第二十二話 バルカ村のヒアリング
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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バルカ村への二度目の訪問は、「ヒアリング」が目的だった。
診断ではなく、聞く。患者の問診と同じだ。何が起きたかを正確に知らなければ、原因を探れない。
グレゴリオが今回も待っていた。前回より少し表情が明るかった気がした。「若様がまた来てくださいました」と言った。
「前回は概況を聞かせてもらいました。今日は詳しく教えていただきたいことがあります」
「何でも」
「二十年前の大雨のことを詳しく教えてください」
グレゴリオが記憶を辿るように目を細めた。
「あれは夏の終わりでした。三日三晩続く大雨で、北の山が崩れた。山のどこが崩れたかは俺たちには分からなかった。ただ、その後から井戸の水位が下がって、翌年の春には湧き水が止まった」
「崩れた山の場所に連れて行ってもらえますか」
グレゴリオが「こちらです」と歩き始めた。
山道を二十分ほど登ると、斜面の一部が大きく変化している場所に出た。木の生え方が変わっている。土の色も違う。二十年経っても、大きな地形変化の痕跡は消えていなかった。
「術野の目」を集中させた。
地下の構造が浮かんで見えた。岩盤の亀裂、その上に積み重なった土砂。かつて水が流れていた通り道が、崩落した土砂によって完全に塞がれていた。
(ここだ。この土砂を除けば、水の通り道が戻る)
「どのくらい深いところに水の通り道がありますか」とミリアが聞いた。
「この地点から斜め下に向かって三メートルか四メートルのところです。岩盤の亀裂の手前に、土砂が詰まっています」
「工事で取り除けますか」
「技術的には可能です。ただし規模が大きい。ボロス棟梁に来てもらう必要があります」
グレゴリオが「本当に、水の通り道があるのか」と言った。
「あります。今もその先に水が溜まっているのが見えます。塞がれているだけで、枯れていない」
老人がゆっくり頷いた。「……信じます」とだけ言った。
ミリアが斜面の植生を調べていた。「レオン様、見てください。この薬草の群落」とミリアが声を上げた。
「何が見えますか」
「ロテイルと呼ばれる薬草です。水分が豊富な地下がある場所にしか生えない種類です。地下の水脈の存在を示している可能性があります」
「そうか、植物が証言してくれている」
「植物鑑定スキルの本領発揮です」とミリアが言った。表情が明るかった。
「それと、この群落は領内で最も質の高い薬草群落です。ここの薬草は水分と特定の土壌成分のせいで、有効成分が他の場所より濃い」
「それは重要な情報です。記録してください」
子供たちが今日は少し近くに来ていた。ミリアが手を振ると、女の子が小さく返した。
帰り道、俺は手帳に「工事計画・ボロス棟梁との事前協議必要」と書いた。
「大規模工事になりますね」とミリアが言った。
「はい。でも『工事で直せる』という診断は出ました。あとは方法と費用の問題です」
「ボロスさんは何と言うでしょうか」
「事実を見せれば、分かる人です」




