表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/63

第四十七話 王太子の侍医

翌朝、侍医が来た。


カールと名乗った。五十五歳の男だった。白い法衣ではなく、医師の黒い上着を着ていた。入ってきた時の目が「辺境の子供に何が分かる」という顔だった。


(この顔は知っている。前世でも若い頃によく見た)


「お越しいただきありがとうございます。どのような症状か、お聞かせいただけますか」


「十年前から、疲れやすい。食欲に波がある。特に夕方が辛い。治癒師に何度も診てもらったが、いずれも『問題ない』と言われた」


「飲酒はどの程度ですか」


カールが少し止まった。「……毎晩、ワインを三杯ほど」


「脂の多い食事は」


「宮廷ですので、肉料理が多い」


「休息はどの程度取られていますか」


「仕事が忙しいので、睡眠は短い方です」


俺は「術野の目」を向けた。


(見える)


肝臓への負荷が慢性的に高い状態が続いている。組織の疲弊が積み重なっている。急性の損傷ではなく、長年の習慣が蓄積したものだ。


「分かりました」と俺は言った。


カールが「何が分かったのですか」と聞いた。声に「本当に分かるのか」という疑いがあった。


「慢性的な肝臓への過負荷です。飲酒習慣と脂の多い食事、睡眠不足が合わさって、十年かけて蓄積された状態です。治癒魔法では対処しにくい種類の問題です」


カールが一瞬固まった。


「治癒師には……問題ないと言われた」


「治癒魔法は急性の病には強いですが、慢性的な生活習慣による蓄積は見つけにくいのです。傷や炎症は直せますが、十年分の蓄積は別の種類の問題です」


「では……どうすれば」


「お酒を今の半分に減らす。脂の多い食事を控える。毎日、最低三十分は横になって休む。これだけで三ヶ月以内に大幅に改善するはずです」


カールが黙った。


「……それだけで、ですか」


「それだけです。薬も必要ない。生活習慣の問題なので、習慣を変えれば体が自分で戻ります」


「なぜ今まで誰も言わなかったのか」


「見る目の違いです」と俺は言った。


カールが俺を見た。「辺境の三男が……」と言いかけて止まった。今度は「辺境の子供に何が分かる」という目ではなかった。


「……試してみます」とカールが言った。「もし改善しなければ」


「三ヶ月後に改善していなければ、私の診断が間違っていたということです」


カールが立ち上がった。出際に振り返った。「若様は、治癒師ではないのに、なぜ人の体が見えるのですか」


「スキルの性質です。治す機能はない。見える機能しかない。でも見えれば、どう直せばいいかが分かります」


「……見えれば、十分ですね」とカールが言った。


侍医が出て行った。


クルトが「上手くいきましたか」と聞いた。


「処方は渡しました。後はカール殿が実行するかどうかです」


「できますかね」


「十年分の悩みが一言で説明されたら、動きたくなるはずです。人間はそういうものです」


翌日の昼、鑑定院から連絡が来た。


「院長が直接面会したい」という内容だった。


クルトが「院長が出てきた。これは大きな動きですよ」と言った。


「そうですね」と俺は言った。


(院長が直接出てくる。何を言う気だ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ