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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第三十五話 伯爵領の病

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

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三日で情報が揃った。


クルトが持ってきた。「騎士の知り合いの商人から、もう少し深い話が聞けました」


俺は書斎の机に情報を並べた。


「伯爵領では三年連続で不作。北部の農地で疫病の噂がある。詳細は不明。伯爵家の家老と次男が対立しているという話。徴税が例年より三割高い」


クルトが補足した。「家老というのは、先代から仕えている老臣だそうです。次男は二十代で、最近発言力が増してきたと。伯爵は両者の間で板挟みになっているという話も聞きました」


「老家臣と若い後継者の対立、か」


俺は情報を整理し始めた。


「三年不作。疫病。内部対立。過剰徴税」


四つの事実が手元にある。これを繋ぐと何が見えるか。


(不作が三年続けば財政が苦しくなる。財政が苦しければ徴税を上げるしかない。徴税を上げれば領民の不満が高まる。内部で対立があれば、その不満は指導者への批判になる)


俺は続けた。(外に敵を作れば、内部の不満が外に向く。国境での示威行動は、外部の緊張を演出するための手段だ)


「分かりました」


ミリアが「何が」と聞いた。


「伯爵は内部問題を抱えています。三年の不作と疫病で財政が崩れ、徴税を上げたことで領民と家臣の不満が高まっている。さらに家老と次男の対立で指示系統も乱れている。外征というより、外に緊張を作ることで内部の目をそちらに向けようとしている」


「越境が症状だと言っていましたね」


「病因は内政の崩壊です。外征は症状に過ぎない。だから騎士団で国境を固めても、病因は残ります」


ミリアが「では、どうするんですか」と聞いた。


「病因を伯爵自身が認識すれば、外征どころではなくなります。でも直接伝える必要はない」


「伯爵の家老に届ける」


「先代から仕えている老臣であれば、情報を正確に判断できる可能性が高い。家老が伯爵に進言すれば、自然に動く」


「どうやって家老に届けるんですか。私たちと伯爵領に繋がりはないでしょう」


「中立の商人を経由します。商人は両領を行き来している。中立の立場で情報を届ける役を引き受けてもらえれば、情報が届く。私たちが直接動く必要はない」


ヴィルが途中から話を聞いていた。「面白い発想だが、うまくいかなかったら」


「騎士団の準備は続けてください。この方法はあくまで保険です。うまくいけば被害ゼロで解決できる。うまくいかなければ、騎士団で対応してもらいます」


ヴィルが「分かった」と言った。「一週間の期限まであと四日ある。その間に商人を探せ」


「はい」


ミリアが「……一つだけ聞いていいですか」と言った。


「何ですか」


「組織の問題も診断できるんですね、あなたは」


「情報を繋ぎ合わせれば、見えるものがあります」


「では」とミリアが少し間を置いた。「教会の問題も、診断できますか」


俺は一瞬止まった。


教会。医療独占。治癒魔法の管理。ガーランド司祭。ヴィクトール上司祭。


(できるかもしれない。でも、それは今やることではない)


「……できるかもしれません。ただ、今ではありません」


「なぜ」


「時期というものがあります。今は、目の前の問題を一つずつ片付けることが先です」


ミリアが「分かりました」と言った。でも何かを考えているような目だった。


翌日、クルトが「商人に心当たりがあります」と言ってきた。「ベルナルディア中央部を拠点に、複数の領を行き来しているエステルという女性商人です。評判が良く、中立として知られています」


「会えますか」


「セイル村の市場に三日後に来るはずです」


「行きましょう」

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