表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/65

第四十一話 王都への道

馬車が街道を走り始めてすぐに気づいた。


「術野の目」が切れない。


石橋が見えた。左側の橋脚、第三番目の石が傾いている。次の大雨で崩れる可能性がある。通行量に対して構造が脆弱だ。


旅籠が見えた。柱が腐食している。屋根の重量を支えられていない。危ない。


街道の水はけが悪い区間を通った。土の締まりが弱い。馬車の重量でこれだけ揺れるということは、路床が壊れている。放置すれば通行不能になる。


(止まれない。止まれない。今は王都だ)


「若様、ぼーっとしています」とクルトが言った。


「見えすぎて疲れているだけです」


「また何か問題が」


「いくつか」


「いくつですか」


俺は少し考えた。「ここまで二十か所ほど」


「そんなに!」とクルトが声を上げた。「一時間も走っていないのに?」


「スキルは常に動いています。意識しなくても見える」


クルトが「……それは大変だ」と言った。「一日中、問題が見え続けているということですか」


「慣れました」


「慣れられるものですか」


「慣れます。ただ、問題を見ると直したくなるので、その衝動を抑えるのが少し大変です」


旅籠に一泊した夜、手帳を開いた。


道中で見た問題を書き留めた。橋の場所、旅籠の柱の状態、街道の区間。記録だけする。行動しない。それが今できることだ。


「王都でやること」のリストを改めて確認した。


③を見た。「行動はしない」という文字。


書いた時から、それが正しいのか確認できていない。


外科医として四十二年生きた。患者が目の前にいて「今は動かない」という判断をしたことは、一度もなかった。いつでも「今できることをする」だった。


「行動はしない」と書いた文字を見ながら「……難しいかもしれない」と独り言が出た。


翌々日、城壁が見えた。


「術野の目」が反応した。


城壁の西側、石積みの継ぎ目に雨水侵食。東の門扉の金具が腐食。城壁上の見張り台、数か所で木材の劣化。


そして城壁の内側へ入った瞬間、視野が広がった。


建物の密度が違う。道の幅が違う。人の数が違う。


そして問題の密度も、比べものにならなかった。


「術野の目」が次々と反応した。貴族の館、商人の店、工房、道。あちこちに問題がある。領地での仕事が、この規模に拡大したようだった。


「若様、顔が変わっています」とクルトが言った。


「……見えすぎています」


「大丈夫ですか」


「大丈夫です。慣れます」


宿に着いた。部屋に荷物を置いた。


窓から街が見えた。「術野の目」はまだ動いていた。


手帳を開いた。「貧民街近く・旅路で通過した東側の一角・古い石造りの建物群・崩落リスク高・要対処」と書いた。


窓を閉じた。


(直すべきものが多すぎる。でも今は鑑定院だ)


明日、出頭する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ