シェルターなんてちょちょいのちょいですわ
メグが、ファイアピストンを摘んで観察してる。
にしても、すっごい美人さんだなぁ。
アリシアでも、今みたいな化粧なしだと、負けてる。
なにを2次元キャラにルックスで勝っとんじゃ、このヒューマン。
まあ、アリシアは憎まれ役として描かれてて、ちょっと美人じゃないんだけど。
ソバカスとかあるし。
前世の私もあんまり美人じゃなかったし、人の容姿をとやかく言える立場じゃないけど。
ちなみに火を怖がらないモンスターが来たら、とりあえず逃げる。戦うかは様子を見て考える。
あと今日は、今から作る建物の屋根(草)を虫除けで燻したいから煙は外に出さない――もちろん一酸化中毒にならないように、建物を建てたら窓は開けっぱなしにするつもり。
「さあ、小屋を作らないとですわね」
「ロッジ?」
「そ、そんな物、今日中に作れるわけが無いでしょう」
ちゃんとした建物だと、屈強な男性が、二人がかりで一ヶ月位掛けて建てるの動画を見たし。ちゃんとした建物は、追々作るとして。
「竹と泥の小屋ですわ」
「そんなのできるの?」
大丈夫。仮拠点ってやつ。これなら2人いれば、結構サクっと作れる。
「いわば簡易シェルターですわ。ジャングルの土は栄養がなく、ちょっと掘れば、ほぼケイ素、アルミ、鉄ばかりの砂――あるいは粘土が出てきますわ。」
この辺りは、砂が出た。
日光に当たってれば、やがてレンガみたいになるだろう。
ジャングルで建築する動画で見た。
「おー」
私はメグに竹を細くして貰いながら、木とツタでコンパスをつくり、地面に円を描く。
その後、メグミに細くして貰った竹で、巨大な籠を地面に創造。
そうして側面に泥を塗って、草の屋根を掛けたら。
「小屋の召喚完了ですわ!」
「おーーー、もう小屋ができた! 完璧だよ、アリシアさん!!」
「ざ、ざっとこんなモンですわ!」
住む場所が決まったので、小屋の周りに棘のある植物でバリケードを作った。
「おー天然の有刺鉄線!」
「ですわね! これで痛みを覚えた魔物は近寄ってこないはずですわ」
モンスターって言っても生き物だ。痛いって思ったらその場を離れるはず。
次に、火の側に、粘土を用意。
「メ、メグ、この粘土で、バケツみたいなのと小さな器を作ってくださいまし。わたくしは焼き釜を用意しますわ」
「ラジャ! 土器って奴ね――でも、さっきの焚き火じゃ駄目なの?」
「800度以上は欲しいですわ。普通の焚き火だと、温度が安定しないんですの――あ、粘土の空気はしっかり抜いて下さいまし。空気が膨張して土器が割れますわ。水も使わないで下さいまし。今日は乾かしている時間がないので」
「が・・・頑張るよ」
「ね、粘土をこねるより、・・・・け、削る方が良いかもしれませんわ」
「なるほど! それなら空気も水も入らないね!」
今は釉薬(土器から水が染み出さないように塗るガラス質のコーティング)が無いから、素焼きの土器。
それでも高温で焼けば、水が染み出しにくい。
あ、なんかメグが糸で粘土を切り始めた。
「ひ、紐で粘土を切るのは、なかなかやりますわね!」
「ふへへ。アリシアさんに褒められた」
「糸はどうやって作ったんですの?」
「これ」
メグミが取り出したのは小さめのバナナ。
どうやらバナナの木の皮を割いて作ったらしい。
「へえ、バナナがあったんですのね」
「いっぱい有ったよ? 食べる?」
メグが、バナナを1本こちらに差し出して剥き始めた。
え、あ・・・。
そしておもむろに口に入れて、咀嚼。
「――!?」
そうして目を見開いた。
「ゲロ不味・・・」
「でしょうねぇ。――原種のバナナは齧れば、種は多いし、味は芋だし・・・・生で食えたものではないんですのよ」
「そ、そうなんだ?」
「あと、そもそもですわね・・・」
私は、このバナナの原種はデンプンって聞いた時、「ん?」ってなったんだ。まさか彼奴等・・・と。
「バナナってイネ科ではないですが、イネ科の遠い親戚ですのよ」
「ふぁ!?」
「実り方見てみなさいな」
「なんか一杯まとまって付いてたね・・・」
「そう細い果実――というか種子が沢山並んで実る、この特徴は・・・・」
「あ・・・・」
「そう、バナナはそもそも、木というより、巨大化した草と言えますのよ――バナナは生き様はほぼ、イネ科」
「焼いてみなさいな、ホクホクで美味しくなりますわよ」
その後メグは私の分と自分の分のバナナを、焚き火で焼いた。
「お醤油欲しい~」なんて言いながら食べてた。
「そのうち作りますわ」
「え!?」
なんか目を見開いてた。
「――アリシアさんの作ってる炉、なんか見たこと無い感じだね。それに800度って結構大変じゃない? どうやるん?」
「え、煙突効果を使いますわ」
「えんとつこうか?」
「ひゃ、百聞は一見にしかずですわ」
地面を掘って炉を作ろうかと思ったけど、それだと崩れたり、色々問題がありそうなので止めた。
じゃあどうするかっていうと、魔術で型を作って、その周りを粘土でぶ厚めに固めて、焼いて土器状にする。
「あ、割れた!」
「ヒビが!」
私は粘土を練っちゃったから、焼くと空気が膨張したり水が水蒸気になったりで、粘土が割れちゃう。
でも、割れたら粘土を塗り直して罅を埋める。
「大丈夫?」
「む、昔から炉は粘土で作られてきたんですわ。行けるはずですわ!」
なんて、すったもんだの結果、炉が出来た。
ドーム状の釜に長い煙突、地面を這うように伸びる空気取入口、釜へナナメに伸びる燃料投入口の付いた釜。
「おー! 炉っぽい!」
「ま、正に炉ですわ。紀元前から中世まで使われ続けた製鉄炉と同じ仕組みですの。すこし空気の循環効率が良すぎますけれど」
「鉄!? ――土器を焼くのに、製鉄炉はやり過ぎ!!」
今回は特に、長い煙突がチャームポイント。
煙突から熱気が猛烈な勢いで吹き上がり、空気取入口から空気が猛烈に吸い込まれる。
すると薪に酸素が大量に供給されて、完全燃焼に近くなる。
で、高温が得られるという、下手な古代製鉄炉よりよほど空気の扱いが上手い。
フイゴすら使わず、煙突から炎が勢いよく吹き出す仕組み。
私は完成した炉を眺めながら、呟く。
「これを・・・・2重構造にして蒸し釜にすれば、温度を逃さないさらなる高温釜にできるかもですわね」
「え、まだ変身を残しているの? 『53万なの?』」
なるほど、『53万』は知ってるんだ? ・・・・メジャーなアニメネタなら、メグにも振って良さそう。
オタクとしては大事なコミュニケーション情報。
Ctrl+sと。
「ま、まだ温度は上げれそうですけれど、今はここまでいいですわ」
「だね、あんま本気出されると周囲の温度が心配だし」




