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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五十六話 300年の嘘

「ガーランド司祭はこのことを知っています」とガブリエルが言った。「彼の蔵書の中にも、似た記述がありました」


俺は手帳を開いた。「どの程度まで知っていると思いますか」


「少なくとも、術野の目の歴史的な位置付けは知っているはずです。古代医師団についても」


「……会いに行きましょう」


翌日、ガーランド司祭に面会を申し入れた。


司祭は王都に滞在していた。調査団の一員として来て、そのまま残っているらしかった。面会の申し入れに「なぜ」という問いも「断る」という言葉もなく、「では来てください」とだけ返事が来た。


司祭の宿の部屋は小さかった。窓から外は見えなかった。


俺が入るとガーランド司祭が立ち上がった。しかしすぐに座った。目が疲れていた。


「なぜ私に来るのか」と司祭が言った。


「司祭は最初から知っていたのですね」と俺は言った。「術野の目の意味を。教会が300年前に何をしたかを」


司祭が黙った。


「調査団の村調査で、司祭は追加質問をしませんでした。それは証言を集める気がなかったからだと思います。最初から、私に問題がないと分かっていたからではないですか」


司祭がしばらく動かなかった。


「……知っていた」と言った。「三十年前から。禁書庫の記述を見た時、私の信仰が揺らいだ」


俺は聞いた。


「信仰が揺らいだ、とは」


「教会が積み上げてきた三百年間が……正当な歴史ではないかもしれないと気づいた。権力のために、医師団が消された。神の奇跡という名目で、人の知識が封じられた。それを知りながら、私は組織に留まり続けた」


「なぜですか」


司祭が「どう動けば良かったか、分からなかった。あなたが来るまで」と言った。


(三十年間、この人は引き裂かれていた)


外科医として、長年苦しんでいる患者を診てきた。原因の分からない痛みを抱えて、誰にも言えずに生きてきた人たちを。


ガーランド司祭は、そういう状態にいた。


「司祭が最初に私に警告に来たのも」


「……あなたに止まってほしかったのか、続けてほしかったのか、私自身にも分かりませんでした」と司祭が言った。「ただ、あなたが来てから、領地が変わっていくのを見た。水が戻った。農地が変わった。橋が直った。あれが全部、人の知識でできたことだった」


「司祭は組織への忠誠と、個人の良心の間で三十年間引き裂かれていた」と俺は言った。「それは私には責める言葉がありません」


司祭が俺を見た。


「一つだけお願いがあります」


「何ですか」


「公開実証の日、私の側に立ってくれとは言いません。ただ、見ていてください」


司祭が長い沈黙の後「……見ます」と言った。


宿に戻ると、ガブリエルが待っていた。対話の内容を話した。


ガブリエルが「司祭もこんなに苦しんでいたのですか」と言った。


「組織に縛られながら、良心が揺れ続ける。それは長い病気です」と俺は言った。「ただ、今日で少しだけ変わったかもしれません」


「変わりますか」


「分かりません。でも見ていると言ってくれた。それで十分です」

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