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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五十九話 条件の合意

交渉の場は王立学術院の会議室だった。


大神殿の交渉代表として上位神官が二名、王太子側の代表者が側近一名、そして俺。それぞれが机を挟んで向かい合った。


「まず我々の条件を申し上げます」と神官が言った。「教会の最高位治癒師、コンラート神癒長が同じ患者を先に診療します。次にヴェルディア家の三男が診療する。比較で判断していただきます」


(先に治癒師が診る。それは問題ない。自信がある)


「承知しました。それは受け入れます」と俺は言った。「次は私の条件を申し上げます」


神官が頷いた。


「三つあります。一つ目、患者の自発的な同意。強制または利益誘導による被験者は認めません。二つ目、王立学術院の研究者三名による公正な観察と記録。三つ目、治療の成否の評価基準を事前に合意すること」


神官が「三点目について」と言った。「評価基準の事前合意というのは……」


「何を基準に成功・失敗を判断するか、を最初に決めるということです。評価基準が曖昧であれば、結果をどう解釈するかで後から争いになります」


「しかし、医術の評価は複雑で……」と神官が言いかけた。


「シンプルな基準で十分です」と俺は言った。「患者が自分で『回復した』と言えることが最も分かりやすい基準です。患者本人の言葉より確かな評価はない。それ以外の複雑な指標は必要ありません」


神官が隣と小声で話した。


(患者が自分で言う、という基準であれば、患者が嘘をついたという逃げ道が一応ある、と思っているかもしれない。でもそれは構わない。患者が「回復した」と言えれば、それが事実だ)


「……それは認めます」と神官が言った。


「ありがとうございます」


三つの条件が合意した。


「患者はどなたを選びますか」と俺は聞いた。


「肺疾患を長年患っている方で、自発的に同意いただける民間の方がいれば」と俺は言った。「教会の関係者でも、貴族でもなく。一般の市民の方が、最も公正な実証になります」


神官が「……探します」と言った。


会議室を出た後、王太子の側近が「うまくやりましたね」と言った。「評価基準で攻めてきましたが、あのシンプルな言い方は想定外だったようです」


「患者本人の言葉が一番正直です。それだけです」


宿に戻ってミリアへの手紙を追記した。「公開実証の患者が決まりそうです。薬草の準備をお願いします。具体的には到着後に話しましょう。早めに来てください」


翌々日、大神殿側から「患者が見つかりました。イザベル、三十七歳、女性、民間人。肺疾患を七ヶ月間患っています。本人が同意しています」という連絡が来た。


「会いましょう」と俺は言った。「まず患者と話します」


(まずは診断だ。何が原因で、何をすべきか。それを先に確認する)


医師として最初にすべきことを、ここでもする。それだけだった。

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