第二十一話 医師と申すか
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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ガーランド司祭は今回、書記官を伴っていた。
若い神官だった。羊皮紙と羽ペンを持って、司祭の後ろに静かに座った。記録を取るために来ている。これは「挨拶」ではなく、公式の場だった。
父アルベルトが正面に座り、俺はその隣に同席した。
「このたびは、大神殿からの要請を受け、公式のお伝えがございます」と司祭が言った。前回より声が固かった。
「どのようなことでしょうか」と俺は穏やかに答えた。
「ヴェルディア領において、教会の許可なく医療的行為が行われているとの報告が届いております。確認のための正式通告です」
「具体的にお聞かせください」
「若様が村々で行われた活動について。領民の病状を診断したこと、水の汚染を医術的に評価したこと、薬草剤の配布に関与したこと、これらが問題として挙げられています」
俺は落ち着いて応じた。
「私が行ったのは構造的な診断と助言です。薬草剤はミリア・グリーンウッドという薬草師見習いが調合し、薬草師として置いていきました。私は薬を渡していません」
「では領民の病状を診断したことは」
「スキルによる構造診断をしました。人体の構造を見ることと、橋の構造を見ること、土壌の状態を見ること、これらは私のスキルでは同じ作業です。橋を診ることが許可されるなら、人体を同じ方法で診ることも変わりません」
書記官の羽ペンが止まった。司祭が少し間を置いた。
「……それは詭弁では?」
「詭弁ではなく、これが私のスキルの性質です。詭弁と判断されるなら、鑑定士に確認してください。私のスキルの正式な判定は『検分士』です。検分士は物を見るスキルです。人体も物の一部です」
書記官が何かを書いた。司祭が額に手を当てた。
父が「本件は息子が答えた通りです。追加でお聞きしたいことはございますか」と言った。
「……今後の活動は慎重にお願いします」と司祭が言った。「大神殿は注目しています」
「ご連絡ありがとうございます」
司祭が帰り際に書記官を連れて立ち上がった。ドアの前で一瞬止まった。
「若様、一つだけ」
「何でしょうか」
「……あなたは本当に、医術を行っていないとお考えですか」
その問いには、「言わなければならない言葉」ではなく、「本当に聞きたい言葉」が混じっていた。
「私は直したいだけです。それが医術かどうかは、判断する立場にありません」と俺は答えた。
司祭が頷いた。それ以上は言わなかった。
玄関が閉まった後、父が「よく対処した」と言った。
「次はもっと本格的に来るかもしれません」
「それでも対処できるか」
「記録があります。記録がある限り、事実で応じられます」
午後、バルカ村の調査計画書に向かった。
司祭との対応で半日つぶれた。でも直すべきことは待ってくれない。




