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48歳元外科医、転生先でハズレスキル『術野の目』を武器に医術なき王国を立て直す  作者: ヲワ・おわり


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第十五話 二人の調合

全70話完結予定です。毎日5話ずつ、12時・15時・18時・21時・23時に投稿します。

ここまで読んで「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると励みになります。

翌日は館の一室を借りて、薬草の調合作業をした。


フォード村の慢性中毒への対処として、体から金属成分を排出しやすくする薬草剤を作る試みだった。ミリアが薬草を選び、俺が成分を確認する。


「これがウドで、これがゴボウの葉です」とミリアが布の上に並べた。「どちらも体の老廃物を出す働きがあると言われています。でも組み合わせると、胃に負担がかかる場合があって」


俺は「術野の目」でウドの葉に意識を向けた。


葉の中の成分分布が色として見えた。緑の中に白い部分が浮かんでいる。有効成分の密度だ。


「このウドの有効成分は葉の中心に集中しています。ゴボウの葉は根の方が濃い。二つを合わせる時は、量の比率に気をつけると胃への刺激を抑えられるかもしれません」


ミリアが目を丸くした。「……それはどこから分かるのですか」


「見えています。成分が多い場所は色が濃く見えます」


「初めて聞いた観察方法です。父も師匠も、そんな見方はしていない」


「ミリアさんの植物鑑定と、俺の見方を合わせれば、精度が上がります」


「合わせる、というのが面白いですね。私の知識と、あなたの知識が補い合う」


二人で比率を調整しながら、煎じ方を変えながら試行を重ねた。


「この組み合わせだと成分が多い、こっちなら少ない」という記録が手帳に増えていった。クルトが隣で書記をやっていたが、「二人の話が早すぎてついていけない」と言いながらも丁寧に書き続けていた。


三時間後、一つの薬草剤ができた。


「なぜこれが効くか」という根拠が言語化されていた。今まで「効くらしい」という経験則で使われていた薬草の組み合わせに、理由が付いた。


ミリアが「……薬草師の師匠でも、ここまでは言えません」と言った。


「成分の名前が分からなくても、見えれば分かります」


「レオン様は、どこで学んだのですか」


俺は少し迷った。


「経験です」


「どんな経験をしたら、十五歳でそこまで分かるのですか」


ミリアの目が、真剣だった。追い詰める気持ちではなく、純粋に知りたいという目だった。


「……一日中、人の体と薬草を診てきた結果です」


「一日中というのは、どのくらいの期間」


「長い間、です。それ以上は、今は言えません」


ミリアが俺を見た。しばらく何も言わなかった。


「分かりました」とミリアが言った。「いつか話してくれると思って、待ちます」


追い詰めなかった。それが正直ありがたかった。


ヨハンが調合の様子を覗きながら「若様、こちらはどちらの方の薬草師のお嬢さんですか」と聞いてきた。


「カーセン村のグリーンウッドさんの娘のミリアさんです」


「良い連携ですね」とヨハンが言った。「若様が診断して、お嬢さんが薬を作る。二人で一人の医師のようです」


ミリアが「医師……」と繰り返した。


「ヨハンさんはよく言い当てます」と俺は言った。


薬草剤をフォード村に届けることになった。「その前に、エルン村の橋も気になる」と俺は呟いた。


「また橋ですか」とミリアが言った。


「橋は正直だから嫌いになれません。傷んでいれば必ず出る。隠れることができない」


ミリアが小さく笑った。「あなたのことを、ヨハンさんは正確に見ています」

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