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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五十話 古代の一節

手紙を読んだ。三度読んだ。


「禁書庫の古代医学書の一節を筆写しました。これが最後にします。危険を感じています。内容を書き写します」


そして一節が続いていた。


「術野の目:古代医師団の最高位診断スキル。人体・構造物・組織・国家の病を見抜き、最適な処方を示す能力。このスキルの使用者は古代より医師団の長とされてきた」


俺は「国家の病」という言葉で止まった。


(国家の病を診断する)


人体と建物と組織を診てきた。次は国家か。スケールが大きすぎる。しかしガブリエルが言う「古代医師団の最高位スキル」という位置付けは、それを示している。


手紙の最後に「兄上、これは何を意味するのでしょう」と書いてあった。


ガブリエルへ急いで返信を書いた。「安全な場所に移れ。禁書庫への侵入が知られていれば、危険だ。すぐに返信をくれ」


クルトに「今すぐ送ってください」と頼んだ。


翌日、帰郷の準備を始めた。


王都での用件は終わった。鑑定院の判定保留という結果が出た。王太子と話した。侍医を診た。ドレイク家の工作を退けた。


馬車が領地に向かって走り始めた。


クルトが「大変な旅でしたね、若様」と言った。


「そうですか」


「そうですよ。鑑定院に行って、王太子様に会って、ドレイク家も来て」


「慣れました」


「慣れるものじゃないですよ、普通は」とクルトが言った。「……若様はいつも大変なことを慣れたで片付けますね」


「ほかに言い方がないので」


城壁が後ろに遠ざかった。三日後、見慣れた山並みが見えてきた。


(ここに戻ってきた)


胸の中が落ち着いた。王都は大きくて、問題が多くて、疲れた。領地は小さいが、見えている問題と直すべきものが分かっている。


館の前でミリアが待っていた。


「お帰りなさい」


「ただいまです」


ミリアが「見せたいものがあります」と言った。目が明るかった。


「なんですか」


「薬草の新しい調合法を試していました。留守の間に三種類、成功しました」


書斎に入ると、薬草の記録が並んでいた。俺が出かけている間に、ミリアが独自に研究を進めていた。


「これはどういう効果ですか」と俺は一つを指した。


「熱を下げる成分の抽出速度を上げました。通常の半分の時間で同じ効果が出ます」


「それは実用的です」


「あなたがいない間に色々試せました」とミリアが言った。「一人でやると、失敗もしましたが、成功もしました」


「失敗の記録も見せてください。失敗の方が大事なことが書いてあります」


ミリアが「そういうと思いました」と言って別の記録を出した。


二人で記録を見た。一人ではなかった。王都に行っている間も、ここで続いていた。


「ガブリエルから手紙が来ました」と俺は言った。


「どんな内容でしたか」


「古代の文献を筆写してくれました。術野の目が何なのか、少し分かりました」と俺は言った。「それと……危険を感じている、と書いていました」


ミリアが俺を見た。「ガブリエル様は大丈夫ですか」


「返信を送りました。でもまだ返事が来ていません」


数日後、王都の神学院から手紙が来た。「ガブリエル様が行方不明です」と書いてあった。

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