第五十一話 再び王都へ
「行方不明」という言葉を三回読んだ。
「ガブリエル・ヴェルディア様が、当神学院内での所在確認ができなくなりました。心当たりのある方は……」
俺は手紙を父のもとへ持って行った。
父の顔が変わった。
「乗り込む」と父が言った。
「父上」とヴィルが止めた。「大神殿に乗り込むのは」
「次男が消えたんだぞ」
「分かっています。でも今すぐ動けば、向こうに名分を与えます」
俺が「急ぎすぎると傷つきます」と言った。
父がこちらを見た。
「ガブリエルが無事でいる間に、外から圧力をかける方法を考えます。直接動いて拗れると、ガブリエルが立場を失う可能性があります」
父が「……分かった。お前に任せる」と言った。
翌日、全員で王都に向かった。父もヴィルも、今回は同行した。「領地が手薄になる」という懸念はあったが、次男が行方不明という状況で家族全員が動いた。
王都に着くと、すぐにエステルに接触した。
「大神殿内部の情報が欲しい。ガブリエルがどこにいるか」
エステルが眉を上げた。「大神殿内部は難しい。ただ外縁なら」と言った。「危険な依頼だが、やってみましょう。ただし時間がかかります」
「構いません。急いで不正確な情報より、確かな情報を」
エステルが「分かりました」と言って出た。
待機している間、宿の窓から貴族街を見た。
ドレイク家の旗を付けた馬車が通った。
(ドレイク家が王都にいる。しかも動きが活発だ)
前回の訪問から時間が経っていない。使者が来たばかりの家が、馬車を出しているのは何かを動かしている証拠だ。
父が「待つだけか」と言った。
「今は情報収集が先です。何があったかが分からないまま動いても、見えないものを手術するのと同じです」
「医師らしい言い方だな」と父が言った。
「そういう性質なので」
ヴィルが「父上、レオンに任せましょう。前回の王都でも上手くやっています」と言った。
「分かっている」と父が言った。「ただ、急いでくれ」
「できる限り」
エステルからの連絡を待った。父が宿の中を歩き回っていた。ヴィルが書類を読んでいるふりをしながら父を見守っていた。
(ガブリエルが無事でいる間に動かなければ)
翌朝、エステルが来た。「調べてきました」と言った。
「話してください」
「大神殿が禁書庫への侵入者として内部調査を始めています。ガブリエル様が対象です。現在の所在は不明ですが、神学院内のどこかに拘束されている可能性があります」
そして一拍置いた。「もう一つ。ドレイク家が大神殿の内部の一派に近い立場を取り始めています。ヴェルディア家への政治的圧力に、ドレイク家が関わっている可能性があります」
父の顔が険しくなった。
「王太子に相談できるか」という考えが頭に浮かんだ。
前回の王都で、エドワード王太子とは話した。「また相談したい時は」という関係ができていた。
(これは使うべき時かもしれない)
「エステル」と俺は言った。「王太子殿下のご側近に、非公式なルートで連絡を取れますか」
エステルが「一人、知り合いがいます」と言った。「やってみます」




