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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第二十九話 調査団の影

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

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公文書は簡潔だった。


「聖ヴァロワ正教会大神殿の名において、ヴェルディア領における無認可医療行為の有無を調査するため、調査団を派遣する。一週間後に到着の予定」


父が「これは公式文書だ。無視できない」と言った。


「分かっています」


「最悪、お前の活動を全て止めることになるかもしれない」と長兄ヴィルが言った。「公の場で問題ありと判断されれば、父上の立場にも影響が出る」


「……記録があります」と俺は言った。


「記録?」とヴィルが聞いた。


「最初から全ての活動を文書化しています。何をどこでなぜ行ったか、全部残っています。医療行為と診断・助言の区別も明記してあります。治癒魔法は一度も使っていません。それが証明できれば問題ないはずです」


父が俺を見た。「……お前はそのために記録をつけていたのか」


「顧問就任時に『全て記録させてください』とお願いしました。何かある時のためです」


ヴィルが「……用意周到だな」と言った。「お前が記録をつけていなければ、今頃かなり危うかった」


「幸い、全部あります。一週間で整理します」


父が「対処できるか」と聞いた。


「できます。事実は全部こちらにあります」


方針が決まった。調査団が来るまでに記録を整理し、説明できる形にする。ミリアにも証言者として協力を頼む。村長や村人の証言も用意する。


夜、書斎で記録を広げた。


ヨハン救命の記録。橋の診断報告書。水源浄化の経緯と結果。農地診断の記録。薬草調合の分担記録。全部ある。


(準備は十分だ)


父が認めてくれている。ミリアが一緒にいる。村人が証言できる。記録がある。


「一つで欠けていたら危なかった」と俺は思った。「全部が揃っているから、動ける」


翌日、ミリアに話した。


「私も証言できます」と即答した。「薬草調合は私が行った。診断と薬の提供が別の行為であることも説明できます。私が証言すれば、あなたが医療行為を行っていないことの裏付けになる」


「ありがとうございます」


「当たり前です」とミリアが言った。


村長のエルンストにも連絡した。「もし調査団が村を訪れた際に、実際に何が行われたか正直に話してください」と頼んだ。エルンストが「あんたたちがやったことは見てきた。嘘はつかない」と言った。


ボロスにも同じことを頼んだ。「橋の件で俺が証言する。工事前と工事後の状態は、俺が一番よく知っている」と言った。


記録を整理しながら、俺は夜の窓から外を見た。


一週間後に調査団が来る。でも直すべきことは止まらない。バルカ村の石材産業の準備も、進めなければならない。


(恐れながら進む。それだけだ)

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