ロケットストーブ召喚ですわ
さて、土器を焼きはじめる。最初は一気に温度を上げない。
土器が割れる可能性があるから。
空気の投入口の穴の開きを調整しながら、温度を調整する。
そしてしばらくしたら、
「さて、お腹を満たして水分補給もしないといけませんわ」
オオカミ肉と、それから竹に入れた川の水を火に掛ける。
さらに竹水の竹に魔法で作ったキリで穴を開けて、竹ごと火に掛ける。
「竹ごと?」
「竹ごとですわ。容器がありませんもの」
「土器は?」
「今さっき炉に入れたところでしょう」
しばらくして竹から水が吹きこぼれた。
「メグこれを半分お飲みなさい」
「いいの? 貴重な水」
「当たり前ですわ。水分補給しないと人間は簡単に死ぬんですのよ。ほら、つべこべ言ってないでお飲みなさい」
「大事な水分補給なのにウチからなんだね? アリシアやさしい」
なにそれ、恥ずかしいから止めて。
「い、いいからつべこべいわず!!」
「えー。つべこべ、つべこべ」
メグがつべこべ言いながら竹水を半分飲んで、こっちに渡した。
そうして私は、竹水に口をつけようとして、自分の迂闊さにハタと気づく。
「こ、これ間接――」
間接キスじゃん。
「あはは。女同士じゃん!」
普段から友達と一口とかやり合ってる陽キャ脳じゃないんだよ、こっちは!
私は意を決して竹水を飲んだ。
キスの味――ではなく、炭の味がした。
メグが炉の方を見た。
「土器はいつ使えるの?」
「まだまだ、じっくり焼かないと使えませんわよ。でも、そろそろ火を強くしたほうがいいですわね」
「なにぃ!? まだ強くなるというのか!?」
「なんの真似ですの」
「しらな~い」
存在するのかも怪しい台詞の真似をするメグはともかく。
私は、斜めの穴を完全解放して、燃料の薪も斜めの穴から投入。
すると、煙突から炎が吹き出した。
「なにこれ! ロケットみたいに火が吹き出してる!」
「そ、そう。参考にしたのは、その名もロケットストーブですわ!」
1980年代に考案されたロケットストーブ。
煙突効果という熱された空気が煙突で浮力を得て吹き出すことで内部の気圧を下げて、別の口から勢い良く酸素を取り込むことで温度を上昇させる。
この釜は条件を整えれば、中央は1100度に達することもあるから銅も十分溶かせる。そんな高温で粘土を焼けば、悪くない土器ができると思う。
「アリシアさんは凄いサバイバル知識だねぇ」
「私なんか全然ですわよ。本当のサバイバーなんて、ジャングルのほぼ全ての生き物の生態、毒、食料の確保方法、物作り。なにもかも知ってるんですのよ」
尊敬するサバイバーがそうだった。
「わたくしは、科学知識と大雑把な生き物の知識から予測しているだけですわ。だから、中途半端な知識しかない私は、キノコだけは絶対食べません」
「キノコ? 食料として優秀そう」
「奴らは見た目が似てるのに毒があったり無かったりするから危険ですの――栄養はあまりありませんし」
「まじかぁ」
「まじですわ」
「バナナの葉っぱ借りますわね。まだ土器が使えないので、お皿にしますわ」
「バナナの葉っぱでいいの?」
「笹の葉と同じですわよ。貴女の国では笹の葉や、たけのこの皮をお弁当箱代わりしたりするでしょう? バナナの葉っぱにも、同じような抗菌作用があるんですわ」
笹も竹もバナナも、イネ科だからね。
「アレと同じなのかぁ!」
タケノコの方はアク抜きしてないので、まだ食べられないから、近くで採集したブルーベリーみたいな果実をつまむムーブでいく。
「あま~い」
「甘いね!」
メグも嬉しそう。
味覚も、完璧に現実だ。
ジャングルみたいな植生だから、果実が豊富で食べ物と甘みには苦労しなさそう。
にしてもメグのパーソナルスペース、危険だなぁ。入っても全然痛くないし、むしろ向こうから近づいてくる。
こういう人は、いわゆるオタクを勘違いさせる人なんだよ。
友達がいない私みたいなオタクにも気さくに接してくれるから、こっちは「◯◯さん大好き!! 私は貴女のもの!!」ってなっちゃうんだけど、彼女にとって私はその他大勢のモブと同じで、大した執着もないんだよね。
お願い、私と下校して、そんな女と下校しないで!! 私を貰って!? 1人にしないでぇ!!
メグは今も隣りに座ってて、肩が触れている。
・・・・くっ、距離感バグってる陽キャはほんと危険。オタクにとって一番危険な生態の陽キャだ。
気をつけないと!
ブルーベリーを2人でつまんだら、小屋の中に採集して来た物を移動。
私は小屋の中に敷いた枯れ草の上に寝転がり、寝心地を確かめる。
メグは、
「ひゃー、草のベッドなんか初めて~」
とゴロゴロしたり
「ギャー、でっかい蜘蛛ー!!」
とか叫んだり、実に賑やか。
メグは蜘蛛を怖がって目を背けてるけど、私は蜘蛛をしっかり見る。
足が長くてキモいけど、毒蜘蛛じゃないね。ここは魔の森だから気をつけないと。
私は、小屋の中央で燃えている焚き火に、生木や生草を突っ込んだ。
「い、今から燻すしますから、数時間もすれば虫はいなくなりますわ」
もしもの時のために、虫除けの草とか見つからないかなぁ。
結構、色んな種類の草木を燃やしてみた。
「それまで寝転がるの止めとく~」
メグ涙目。
「良いセンスですわ。でもそれより小屋を出ますわよ」
「出るの?」
「燃やすとヤベー草木ってのがあるんですわよ。下手したら死んだり、肺がただれたり、失明したり」
一応、気をつけたけど。
実は見た目似てるけど、私の知らない植物が混ざってたかも知れないし。
「ひー」
メグが小屋から走って出ていった。
私も小屋を出て、風上に向かう。




