ボス、焔爪と凍牙に怯えますわ
「だ、だって! わ、わたくし所謂、陰キャなんですのよ!! ・・・わたくしといても、ウィットに飛んだジョークとか言えませんわ!! つまらないでしょう!?」
「そ、そんなのどうでもいいよ! 1人にしないで!! ウチ、こんな場所で食料確保する方法すら知らないし! つまらないじゃなくて、詰みかかってるんだよ、ウチ! 貴女、なんだか頼り甲斐あるし、文明とか築けるんでしょ!? ウチも頑張るから助けて!!」
「つ、つまらない人間でもいいの?」
ホントにいいの?
「うんうんうんうん!」
お友だちにもなってくれる?
断られそうで怖いから聞かないけど。
「じゃ、じゃあ、ま、まあ・・・楽しくお話できなくとも良いと言うなら、お助けするのは、やぶさかでもありませんけれど」
「あ、ありがとう!!」
宮村さんの顔が輝いた。うーん、めんこい。
「では、2人でなんとしても生き残りましょう」
「はい! って言いたい所なんだけど・・・・ウチ、こんな場所で行きていく方法とか全然わかんなくて・・・頼りなくてごめん」
宮村さんが、また涙目になる。
「まあ、わたくしといるつもりなら、そこまで悲観的になる必要はないですわよ」
私は、不安気な彼女を勇気づける。
「な、なんで?」
宮村さんが目をしばたたかせた。なんだろう、ほんと可愛い人だなぁ。
やっぱり、人を引き寄せるっていうのかな。
側に寄ってもピリピリした感じがないというか。彼女のパーソナルスペースに入っても、落ち着くというか。
なんだか透明な気持ちにさせる人。
まあ、女の言う可愛いは信用できないって言うから。私を信用するんじゃねーぞ、このヤロウ。
「わ・・・わたくしがいるから、ですわ」
私は自分の胸を叩いてみせた。
異世界転生して男性キャラにちやほやして貰うために、現代知識を溜め込んできた夢女子のパワーを、お見せしましょう。
「えっ!? すっごい頼り甲斐ある。カッコイイ!!」
「ま、まあ、甲斐はありますわよ。安心なさい、わたくしが貴女を生き延びさせてみせますわ。では火起こしから。魔の森の魔物でも、一部の魔物は火を嫌いますわ――竜種が火を吐くからですけれど」
「・・・・なるほど。よっぽどその竜種ってのはヤベーヤツなんだね」
というわけで先ずは火起こし。
でも、なんで2人でゲームの世界に入っちゃったんだろう?
「じゃあ、宮む――」
ヤバイ、名前知らないはずなのに、名前呼ぶ所だった。
「わ、わたくしの名は――アリシア・フォン・ハルモニア。貴女は?」
「アリシアさんかぁ」
「ですわ」
「ウチはメグミ。宮村 恵。メグって呼んで、アリシアさん!」
「りょ、了解ですわ、メグ」
まさかあの宮村さんを、私が下の名前で呼ぶことになるなんて。
私とメグは、2人で握手を交わした。
◤オーダー・〝2人で生き残れ!〟◢
「と、とにかく当面生き残ることを考えましょう」
「うん。生活基盤を築くってやつだね?」
「ええ・・・・それもなんですけれども」
私はオオカミの死体を見た。
「アイツを倒さないと多分ここでは生き残れませんわ」
「アイツ?」
「こ、このオオカミ――ダイヤ・ハウンド達のボス。焔爪と凍牙の王・・・・」
「え・・・・お、王?」
「で、ですわ。仲間を殺した相手を捨て置くヤツではないんですのよ」
Loveナレクのボスの一匹だ。後半の最初に戦うボスなんで結構強い。
仕方なかったとは言え、奴の仲間を2匹も殺してしまった。
ヤツはいずれ仲間が殺されたことを知り、必ず私達を仕留めに来る。
「その前に武器を揃えたいんですけれども」
銃が欲しい。
ただ、発酵方法で火薬をつくるには時間が掛かりすぎる。下手したら年単位掛かる。
――西に、在ると予想できる塩湖まで行けば、直ぐ様火薬が作れるけど・・・・流石に生活基盤もない状態で長旅をするのは難しい。
銃は諦めよう――でも、この森で生きていくには武器は必須だ。弓・・・・そうだ、弓なら作れる。
「い、いずれ弓を作りましょう」
「弓!! それなら弓道部やアーチェリー部の助っ人にも行ったんで、お役に立てるかも!!」
「め、滅茶苦茶頼もしいですわね・・・・あと、文明を築くなら、スカルン鉱床は絶対必須ですわ。できればペグマタイト鉱床――それから干からびた塩湖があれば、完璧ですわね」
「なにそれ?」
「文明スターターパックですわ。ど、どれも必要な素材の取れる地形ですの」
文明のベースになる素材を提供してくれる、スカルン鉱床。
文明にブーストを掛けてくれる素材を提供してくれる、ペグマタイト鉱床。
そして、入手困難な生物由来の素材を提供してくれる、元海の干からびた塩湖。
ただ、ペグマタイト鉱床だけは、放射能が怖いんだよね・・・。どうすっかなぁ。
でも放射線じゃなくて、放射能を防ぐだけなら、そこまで難しくない。
放射性物質の粉塵と、分子の大きいラドンを防げばいいだけだし。
きっとなんとかできる。
とにかくせめて、スカルン鉱床だけでも見つけないと。
私はLoveナレク.sideMⅡの地図を思い出す。
南米を上下逆さにして、少しコンパクトにしたような大地。
そしてジャングルみたいな気候、西の山脈。
さらに、勇者PTのエルフの篭手についている宝石。
「当たる光の種類で色を変える宝石――アレキサンドライト・・・・なら恐らく有るはずですわ。火山があるので、スカルン鉱床も、アレキサンドライトがあるならペグマタイト鉱床も確率が高い。――そして気候からして、塩湖も」
「えー・・・・ほんとにぃ?」
「ほ、ほんとですわ――さて、とにかく今は今日を生きましょう。まずは文明の最初の第一歩、火を起こしますわよ」
「どうやって火を起こすの? 木を擦るとか?」
「そ、その方法はしんどいですので駄目ですわ。こ、ここで生きるなら、体力はできるだけ温存ですわ」
まずシダを乾いた木の枝にセット。
次に、魔法でマグネシウムの粉を作る。
「〖金属生成〗――11、マグニルムル」
できた粉をシダに振りかける。
粉状の物質を作るのは結構難しいな・・・これだと一度に頭サイズのマグネシウムの霧を作るのが多分限界。
「練習したら、もっと作れるかもだけど」
次に魔術で鉄の棒を造り、その半分を覆うように鉄を作った。
そうして棒を引き抜――ぬ・・・ぬけ・・・、
「メグ、そっちを持って下さいまし!」
「おう!!」
2人で引っ張り合い――抜けた!
で、この筒の中にシダを入れて、棒を差し込み――思いっきり押し込む!
すると中で空気が圧縮されて200度とか300度とかの高温になり、シダに火が付く。
古代のライター、ファイアピストンだ。
後はマグネシウムの掛かったシダに火を移す、そして細い薪とかに燃え移ればOK。
私は燃えていく細い木を見つめる。
(ファイアーピストンまで使えたっていうことは、原子レベルで現実と同じっぽい)
「火起こしって、棒と板を擦り合わせるんじゃないんだねぇ」




