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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第三十九話 症状が消える

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

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エステルに依頼してから五日後、クルトが来た。


「北の国境が静かになっています。越境兵の報告が、昨日から途絶えました」


俺は何も言わなかった。


(効いたか。まだ断言はできない)


偶然かもしれない。伯爵が別の判断をした可能性もある。ランセル家老が動いたという確証はない。


「もう少し様子を見ましょう」と言った。


三日後、また情報が来た。交易商人の話として「伯爵領で内政の大規模見直しが始まった」という話が流れていると。


「さらに二日後」とクルトが続けて持ってきた。「ランセル家老が伯爵に直接進言したという話が聞こえてきました。詳細は不明ですが、外征の延期が決まったと」


俺は書斎の椅子に座った。


(機能した。間接的だが、確かに機能した)


症状が消えた。病因に直接触れずに、情報を適切な人に届けることで、症状が自然に収まった。手術で言えば、切らずに治った。


父に報告した。


「越境が止まったのはなぜか知っているか」と父が聞いた。「騎士団は動かしていない」


「情報を届けました」と俺は言った。「伯爵領の内部矛盾を、適切な人に知らせました。それだけです」


父がしばらく黙った。


「……医師というのはそういうものか」と父が言った。


「そういうものです。病気を治すのは医師ではなく、体自身です。医師はただ、体が治れるように整える。今回も同じでした」


父がまた黙った。


「レオン」


「はい」


「お前に全て任せる」


俺は一瞬だけ止まった。


(全て、か)


「……ありがとうございます」


「任せるというのは、好きにしていいということではない。責任が増えるということだ。それは分かっているな」


「分かっています」


「良い。引き続き頼む」


父が出て行った。


ヴィルが入れ替わりに来た。「聞いた。うまくいったな」と言った。


「今回は、です」


「ただし」とヴィルが言った。「伯爵が後で『ヴェルディア家が工作した』と知れば、怒るかもしれない」


「その時はその時で診断します」


ヴィルが少し笑った。「その答え方がお前らしい」


ミリアが夕方に来た。報告を聞いていた。「越境が止まった。本当に組織の病も診断できるんですね」と言った。


「情報があれば、できることもあります」


「でも、情報を読む目が必要です。あなたでなければ、あの情報を繋いで診断書にはできなかった」


「ミリアの疫病の記述があったからです。あれが一番効いたと思います」


「そうですか」


ミリアが少し黙った。「……正直に聞いていいですか」


「どうぞ」


「あなたは怖くないんですか。こういうことをしていると、敵が増えていく。調査団も、今回の伯爵も。次に何が来るか分からない」


俺は少し考えた。


「怖い、という感覚は医師の時もありました。手術台の前で、患者の状態が想定より悪かった時。でも怖いから止まるという選択肢は、医師にはありません」


「ここでも同じですか」


「同じです。止まれば、誰かが困ります。それが嫌なので動いています」


ミリアが「……分かりました」と言った。


翌朝、館に見覚えのない紋章の書状が届いた。


王都の紋章だった。


「王立鑑定院院長の名において、ヴェルディア家の三男レオン殿に王都への召喚を命ずる」


父の顔が変わった。ヴィルが「王都か」と言った。


俺は書状を読んだ。


(また、次が来た)

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