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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第四十五話 工作を看破する

宿に戻った夕方、クルトが「お客様が来ています」と言った。


「どなたですか」


「ドレイク家の使者です。ご挨拶がしたいとのことで」


ドレイク家。クルトが小声で補足した。「ヴェルディア家の遠縁にあたる貴族です。家督を狙っているとの噂があります」


「通してください」


使者はネストルと名乗った。三十代の男で、物腰が柔らかかった。礼儀正しく、言葉を選んでいた。表面上は、ただの挨拶訪問に見えた。


「このたびのご上京を耳にし、ご挨拶がてら伺いました」


「お気遣いありがとうございます」


「ヴェルディア家とは遠縁でもありますし、何かとご協力できることがあれば、と思いまして」


俺は「術野の目」を向けた。


(人体ではない。行動の構造を診る)


組織の内部矛盾を診断したように、個人の行動にも同じ原理が使えるか、と思ったのは王都に来てからだった。試してみた。


見えた。


表情と言葉が合っていない。目が「挨拶」の目ではなく「探索」の目だ。手が緊張している。質問の角度が「友好」ではなく「情報収集」を向いている。


(探りに来ている。ヴェルディア家の弱点を探しに来た)


「ヴェルディア家との家督について、親族として話し合いの場を設けられればと」とネストルが言った。


「家督の話については、父上と長兄が窓口です」と俺は言った。「私は領地の顧問の立場なので、家督には関与できません」


「しかし、若様もご当主候補として……」


「当主候補ではありません。三男ですから」


「それでも、ご意向をお聞かせいただければ……」


俺は少し間を置いた。「この会話は記録に残すことはご了承ですか。非公式のご訪問でも、家督に関する発言は公式の意味を持ちますので」


ネストルの目が一瞬動いた。


(動揺した)


「今回は非公式のご挨拶でしたので……次回改めて」とネストルが言った。


「承知しました。父上と長兄への面会の申請であれば、喜んでお伝えします」


「……ありがとうございます」


ネストルが立ち上がった。丁寧に一礼して出て行った。


クルトが「……今のは何が起きたんですか」と小声で聞いた。


「探りを入れに来た。追い返しました」


「なんで分かったんですか」


「見えました」


クルトが「術野の目で?」と言った。「人の嘘も見えるんですか?」


「嘘というより、行動と言葉のズレ。人体の症状と病因の関係と同じ構造です」


クルトが「……若様が一番得意なことは、実は外交なのかもしれません」と言った。


「違います。直すことが得意なだけです」


「同じじゃないですか」


俺は答えなかった。


クルトに「次のドレイク家の接触には、父上か長兄が対応するよう連絡してください」と言った。「領地に手紙を出してください。この件は私の管轄外にします」


「分かりました」


クルトが部屋を出た後、窓の外を見た。


(王都は複雑だ。鑑定院、ドレイク家。次は何が来る)


翌日の朝、クルトが「王太子様のご使者が来ています」と言った。


俺は一拍止まった。「王太子? エドワード殿下が?」


「はい。非公式に若様とお話したいとのことです」

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