第十八話 司祭の警告
全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。
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ガーランド司祭は今回、父と正式な面談の形で来た。
応接室に司祭と父が向かい合い、俺はその横に同席した。前回の「挨拶」とは違う。これは公式の場だった。
「若様の活動について、教会として一言申し上げたく参りました」と司祭が切り出した。声は礼儀正しかったが、緊張が滲んでいた。
「どのようなことでしょうか」と俺は穏やかに聞いた。
「村々での水の浄化、農地の診断、そして薬草剤の配布。これらは医術に近い行為として、教会の治癒行為と混同されかねません」
「具体的にお聞かせください」
「村人に薬を与えた行為、病気の原因を診断した行為。これらが問題です」
俺は落ち着いて答えた。
「私が行ったのは水の診断と農業の助言です。薬草剤はミリア・グリーンウッドという薬草師見習いが調合し、彼女の判断で置いていきました。私は薬を渡していません」
「では水の汚れを見分けたのは?」
「スキルの自然な使用です。橋の木材の腐食を見たり、農地の土壌を診たりするのと変わりません。水源も構造物と同じく、状態を確認しただけです」
司祭が少し沈黙した。
「病の原因を口にすることは」
「水が汚れていると説明することは、診断ではなく観察の結果です。村人が水を沸かすかどうかは村人が決めたことで、俺が指示したわけでも薬を処方したわけでもありません」
司祭がまた黙った。
父が「本件は息子が答えた通りです」と静かに言った。
しばらくして、司祭が「……今回は問題なしと判断します。しかし今後は慎重にお願いします」と言った。
「ありがとうございます」
司祭が立ち上がった。帰り際に、俺の方に向き直った。
「若様。一つだけ、個人として申し上げてよいですか」
「どうぞ」
「……治癒とは、神の力を借りることです。人の知識だけで病が治るとすれば、それは神への信仰を薄れさせます。教会がそれを恐れるのは、当然のことではないでしょうか」
俺は司祭の目を見た。
この人は「警告しに来た」のではなく、「迷っている」のだ。怒りでも傲慢さでもなく、本当に信仰と現実の間で揺れている。
「神が人を作り、人が知識を持つことも神の意図かもしれません」と俺は言った。「私は神に反しようとしているのではなく、直せるものを直したいだけです」
司祭が頷いた。それ以上は言わなかった。
玄関を出る直前、司祭が振り返った。その目がわずかに細くなった。何かを見定めようとする目だった。
ヨハンが玄関を閉めた後、父が「上手く対処したな」と言った。
「司祭は……本心では別のことを思っているように見えました」
「どういうことだ」
「警告を述べながら、自分でも迷っているような気配がありました。誰かに言わされているか、あるいは信仰心と組織の立場の間で苦しんでいるか」
父が少し考えた。「……敵ではないかもしれないと?」
「まだ分かりません。ただ、完全な悪ではないと思います」
翌日、ガブリエルからの手紙が届いた。
「神学院で古い記録文書を読んでいたら、『術野の目は古代の異端スキルである』という記述を見つけた。兄上、これは何を意味するのか」
俺は手紙を持ったまま、窓の外を見た。
(古代の、異端)




