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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五十四話 証明できるか

王太子は昨日と同じ部屋で待っていた。


「昨日のことを聞いた」とエドワードが言った。「貧民街の建物崩壊で、お前が指示を出したと」


「たまたまその場にいました」


「たまたまではないだろう。なぜあの建物が危険だと知っていたのか」


「以前に視察した時に記録していました。崩落リスク高、と手帳に書いていました」


王太子が少し止まった。「視察した時? いつ」


「前回の王都訪問の時です。通りがかりに見えたので」


「……見えたから、記録した。それだけで」


「それだけです」


王太子が少し笑った。「お前らしい」と言った。「三人が助かった。救助隊長が感謝していたと聞いた」


「救助隊が動いたからです。俺は指示を出しただけです」


「お前の指示があったから動けた」とエドワードが言った。「話を変える。お前の診断能力は本物だ。それは分かった。では、正式な場で証明できるか」


「どういう意味ですか」


「医学として、だ。教会の治癒魔法と同じ患者を診断・治療できると証明できるか。公開の場で」


俺は一拍考えた。


(これは来た。答えを出す場面だ)


「できます」と言った。「患者が一人いれば十分です」


エドワードが目を細めた。「本当に言い切るんだな」


「嘘ではありません。四十二年間……」と言いかけて止まった。「長年、診断してきました。診れば分かる。分かれば何をすべきかが見える。それだけです」


「具体的な計画を聞かせてくれ。私に動ける余地があるかもしれない」


「公開実証の場が必要です」と俺は言った。「患者の自発的な同意と、公正な観察者の立会いがあれば。王立学術院が立会人になれれば、結果の信頼性が生まれます」


「学術院か。院長とは面識がある」


「もう一つ、お願いがあります」


「言え」


「弟のことです」


俺はガブリエルの件を話した。禁書庫への不正アクセスとして内部調査が始まっていること。拘束の可能性があること。


エドワードが「大神殿がか」と言った。


「はい。王太子殿下から大神殿に問いかけを出していただければ、大神殿は答えを用意しなければならない。少なくとも、拙速な動きを抑制できます」


「大神殿への問いかけ……」とエドワードが少し考えた。「名目が必要だ。内部調査の透明性を求めるという形なら動けるかもしれない」


「それで十分です」


「分かった。両方を同時に進める。公開実証と、大神殿への問いかけ。お前は準備を整えてくれ」


「はい」


退出した。


クルトが廊下で「若様、本当に『できます』と言い切ったんですか」と聞いた。


「嘘ではない」と俺は言った。


「患者が一人いれば十分、という言葉も」


「その通りです。一人の命が動けば、世界が変わる。それは前世でも、今でも変わらない」


クルトが「……若様がそう言うなら、そうなんでしょうね」と言った。


宿に戻ると、エステルが待っていた。「ガブリエル様の情報が入りました」と言った。「神学院の外に移動したことが確認されました。行き先は不明ですが、自発的に動いているようです」


「逃げた?」


「おそらく。完全な拘束前に動いたと思われます」


俺は地図を広げた。「この方向に向かっているとすれば、どこへ行けるか」

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