第二十話 消えゆく村
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
ここまで読んで「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。
バルカ村は領地の一番端にあった。
山道を半日かけて歩いた。クルトが「こんな遠くに村があるとは知りませんでした」と言った。俺も、地図で見ていた時より遠く感じた。
村に入って、最初に思ったことは「静かだ」ということだった。
子供の声がない。馬の嘶きもない。風だけが通り過ぎていた。
建物が見えた。十棟ほどある。半分は廃屋になっていた。
老人が六人、子供が三人。それだけが残っていた。
「二十年前は五十人いた」と最年長のグレゴリオが言った。七十五歳の老人だった。「水が来なくなって、若者から出て行った。最後に残ったのが、俺たちだ」
「水が来なくなったというのは」
「井戸が枯れた。川が遠くなった。正確には……」グレゴリオが考えた。「地面の向きが変わった感じだ。昔はここでも水が湧いていたが、ある年から急に出なくなった」
「いつ頃のことですか」
「二十五年くらい前かな。大きな雨が続いた後だ」
俺は「術野の目」を集中させた。
地面の下を透かして見ようとした。これはかなり疲れる。深いところを見るには集中が必要だ。
地下水脈を探った。
(……あった)
水脈は存在している。ただ、土砂の堆積で流れが塞がれていた。おそらく大雨で山の斜面が崩れ、その土砂が地下で水脈を遮断した。
「鉱山があったとも聞きましたが」と俺は聞いた。
グレゴリオが「採れなくなったと言われた。でも俺は信じていない。地面が鳴る日があるから」と言った。
「地面が鳴る」
「低く、ゴロゴロと。天気が変わる前の日に多い」
(地下に空洞か、あるいは地下水の圧力か)
集中を保ちながら、さらに深く診た。
鉱脈そのものは判断が難しかった。ただ、水脈の近くに石材の層が見えた。土砂崩れ前は、この石材が地表に露出していた可能性がある。
「今日分かったのは二点だけです」と俺はグレゴリオに言った。「一つ目は、地下水脈は生きている。土砂に塞がれているだけで、枯れていない。二つ目は、地下に石材の層がある」
「水が戻るということか」グレゴリオの声が変わった。
「可能性があります。ただし工事が必要です。時間もかかります。今すぐとはいきません」
グレゴリオが俺を見た。「……信じていいのか」
その目に「また裏切られるかもしれない」という色があった。これまで何度か期待して、何度か失望したのだろう。
「信じてもらえるよう、動きます」
その答えしか、今の俺にはできなかった。
子供たちが廃屋の陰から覗いていた。ミリアが手を振ると、一人が少し出てきた。
帰りの馬車の中、俺は「これは一番時間がかかる。でも一番見捨ててはいけない」と言った。
「分かりました。一緒に考えましょう」とミリアが言った。
術野の目の集中使用で、帰路はかなり疲れた。目の奥が痛かった。十五歳の体は、長時間の精神集中に限界がある。
「無理をしすぎですよ」とミリアが言った。
「必要なことだったので」
「必要と無理は別の話です」
馬車が揺れた。クルトが「着いたら休んでください、若様」と言った。
窓から夜の山道を見た。バルカ村の明かりは、もうずっと後ろに消えていた。
(あの場所に、水を戻す。それだけでいい)
なぜ教会は術野の目を警戒するのか。バルカ村から帰る揺れる馬車の中で、また考えた。ガブリエルには先日返信した。何か新しいことが分かれば、また知らせてくれるだろう。




