。
「そうですね」
「初めてです、こういう結果が出るのが。薬草を置いてきても、よくなったかどうか確認できることが少なくて」
「追跡調査は大事です。結果を見て、次の手を考える。それが繰り返しです」
ミリアが少し黙った。それから静かに言った。
「お母さんにも、こういうことができていたら」
俺は何も言わなかった。
言える言葉がなかった。というより、何も言わないことが、この場では正しいと思った。ミリアはその言葉に対して答えを求めていなかった。ただ、声に出したかっただけだろう。
しばらく二人で黙って歩いた。
「次の村も診ましょう」とミリアが言い出したのは、村を離れてから少し経ってからだった。
「北のフォード村は別の問題があると聞いています。農地の収穫量が落ちているらしくて」
「土壌の問題かもしれません。見てみましょう」
「ありがとうございます。一人で動くより、一緒の方がずっと心強い」
俺は頷いた。
こちらこそ、と思った。薬草のことは俺には分からない。ミリアの「植物鑑定」と「薬草学の知識」は、俺の診断を現実の治療に落とし込むために不可欠だ。一人では半分しかできない。
館に戻ると、ヨハンが「父上と長兄様がお待ちです」と告げた。
「二人が揃って?」
「はい。書斎で」
ミリアが「私はここで。また明日」と言って帰っていった。
書斎に入ると、父と長兄ヴィルが並んで座っていた。二人の顔が、いつもと違う色をしていた。
「帰ったか、レオン」と父が言った。「少し、話がある」
「何かありましたか」
「お前のことだ」とヴィルが言った。
二人の視線が重なった。




