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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第五話 橋が直る日

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

ここまで読んで「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

「橋を閉める? 何故だ」


カーセン村の農夫が、太い眉をひそめた。他にも数人が集まっていた。どの顔も「子供が来て何を言う」という色をしていた。


「支柱が腐食しています。このまま使い続けると崩落の危険があります」


「崩れるわけがない。何年も使ってきた橋だ」


「内部が腐っています。石工の棟梁ボロスさんも確認されました」


ボロスが隣に立っていた。無言だったが、農夫たちはボロスの顔を見た。棟梁が黙って頷いた。それだけで、空気が変わった。


「……棟梁がそう言うなら」


「工事は何日かかる」


「三日ほどいただければ、補強は完了します」


反発が半分、「万が一のためなら」という理解が半分。そういう割合だった。それでも、橋は閉まった。


工事が始まった翌朝から、俺は現場に通った。


三日目の午後、補強材の選定でボロスと意見を交わした。


「北の杉を持ってきた。あんたの言う通りだ、水に強い」とボロスが言った。


「腐食した支柱の全部を交換するべきでしょうか、それとも部分補強が先ですか」


「今回は全交換が確実だ。俺はそう判断する」


「ならそれで。腐食の速度を見ると、部分補強では二年持たないと思います」


「……どうして腐食の速度が分かる」


「見えます、スキルで」


ボロスが短く「ふん」と言った。もう疑う顔ではなかった。


補修が完了した夕方、ボロスが荷重試験をした。重い石を積んだ荷車を橋に乗せる。二十分待って、問題なし。


「完成だ」とボロスが言った。その声に、職人としての満足が滲んでいた。


翌朝、村人が橋を渡り始めた。


最初に渡ったのは、七十歳近い老婆だった。杖をついて、ゆっくりと橋を渡りきった。それから振り返って、俺を見た。


「ありがとうございます」


たったそれだけの言葉だった。


俺はそれ以上のものを求めていなかったし、必要もなかった。「直った」という事実だけで十分だ。でも、老婆の顔を見た時、胸の奥に何かが温まった。四十二年間感じ続けてきた感覚と、同じものだった。


ボロスが俺の隣に立った。


「あんたは変わった子供だ。俺の弟子じゃないが、何かあれば呼べ」


それだけ言って、道具を担いで歩いていった。


その日の夕食の席で、次兄ガブリエルからの手紙が届いた。


王都の神学校からだった。「元気でやっている」という報告と、近況がいくつか。そして最後の一文に、「レオンが何かやっているという噂が届いた。詳しく聞かせてくれ」と書いてあった。


辺境の出来事が、すでに王都に届いているのか。


俺は苦笑しながら手紙を畳んだ。


「ガブリエルから何か?」と母が聞いた。


「元気だそうです。またいつか帰ってくると書いてました」


「そう」と母がほっとした顔をした。


次兄は聡い男だ。手紙の文章の端々に、それが滲み出ていた。教会の中にいながら、外で何が起きているかを見る目を持っている。


「橋の件は終わりました」と俺は言った。「次は、別の村の水源を見てみようと思います」


父が頷いた。長兄が「また何かを診つけたのか」と言った。


「まだ診ていない場所の方が多いので」


そこに、玄関から薬草師の見習いが来ている、という知らせが入った。


「薬草師の娘?」と俺は首を傾げた。


「はい。カーセン村の薬草師の娘さんだそうです。若様に会いたいと」


翌日、その娘が来ることになった。

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