第二十四話 若者の反発
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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本工事が始まった。
試掘で水脈を確認した後、本格的な水路の開通工事に入った。ボロスが「二週間はかかる」と見積もった。
「人手が必要だ」とボロスが言った。
「クルト、使用人で工事に来られる人間を集めてもらえますか」
クルトが「承りました。三人は動かせます」と答えた。
翌日、ボロスが若手職人二人を連れてきた。ハンスともう一人、エリンという二十代前半の職人だった。
エリンが工事現場を見回して、俺の顔を見た。「子供の言うことを聞かなきゃいけないのか」と言った。小声だったが、聞こえた。
俺は何も言わなかった。
ボロスが振り返った。
「俺が認めた。それで十分だろうが」
それだけだった。エリンが黙った。クルトが「若様の目は俺も最初は信じてなかったです」と余計なことを言いかけたが、ボロスの目線で止まった。
工事が始まった。
ボロスが全体の指揮を取り、職人二人が掘削を進める。クルトと使用人が土砂の運搬を担う。俺は定期的に「術野の目」で掘削方向を確認してボロスに伝える、という分業になった。
「このまま拳一つ分ほど右に角度を変えてください。岩盤の亀裂がそちらに走っています」
「分かった」とボロスが職人に伝える。
自分の役割に集中できる。これが分業の良さだ。俺は掘れない。ボロスは水脈が見えない。クルトは重いものを運べる。それぞれがそれぞれの強みで動いている。
昼の休憩時、バルカ村の子供たちが近づいてきた。
男の子が「お兄ちゃん、何してるの?」とクルトに聞いた。クルトが「水を出してる」と答えた。「水はどこに行くの?」「村の水路に行くんだ」「そしたら何になるの?」「水が使えるようになる」「ご飯が作れる?」「そうだな」
男の子が「じゃあお兄ちゃんは俺たちのご飯のために掘ってるの?」と言った。
クルトが「まあ、そういうことだな」と言った。
男の子が「ありがとう」と言って走り去った。
クルトがそちらを見ていた。俺はそれを見ていた。
「騎士になって良かったと思える日が来るとは思わなかった、と昨日言っていましたが」と俺は言った。
「今日も思ってます」とクルトが答えた。
エリンが午後から、掘削の向きを確認した後、「……確かに、指示通りに掘ると岩盤が出てくる」と言い出した。独り言のような声だったが、聞こえていた。
何も言わなかった。
グレゴリオが工事を毎日見に来ていた。「若様、本当に来てくれた」という言葉を、毎日繰り返した。同じ言葉だったが、毎回少し違う意味に聞こえた。




