第四十話 召喚状
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
ここまで読んで「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
書状を三度読んだ。
「王立鑑定院院長の名において、ヴェルディア家の三男レオン殿に王都への召喚を命ずる。スキル判定に関する追加調査のため、速やかにご出頭いただきたい」
父の顔が険しくなっていた。ヴィルが「罠ではないか」と言った。
「断れません」と俺は言った。
「なぜ」
「断れば、別の手段で来ます。騎士を寄越すか、領地への圧力を使うか。対応が遅ければ遅いほど、相手に準備の時間を与えます。行かない選択肢はない」
父が「危険があるなら私も同行する」と言った。
「父上の存在が領地を守ります。そこにいてください」と俺は言った。「私が王都へ行っている間、領地に父上がいることが最も安全です」
父がしばらく黙った。それから「……分かった」と言った。「ただし護衛をつける」
「クルトと騎士二名で十分です」
ヴィルが「それで足りるか」と聞いた。
「王都内での目立つ行動は最小限にします。護衛が多ければ多いほど目立つ。小規模な方が動きやすい」
翌日から出発の準備を始めた。
夕方、ミリアが来た。「一緒に行きます」と言った。
俺はしばらく考えた。
「今は来ないでください」
「なぜですか」
「王都で何かあった時に、こちら側の連絡役が必要です。ミリア、あなたがその役を頼みたい」
ミリアが少し止まった。
「連絡役」
「はい。私が王都で何かあった場合、情報を領地に届ける役です。ここを守る人間がいなければ、私も安心して動けません」
「……分かりました」とミリアが言った。「必ず連絡を」
「必ず」
ミリアが何かを言いかけて、止まった。それから「気をつけて」とだけ言った。
出発前夜、手帳を開いた。
「王都でやること」
①鑑定院の対応。何を聞かれるか、何を見せるか。
②交渉の余地があれば、スキルの位置付けを明確にする。
③王都で直すべき問題を観察する。行動はしない。
三行書いて、三行目を見た。「行動はしない」と書いた文字を見た。
(……難しいかもしれない)
消さなかった。手帳を閉じた。
出発の朝、父と母とヴィルが門まで来た。
父が「頼んだぞ」と言った。「お前を信じている」
ヴィルが「何かあればすぐ連絡を。その場で動ける手を用意しておく」と言った。
母ヘンリエッタが最後に来た。
「王都では目を細めていなさい」と言った。「見えすぎると危ない」
俺は一瞬止まった。
(見えすぎると危ない。母は術野の目の性質を分かっている)
「……母上らしい言葉です」
「行ってらっしゃい」
馬車に乗った。クルトが御者の隣に座った。騎士二名が馬で後ろについた。
領地の門が遠くなった。
(王都に行く。何があっても、記録と論理がある。それで当たる)
三日の旅が始まった。




