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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第四十六話 王太子の好奇心

使者が帰った後、クルトが「王太子様のご使者が来ています」と言った時、俺は一拍かかった。


「王太子? エドワード殿下が?」


「はい。非公式に若様とお話したいとのことです。護衛は二名のみで来られています」


「通してください」


エドワード王太子は二十一歳だった。


実際に見ると、想像より若かった。体格が良く、目が鋭い。でも入ってきた瞬間の表情が「訪問者」ではなく「好奇心を持って来た人」の表情だった。


「ヴェルディア家の三男か。鑑定院が前例のない結論を出す羽目になったと聞いた。興味があって来た」


率直だった。


俺は「術野の目」を向けた。人体ではなく行動の構造を診る。


(真剣に面白いと思っている。政治的な計算ではなく、純粋な好奇心だ)


「はい。先日、詳細調査を受けました」


「そのスキルで、何でも見えるのか?」と王太子が聞いた。


「壊れているものの構造が見えます。人体なら病気の原因、建物なら崩れる理由、組織なら機能しない理由」


王太子が興味深そうに頷いた。「組織まで?」


「情報が揃えば、です」


「では聞こう」と王太子が言った。「その目で見て、王都で最も壊れているものは何だ?」


俺は少し考えた。


(正直に答えるべきか。王族への忖度より事実を言うべきか)


「貧民街の東3区の建物が数棟、崩落危険水準です。次の大雨で崩れる可能性があります」


「それと」


一拍置いた。


「教会の医療独占が、医療へのアクセスを壊しています。治癒魔法を持たない人々が、治療を受けられない構造になっています」


王太子の目が変わった。


「……言い切るな」と王太子が言った。それは批判ではなかった。驚きの言葉だった。


「事実を申し上げました」


「教会には聞かれていたら面倒だぞ」


「存じています。しかし、見えているものを黙っているのも難しい性質なので」


王太子が少し笑った。「面白い」と言った。


二人で一時間ほど話した。王太子は質問が的確だった。術野の目の具体的な使い方、領地でどう活用してきたか、調査団の件でどう対処したか。答えながら「この人は理解が速い」と思った。


(久しぶりに、対等に話せる人間と話している気がする)


帰り際、王太子が「ところで」と言った。


「私の侍医が長年の持病を抱えている。その目で診てもらえるか。非公式で構わない」


「スキルで診断することは問題ありません。詳しい症状を教えていただければ」


「明日、侍医を寄越す。よろしく頼む」


王太子が出て行った。


クルトが「若様、これは大変なことですよ」と言った。


「何がですか」


「王太子様に直接呼ばれたんですよ。普通、辺境の三男がそんな立場に……」


「直してほしいものがあるから来た。そういうことです」


クルトが「そういうものですか」と言った。


「そういうものです」


「……教会の医療独占が壊れている、とはっきり言いましたよね。大丈夫ですか」


俺は少し間を置いた。


「大丈夫かどうかは分かりません。ただ、見えているものを言わない選択が、私にはできないんです」


窓の外が暗くなっていた。

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