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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第二十七話 水が還る日

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

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夜明け前に起きた。


山道はまだ薄暗かった。ミリアとクルトが先を歩いていた。工事現場に全員が揃った頃、空が少しずつ明るくなってきた。


グレゴリオも、バルカ村の全員が来ていた。老人六人、子供三人。これが今のバルカ村の全ての住人だった。


「あとはこの石を動かせば」とボロスが言った。


最後の閉塞部分だった。岩盤の亀裂の手前に、土砂と岩が詰まっていた。この一点を取り除けば、地下水脈が解放される。


全員が固まった。風も止まったような気がした。


ボロスが若手職人に「今から」と言った。


ハンスとエリンが、最後の岩に力を入れた。クルトが側から押した。岩が動いた。


最初は何も起きなかった。


次の瞬間、水が滲み出てきた。


細かった。最初は本当に細かった。岩の隙間から、ほんの糸のような水だった。それが少しずつ太くなった。


水の音が生まれた。


さらに太くなった。やがて、確かな流れになった。


水が古い水路に向かって流れていった。二十年前まで使われていた水路だ。乾ききっていたその底を、水が満たしていった。


「……水だ」


グレゴリオの声だった。かすれていた。


「本当に水が来た」


老人が崩れるように膝をついた。両手で水を掬った。こぼした。また掬った。何度も、何度も掬った。


「二十年……二十年待っていた。本当に来た」


子供たちが「水だ!水だ!」と叫びながら走り回った。


ハンスが「……あんたは本物だ」と俺に言った。


「見えたから、掘れました。掘ったのはボロス棟梁とあなたたちです」


「そういう意味じゃない」


隣でミリアが黙っていた。目が赤かった。


グレゴリオが立ち上がって、俺の手を取った。「若様、ありがとう。本当に、ありがとうございます」


「終わりではありません」と俺は言った。「水が戻っても、若者が戻る理由を作らなければ、この村は立て直せない。まだ続きがあります」


「分かっています。でも今日は、ありがとうと言わせてください」


クルトが「俺、騎士になって良かったと思える日が来るとは思わなかった」と言った。その声がわずかに震えていた。


「来て良かったです」とミリアが言った。


俺は水が流れていく古い水路を見ていた。


四十二年間、人の体を直してきた。橋を直した。土壌を直した。水源を直した。農地を直した。そして今日、二十年分の渇望に水を戻した。


「直せた」と思った。


この感覚を、前世でも知っていた。術後、患者が目を開けた瞬間。それと同じものだった。

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