第十九話 古代という謎
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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「古代の異端スキル」
その言葉を手帳の端に書いてみた。書いてから、消した。
ガブリエルの手紙には続きがあった。「偶然見つけた文書の断片で、全文は読めなかった。禁書庫に入れられているものかもしれない。詳しくは分からないが、兄上の顔が浮かんで、とりあえず送った」という後書きがあった。
ガブリエルらしい、衝動的な書き方だった。でも確かに、重要なことを見つけていた。
「異端」という言葉が、教会の文脈で使われるのは重い。治癒の独占を守るためなら、教会は何でも「異端」と呼べる。でも、「古代の」という接頭語が付いているのが気になった。教会が独占を始めたのは、かなり前のはずだ。
ミリアに手紙の内容を一部話した。
「俺のスキルに関係する古い記述が見つかったらしい、という程度の話だが」
ミリアが「どんな内容ですか」と聞いた。
「術野の目について、古代の記録に何かあるらしい、とだけ。詳しくは分からない」
「神学院には、触れてはいけない本があると聞いたことがあります。禁書庫というものが」とミリアが言った。「薬草師の間でも、教会が特定の薬草の使い方を禁じているという話がある。古い知識が教会によって管理されている、という話はよく出ます」
「禁書、か」
「ガブリエル様は安全ですか」
「注意するように手紙に書く」
返信を書いた。「もし安全なら、もう少し詳しく調べてほしい。ただし危険を冒すな。分かったことがあれば少しずつ教えてくれ。兄より」
封をしながら、「古代医師団」という言葉が頭に浮かんだ。
(術野の目が古代のスキルだとしたら、以前にも同じものを持つ者がいた。彼らは何をしていたのか。なぜ「異端」と呼ばれるようになったのか)
前世で四十二年間、消化器外科医として患者を見てきた。その経験が転生後のスキルとして形を変えた、と自分では理解してきた。しかし、それだけではないかもしれない。
「古代の医師たちが同じスキルを持っていたなら、彼らも同じ使い方をしていた。人の体だけでなく、構造物や土壌を診ていた。そしてそれが、教会に封じられた」
「レオン様?」とミリアが言った。
「一人で考えていました。すみません」
「考えていることを全部話してくれなくていいですが、表情が変わっていたので」
「……俺のスキルには、自分で思っていたより深い歴史があるかもしれない。それだけです」
ミリアが「それが分かった時、何か変わりますか」と聞いた。
「何も変わらない気がします。直したいものを直す、という気持ちは変わらない」
「では今やるべきことをやるだけですね」
「そうです」
ヨハンが「若様、手紙はいかがでしたか」と廊下で声をかけた。
「少し考えることがありました」
「若様の考えることは、いつも普通の方とは違いますね」とヨハンが微笑んだ。「でも若様が考えていることは、いつも誰かの役に立つ方向に向かっています。それはよく分かります」
俺は苦笑いした。
「ヨハンに見透かされると、居心地が悪い」
「失礼いたしました」とヨハンが頭を下げた。その顔は笑っていた。
翌日、ミリアが「バルカ村に一度行ったことがあります」と言った。「薬草を集めに。でも老人と子供しかいなかった。あそこは消えそうな村です」
「最後の村だ。行ってみよう」
「大丈夫ですか。疲れていませんか」
「疲れています。でも、行かなければならない村です」




