第三十一話 調査団到着
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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調査団は五名だった。
ヴィクトール上司祭、司祭二名、書記官二名。馬車三台で来た。人数より荷が多かった。記録用の羊皮紙と封蝋を大量に積んでいた。「調べに来た」というより「記録を取りに来た」という印象だった。
父アルベルトが領主として正式に出迎えた。
広間に全員が座り、向かい合った。
ヴィクトール上司祭は五十代後半の男だった。白い法衣に金の縫い取りがあった。表面上は礼儀正しかったが、「辺境の子爵家の三男が何かできるはずがない」という態度が滲んでいた。
「ご領地で無認可の医療行為が行われているとの報告を受けました」と上司祭が言った。
「どのような行為が問題とされているのでしょうか」と俺は穏やかに問い返した。
「村人の病状を診断した行為、薬草を与えた行為、水の汚染を指摘した行為が報告されています」
「承知しました。私の活動の記録を全てご確認いただけますか。明日、資料をお届けします」
ヴィクトールが「記録?」と聞いた。
「はい。活動の記録を最初から全て文書化しています。何をどこでなぜ行ったか、関係者名も含めて全部記載してあります。一度ご覧いただければ、判断がしやすいかと思います」
上司祭がしばらく黙った。
「……分かりました」と言った。「資料を確認させていただきます」
「ありがとうございます」
受け入れの場が終わった。
父が「息子に対応させる」と言ったことで、ヴィクトールは俺に話を向けてきた。父の信任の形だった。
ガーランド司祭も調査団と一緒に来ていた。最後まで何も言わなかった。「自分がこの状況を引き起こした」という自覚が、表情のどこかにあった。
夜、ミリアが「私が行った薬草調合の記録も別冊にまとめました」と持ってきた。
「ありがとうございます。これがあれば、薬の調合と診断が別々の行為だということが、さらに明確になります」
「二人分の記録があれば、消しにくいですね」とミリアが言った。
「消しにくいどころか、完全な証拠です」
明日、提出する。




