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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第六十八話 医学院を作る

布告の翌日、会議が開かれた。


王太子と側近、ヴェルディア家、王立学術院の代表者が集まった。「王立医学院設立」という議題だった。


「初代院長は誰が引き受けるか」という問いが出た。


俺は「私が引き受けます」と言った。「ただし条件があります」


「条件とは」と王太子が聞いた。


「仕組みを作り次第、委譲します。私一人が院長を続けることは目的ではありません。私がいなくても医学が続く仕組みを作ること、それが初代院長の仕事です」


「委譲か」と王太子が言った。


「一人の人間に依存するシステムは脆弱です。医師が倒れれば医療が止まる。それでは制度の意味がありません。仕組みとして残す必要があります」


学術院の代表者が「……的を射た指摘です」と言った。「医術を制度化するということは、個人に依存しないということですね」


「そうです」


「承知しました。その条件で」と王太子が言った。


ミリアが「私は薬学主任を引き受けます」と言った。


「薬学主任」と俺は言った。


「薬草療法の標準化と教育を担います。イザベルさんの治療で使った三種の組み合わせを、記録として整理します。再現性のある処方として残します。それが私にできることです」


「それは重要な役割です」と俺は言った。「ありがとうございます」


ミリアが少し頬を染めた。


ガブリエルが「私は歴史資料の整理を担当します」と言った。「古代医師団の知識を掘り起こし、医学の歴史的基盤を作ります。禁書庫で筆写してきた資料がそのまま使えます。今後も調査を続けます」


「古代医師団の記録が残れば、医学の正当性の根拠になります」と俺は言った。「頼みます」


「任せてください」とガブリエルが言った。「これが私の使命です」


会議室に何かが満ちた。


(三人がそれぞれの「直す」役割を持った。これが仕組みになる)


「仕組みとして残す」という言葉に、王太子が「これが国家に残るものだ」という顔をした。


「細かい設立の手続きは学術院と王太子の側近が進めてください」と俺は言った。「私は診断と教育の内容を準備します。医師を育てるカリキュラムが必要です」


「カリキュラム?」と側近が聞いた。


「学ぶべき内容の順序と基準です。見てきたものを教えるには、体系が必要です。それを作るのが初代院長の最初の仕事です」


「時間がかかりますね」と王太子が言った。


「一年もあれば形になります。その後、最初の学生を取れれば」


「学生か」とエドワードが言った。「面白い言い方だ」


「育てる必要があります。私が教えられるのは限られた期間です。でも教えた人間が次の人間に教えれば、続きます。それが仕組みです」


会議が終わった。


廊下でガブリエルが「兄上」と言った。


「なんですか」


「禁書庫に入った時は、まさかこういう結末になるとは思っていませんでした」


「そうですか」


「兄上は最初から、こうなると思っていたんですか」


俺は少し考えた。「最初は、直したいものがあるからというだけでした。結末は考えていなかった」


「それでここまで来たんですね」とガブリエルが言った。「直し続けたら、制度が変わった」


「直し続けたら、直すための仕組みを作ることになった」と俺は言った。「どちらが先かは、分かりません」


「……それが術野の目ということですか」


「分かりません。でも、今日は良い仕事をしました」

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