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ゼロから嗜む、文明作り!  作者: 毘沙門 子子


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ホイールロックですわ

 メグが前のめり。


「お、おおお!? 本当に火縄なしで弾丸が飛んだ・・・!?」

「ホイールロックという、なんとフリントロックの前に出てきたタイプのマスケト銃ですわ」

「ホイールロック? フリントロック?」


 流石にこの辺りは知らないか。


「火打ち石を擦って火薬に火をつけるタイプですわ。フリントロックは1回。わたくしの作ったホイールロックは複数回」

「あれ? それフリントロックの方が不発増える?」

「増えますわね」

「・・・・なんで前に出てきたのに退化したの?」

「コストですわ」

「コストかぁ」


 そう、科学の進化の多くはコストが阻んでいる。コスト大事、だけど辛い。


 フリントロックは火縄銃みたいな面倒がないけど、不発が多い。

 でもこのホイールロック式は、面倒がないし不発が少ない。


「残りの部品は、木で作ればいいですわね」


 バレルを包む部分や、グリップなんかは、今組み合わせた分に合わせて削り出せば良い。


「はい、メグ。これは貴女の分ですわ。木の部分は自分で削り出して貰わないとですけれど」

「うわー! 先にもらっちゃった! 大事にするね!!」


 メグが銃の抱きしめながら〔今度はちゃんとアリシアさんの役に立つんだ・・・・〕と、決意するように小さく呟いてた。

 いや、焔爪と凍牙の王にトドメを刺したのは貴女だって。・・・・偶然とか思ってるのかなぁ。


 とにかくこれで、◤〝メグにのために銃を作れ!〟◢のオーダーは完了かな?

 オーダー〝メグのために銃を作れ!〟が終了したので、


◤オーダー〝生き残れ!〟◢再開。


 ただ、その銃は・・・・。


「すぐに今回作る銃より、もっと性能のいいのを作りますから、あっという間に出番はなくなり・・・・」「キミはアリシア・ラブ・ガンだ!」


 聞いてないし。


「というか、セクハラ止めてくださいな」


 こっちが本気になったら捨てるんでしょ!?

 おお怖い怖い。


「セ、セクハラ!? 恋ハラだよこれは!!」


 なにそのハラ・・・寂シア知らなぁい。


 すると、音が聞こえたのか、タカヤマさんがやって来た。

 拠点は本当にすぐそこだから。


「今の音・・・・本当に銃を作ってしまったんですか?」


 答えたのはメグ。


「うん! アリシアさんに、貰っちゃった!」


 タカヤマさん困惑。


「サバイバル状態ですよね・・・・現在。最初にサバイバル装備すら、ほぼ持たず、その中で銃まで辿り着く――アリシアさん、貴女、本当に何者なんですか?」

「何者と言われましても・・・・」

「貴女・・・・ちょっと異常ですよ」


 異常じゃないよ!?


 さて、次の日。


「畑もつくらないと」

「畑だー!」

「昨日、前の拠点で集めたヒエを使い切ってしまいましたし」


 昨日はヒエ粉を小麦粉の代わりにして、衣にしたんだよね。


「フライ旨かった! ――でも、ヒエの種なら残ってたよ?」

「あれは品種改良用の種籾ですわ――絶対に食べちゃ駄目ですわよ?」

「メグちゃん、心得たー!」


 確かに美味しかった。ヒエ粉は衣に向いてたし、魚も白身で淡白で。

 メグが腕を組む。


「でも、タルタルがあればよかったのになぁ」

「それもそのうち作りますが、お酢が、ちょっと時間掛かるんですのよね」


 果物でお酢を作るかぁ。

 お酒になったらあとは通気性を良くすれば、勝手に酢酸菌が入ってお酢になるだろう。

 後で暗所とツボ作って、果物を潰して入れとこ。

 果物なら、デンプンを糖にする麹(こうじ)菌がいらないから、楽ちん。


 にしても麹菌が糖にして、酵母菌がエタノールに変えて、酢酸菌が酢に変える――毎回菌が死んで入れ替わる。その間、どれだけの菌が死ぬんだ・・・・業が深すぎるぞ、菌ワールド。


「という訳で、ヒエを育てる畑を作りますわ」

「そういえば、なんでヒエ?」

「ここのヒエは観察したところ1粒植えたら、何百粒って実るようですわ。しかもヒエは雑草並の生命力があるから育てるのも楽。熱帯雨林気候なら、普通に育てても年に3度も実りますわ――種子がポロポロこぼれるので、収穫がちょっと面倒な部分はあるのですけれど」


 重量にすると品種改良されたヒエと品種改良された米じゃ、ヒエは米に収穫量が敵わないんだけど。

 ――いやまぁ、あんまり品種改良されてないヒエと、懇切丁寧に品種改良されたジャポニカ米の収穫量を比べるのがそもそも間違ってるんだけど。

 でもとにかくヒエは育てるのが楽なのが素晴らしいんだ。田んぼの雑草って言われるほど勝手に育つ。

「幾ら抜いても、次の年には田んぼに生えてくる」って米農家さんを困らせるくらい。

 だけど今は、その生命力こそ有難い。


「1年で3回収穫!?」

「環境を整えれば、もっと収穫できますわよ。暑い地域ではお米だって年4回も収穫しますの」

「パネー!」


 インドネシアやバングラディシュは4回収穫するらしい。


「まぁ一部、収穫の際、稲を切らないで種籾のみを収穫する方法を使ってるんですけども」

「えっ、お米って一年草じゃないの!? 一年草だと思ってた――そっかぁ、ウチ、稲を殺してお米を食べてたんだねぇ」

「良いことに気づいてますわね。メグって、たまにIQ高いですわ」


 メグが嬉しそうに頭を掻いた。――そこ、喜ぶ所じゃないぞ。


「大丈夫かどうかはわかりませんけれども。日ほ――」


 危ない、日本って言いかけた。まぁ、スキルのせいにしてるから大丈夫だろうけど。


「貴女の住んでいた場所みたいに、寒い冬が来る地域だと、冬に枯れてしまいますの。貴女、寒い冬が来る土地で育ったのではないですの?」

「うんそう、なんで分かったの?」

「日焼けしていない地肌が、随分白いので――」


 前に全裸見せてくれたからな。真っ白な地肌と日焼けの跡がすごかったよ。


「――なので一年草と変わりませんわ。だから稲を殺してお米を食べてるってのは罪悪感あんまり持たなくて良いかもしれません。死んでしまった稲から、お米を回収してる訳ですので」

「そっかぁ、良かった」

「稲は死に際、すべての力を使って、お米一粒一粒を強く豊かにするんですの。なので農民の皆さんは、彼らの形見を次世代に繋ぎ続けてるんですのよ。そしてその実りをわけてもらい、わたくし達はお腹を満たしていたんですの」

「持ちつ持たれつかぁ」

「大地に感謝ですわ」

「感謝~!」

「なのでヒエを育てますわよ。とはいえ、ジャングルみたいな痩せた土地では栄養素が表面にしかなく、作物が育たない」


 そんな場所で、年に何度も収穫してたら、土の栄養が物凄い勢いでなくなるから肥料必須。


「え、どうするの?」


 そう、どうするかって言うと、


「湖の底の土を持って来ましょう」

「湖の底の土?」

「湖の土は河から届いた栄養素や生き物の死骸が分解された栄養素などを、ふんだんに含んでいるんですわ」

「あー、河が栄養を運んでくるって習った気がする」

「そうですわ。そんな湖の底の土を、ジャングルの土みたいなパッサパサな栄養の枯れた土にまぜれば、作物が育つのに適した環境になるんですの――ナイルの恵み、スーパー・バージョンですわ!」

「スーパー・メグちゃんってことだね~!」

「そんな感じですわ」


 メグが「うおー!」と言って何かを溜めだした。


「アリシアさん、ウチの髪、そろそろ金髪になってきた!?」

「そんなことで金髪になってたら、かめ◯め波が出ちゃいますわ」

「か~め~◯~め~!!」


 って、かめはめはも不味――メグミは気づいてないみたい・・・・良かった。


「さ、さて。ジャングルは作物を育てる方法が焼畑くらいしかないってくらい、絶望的な環境ですわ。特に、巨木が栄養を独占してる地獄のような土壌を改良しないといけません。湖に行きましょう」


 私が湖に向かうと、泥を運ぶためにメグと編んだ籠をメグが全部もってくれて付いてきてくれてる。

 なんか頭に籠を被って、虚無僧ゴッコしてるし。


 スギタさんと、タカヤマさんも付いてきてくれた。


~~~


――アリシア記念館アイテムNo5 『銃』――


 アリシア様のみならず我々の身を魔の森の危険から救ってくれる守護神。

 その威力はご存知の通り、騎士の分厚い鋼の鎧をも貫く。


 ここに展示されているのは、アリシア様が最初期にお作りになられた銃。

『マスケト』と言うらしい。現在では考えられないほど、心許ない設計ではある。


 だが刮目せよ。貴殿が目にしているのは、アリシア様の身を護った英雄の勇姿である!


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