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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五十五話 術野の目の真名

夜の宿に、ノックがあった。


クルトが確認に行って戻ってきた。「若様、ガブリエル様です」


俺は立ち上がった。


入ってきたのは、薄汚れた服を着た少年だった。十七歳の弟。三ヶ月前に見た時より少し顔が痩せていた。でも目は生きていた。


「兄上、ようやく会えた」


父が部屋の奥から来た。一瞬止まって、それから息子を抱きしめた。何も言わなかった。


ガブリエルが「すみませんでした、父上」と言った。


「よく戻った」と父が言った。


俺は「怪我はないか」とガブリエルの腕と顔を確認した。


「ありません。急いで逃げましたが、手荒なことはされていません」


「何日かかった」


「四日です。食事はほとんど取れていません」


「まず食べろ。話はその後だ」


クルトに食事の手配を頼んだ。ガブリエルが椅子に座った。ヴィルが「本当に生きていたか」と言った。


食事が終わった後、ガブリエルが荷物の中から紙の束を出した。


「これを持ってきました。禁書庫から筆写した資料です。全部で二十ページほどあります」


俺は受け取った。


一枚目を開いた。


「術野の目の起源について」という見出しがあった。


「王国建国以前、古代医師団という組織が存在した。その最高位スキルが術野の目と呼称される。初代王が壮年期に患った不明の疾患を、古代医師団の長が術野の目で診断・処方し、完治させた記録がある」


俺は次のページを読んだ。


「術野の目の診断範囲:人体の病変。建造物の構造的欠陥。組織の機能不全。および国家・社会全体の病理的状態。いずれも同一の原理で診断し、最適な処方を示すことが可能」


次のページ。


「古代医師団の解散と処刑:初代王の死後、後継者たちが医師団の影響力を脅威とみなした。治癒魔法を神の奇跡と再定義し、人の知識による医療を異端とした。この宗教的再解釈により、古代医師団の術野の目は異端スキルとして断罪され、術野の目の保持者は300年にわたって処刑または追放を受けた」


俺は紙を持つ手が止まった。


(点と点が全部繋がった)


検分士というハズレ判定の意味。ガブリエルの「古代の異端スキル」という手紙。鑑定士が「これは古代の……」と言いかけて止めた言葉。300年前の処刑。全部ここに繋がっている。


「兄上」とガブリエルが言った。「これは何を意味するのでしょう」


俺はしばらく黙っていた。


(三上哲也が48年かけた医療の仕事と、このスキルが求める使命が、同じだ)


「術野の目は、医師団の最高位診断スキルだ。王国が生まれる前から存在した。そして権力によって300年間、封じられてきた」


「あなたがそれを持って転生したということは」


「分からない。でも、前世でやってきたことと、今やっていることが同じだとすれば……」俺は少し間を置いた。「使命が同じだから、かもしれない」


父が「……そういうことか」と言った。


「分かりません。ただ、これで何をすべきかは、より明確になりました」


「続けるということか」


「続けます。より大きな場で」


ガブリエルが「兄上」と言った。「資料の最後を読んでください」


最後のページを開いた。一行だった。


「術野の目の使用者は、その時代の王国の最大の病を診断するために生まれる」

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