第二十三話 地下を診る
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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ボロスは山道を歩きながら、何も言わなかった。
崩落現場に着いて、地形を見回した。岩が露出した斜面、その下に積み重なった土砂。ベテランの石工の目が、地形を読んでいるのが分かった。
「ここから水脈を塞いでいる、と言うのか」とボロスが言った。
「はい。この斜面の下、土砂が積み重なっている部分の先に、水の通り道があります」
「見えるのか、そこまで」
「集中すれば」
ボロスがしゃがんで地面を手で叩いた。「……土の感触は悪くない。下に空洞がある地形に似ている」と言った。職人の経験が告げているのだろう。
「この地点から斜め下に向かって掘ると、三メートルから四メートルで岩盤の亀裂に当たります。そこから水が出るはずです」と俺は詳細に伝えた。
ボロスが「……本当にそこまで見えるのか」と言った。珍しく声が素直だった。
「確認してみましょう。試掘という方法があります。まず小さな穴を掘って、本当に水脈があるか確かめる。本工事はその後でいい」
「その方が確かだな。俺も職人として、見ないで動きたくない」
試掘は翌日から始めた。
ボロスが若手の職人を二人連れてきた。クルトも使用人と一緒に人手として参加した。
三日目。四メートル近く掘り進んだところで、岩盤が出てきた。亀裂が走っていた。
スコップが岩盤に当たった瞬間、水が滲み出てきた。
最初は細い、ほんの染みのような水だった。それが少しずつ太くなった。
「水だ!」とグレゴリオが声を上げた。
全員が固まった。
水が出てきた。本物の水が、二十年塞がれていた地下水脈から、地表に滲み出てきた。
ボロスが試掘口の縁にしゃがんで、水に指を触れた。「……本当に出た」と言った。「あんた、本当に見えていたんだな」
「ミリアさんの植物鑑定が補強してくれました。水のある場所に生える薬草があった」
「俺の経験も地形からそれらしいとは感じた。でも断言はできなかった。あんたが断言したから掘れた」
グレゴリオが崩れるように膝をついた。手で水を掬った。こぼしながら、何度も掬った。
「……二十年だ。ずっと待っていた」と老人が呟いた。
涙が頬を伝った。
俺は一歩引いて、その場面を見ていた。前に出る必要はなかった。この感動はグレゴリオのものだ。村のものだ。
ミリアが「植物の変化を確認します。水脈の通り道を追えます」と言いながら、斜面を確認していた。でも目が少し赤かった。
ハンス、若手職人が俺の横に来た。「……本当に見えていたんだな」とボロスと同じ言葉を言った。「俺はあんたのことを最初、子供だと思っていた」
「子供ですよ、外見は」
「そういう意味じゃない」とハンスが言った。「あんたは本物だ」
水が少しずつ、古い水路に向かって流れ始めていた。




