コミュ障を炸裂させますわ
一応、アリシアの口調で話しかけておく。
「うおおおおおおっ! 人がいたぁ! こ、こんなのと戦うわけないってー!!」
「あと大声は止めなさい! 他の魔物を引き寄せますわ――竜種が来たら終わりですわよ!」
ちなみに私は大声をだしていない。今の「!」は、表情を煩くして表現した。
とにかく今の状態で竜種に出会ったら、それはもう死と同義だ。
宮村さんは青ざめて、走りながら両手で口を押さえた。
「貴女、木登りはできまして!?」
いや、できるだろうけど。
宮村さんは、こっちに向かいながら頷いた。
でしょうね。でも一応、
「〖金属生成〗――26、イェルン」
私は鉄のハシゴを作って、大木の立て掛けた。
宮村さんが、「えっ、なにこれ魔法!?」と、驚きながらも、顔色を悪くしたまま昇ってくる。
私は彼女の手を取った。
ダイアハウンドが迫ってきた!
「ハシゴを蹴り飛ばしあさばし!」
宮村さんが、ハシゴを思いっきり後ろに蹴り飛ばす。
ハシゴは、ダイアハウンドの顔をしたたかに打つ――前に、ダイアハウンドがその牙で砕いた。
「鉄のハシゴをスナック感覚で砕かないで下さいまし・・・・!」
どんな咬合力だよ。その前に牙が砕けないのかよ。
「ど、どうするの!?」
私に抱きついて震える宮村さんは、狼が鉄のハシゴをポ○キーみたいに噛じったもんだから、目が真ん丸。
「こうするんですわ!」
私は木を飛び降りる。
「な、なにしてるの!?」
「こっちですわ、犬っころ」
そうして罠へ狼をおびき寄せた。
狼は見事に罠のスイッチ棒を踏み抜き、ツタが足に絡み動きが阻害された。
流石に巨体が宙に浮くようなことはなかったけど、こっちには飛びかかれない。
「罠!?」
宮村さんも、木を飛び降りる。
そうして私に向かって唸り声を挙げるダイヤ・ハウンドに、宮村さんがそこらにあった棒を持って突き出した。
フェンシングの突きだった。
「ラッ!!」
だが、棒きれが魔の森のモンスターに突き刺さるわけがない。
バラバラに砕ける宮村さんの持つ棒。
「あっ!」
宮村さんが絶望するような声を出した。
ダイヤ・ハウンドの反撃を、持ち前の運動神経で下がって躱す、宮村さん。凄い。――運動神経も・・・・勇気も。
「〖金属生成〗――26 イェルン!」
私は魔法でレイピアを作り出し、それを宮村さんに投げる。
「えっ!? レイピア!?」
「わたくしに危機が訪れたら使ってくださいまし!!」
「うんっ!」
「一旦――頭を低くなさい!! 〖金属生成〗――12、ハフサルト!!」
「はい!」
宮村さんが素直に頭を下げてくれたので、私は投石紐をぐるんぐるん回して、2発ナトリウムを放って――ダイアハウンドを仕留めた。
「ば・・・爆弾?」
「ナトリウムですわ。水と触れると爆発を起こしますの。要は塩の片割れですわよ」
「お、お塩、怖わぁ・・・」
宮村さんは、半泣きで辺りを見回す。
「ところでさ、・・・・ここってどこ?」
「え? え、え・・・っと」
ヤバイ、見事にドモった。
危機が去ったら、私の対人恐怖症が「こんにちわ」し始めた。
宮村さんは、私のどもりとかあんまり気にしてないみたいだけど。
「なんか遠くの空に島とか浮いてるしさ・・・、ウチあんなの見たことないんだよね」
宮村さんが指さす方向には、確かに浮いてる島。
ほんとあの島なんなんだろう。
この世界、重力も燃焼も化学反応も、ほぼ地球そのままみたい。だから、あの浮遊島は意味不明になっちゃってる。
ゲームではあれはただの背景デザインなんだよね。なので行くとかできないし、浮いてる理由とか明示されてない。
マジ浮いてる――私の存在感くらい浮いてる。
予想をすると――地面の素材は植物で、中に軽いガスでも溜まってるのかな?
とりあえず、どこかと言うと。
「こ、ここは、ファーアースという世界(惑星)で。その北ティファ大陸ですわ」
というか、Loveナレクというゲームの中。
「ファーアース? 北ティファ? ――え、なにそれ・・・・ウチ地理苦手だけど、流石に地球に北ティファなんて大陸が無いのは知ってる・・・・」
「あと、この森は、入れば生きては出られないという魔の森ですわ」
「い、生きて出られない!?」
「ですわ。恐るべきモンスターが巣食う森」
「モ、モンスターがいるの!? そういえばさっきの狼もなんか頭が2つ有ったし」
「私はここに、追放されたんですの」
「えっ、追放? なんで・・・・!?」
「わたくしとの婚約を破棄したい王子の要求で、ですわ」
「・・・そんな、酷い!」
宮村さん、泣きそう。
ええ子や。
あとやっぱり「追放悪役令嬢物」というジャンルを、ご存知無さそう。
「だ、大丈夫ですわ、わたくしはここに文明を築くつもりですし」
「強! 君、凄いね! ・・・・ウチなら諦めちゃいそう。そんなことになったら途方に暮れて、泣くだけだよ。・・・・ねえ。――もかしてここって、異世界? ――って、言ってもわかんないか・・・」
異世界かぁ。異世界なんだよなぁ。
でもそれを説明しちゃうと、私が地球人だってバレちゃう。
――どうしよう、私が元は地球人でクラスメイトだって明かす?
でも、正体がバレて、「なんだ、陰キャのアイツかよー。ゲラゲラ」とか言われたら・・・・よし、秘密にしよう。
「ねえ、君、別の世界に行く方法とか知らない? ウチが元の世界に戻る方法とかわからない?」
「わ、わからないですわ」
「帰れそうにないのかぁ・・・・。ウチ・・・・こんな場所で生きていけるかなぁ」
宮村さんが、また泣きそうになった。
と、とりあえず彼女が生きていくのは彼女に任せて、コミュ障は退散しよう。
「――え、えっと、じゃあ、わたくしはこれで」
「ふぁ!? ――ウチ、置いてかれるの!?」




