惑星のサイズを特定しますわ
「ただまぁ今回は512分の1はキツイですわ。多分78キロとか歩かされますわ」
「フルマラソン越えは、メグちゃんでも、流石に泣き出さざるを得ない」
「だから、さらに512分割しますわ。――というわけで、今より512倍細かい分度器を作りますわ」
「そんな正確な分度器作れるの!?」
「そこで1度分度器!」
私は木で、巨大な1度分度器を作る。
「ふぁい!?」
これを半分の半分の半分のという感じで区切っていけば。
「1度をさらに512分割。つまり、0.001953125度刻みですわ」
「うわ、細かっ」
「この角度で北極星との角度を測って、1メモリ変化する移動距離を測れば、惑星の円周が計算できますの」
「・・・なるほど」
さてアリシアの身長が公式設定だと150センチ。丁度いいのでアリシアと同じ長さの鉄の棒を作って、それを三分こ。
二分の一の棒を作れば、だいたいの1メートルが割り出せた。
んで、メグに松明を持ってもらい、分度器で越しに北極星を睨みながら棒をなんども倒しながら測る。
ちなみにリームは鳥目らしく周囲が見えていないみたい。
私の胸元で怯えている。
「ちょうど155回ほどで1メモリ動きましたわね。つまり、この棒155本分で、惑星円周の262144分の1」
「わー、わけのわからないこといわないでー!」
メグの手がプルプルしてる。松明の火が錯乱してる。
「まあ、わたくしも流石にちょっとしんどいですわ。でもここから逆算すれば、この星の円周が分かりますのよ――」
私は一生懸命、計算する。やっぱ暗算は苦手。
「――出ましたわ。この惑星の一周は、おおよそ、この棒40万本分の長さの惑星ですわね。やはり貴女のいた場所とほぼ変わらない円周の星みたいですわ。・・・・まぁそうでないと似た気候にならないですものね――これを基準に1シア長を作りましょう」
「『メグミは考えるのを止めた』」
メモリはこの棒の長さを半径に分度器に紐を当てて、メモリを描こう。
こうすれば、割り切れない円周率とかいう化物を見なくて済む。
「次は重さの単位ですわね」
「ほんとポンポン決めていくね」
「1辺が10センチシア長の立方体に入る水の量の重さを、1シア重としましょう――大きな数字を扱うときのために繰り上がりも考えないと駄目。もちろん進数は揃えますわ」
1000シア重で1キロシア重。
どの単位も、大分使いやすいはず。
私は魔法で鉄の薄いマスを作って、鉄の重さと同じ石を探す。
天秤を魔法で作り、片方の皿に石を乗せて、もう片方の皿に水をマスに入れて乗せる。
そうして釣り合う石を探した。
「あった。この石が1シア重」
私は長さや角度、重さの基準となる物たちを大事に小屋の奥に仕舞った。
「あれが、これから色々なものの基準になるんだね!」
「ですわ。――これでいつでも再現できる単位ができました。いつかより正確な定規、分度器、重りも作りましょう。この世界にはドワーフもいるですから、出会ったら頼んでみましょうかしら。さて、」
私は草のベッドに寝転がる。
「寝よ」
「いきなり!?」
というわけで、単位決めて寝た。
塩湖に旅立つ日がきた。
私はチェックを始める。
「水筒よし、食糧よし、武器よし。数日は旅することになるだろうし、気張らないと」
「うん!! 気合なら任せて!!」
「頼りにしてますわ!」
「うん!!」
「最悪、おんぶしてくだざいまし」
「お――おんぶ!?」
大丈夫。メグの体力なら、150センチしかないアリシアくらい、きっと大丈夫。
すでに旅の準備を負えていた、スギタさんとタカヤマさんに合流。
「武器作ったんですのね」
スギタさんが、木槌、タカヤマさんが竹槍を用意していた。
木槌、大丈夫かなぁ・・・・長い行軍だと重い武器は不利なんだよね。重さが体力を奪う。しかも木槌ってバランスが悪いから揺れてキツイと思うけど。
でも体力的に大丈夫なら、クラフトにも使えるから有難い。
スギタさんが、背中の木槌を揺らす。
「一応な。こんな物でも無いよりマシだろう」
「頼りない物ですけれどね」
こうして私、メグ、スギタさん、タカヤマさん、リームで出発。
道中、地図を描くのも忘れない。
地図を描く場所は、相変わらず竹簡。
ひたすら北西に向かって歩く。まるで西遊記。
だんだんとはっきり見えてくる、あの山脈は、竜山脈――別名竜のゆりかごとも呼ばれてたりする。
おびただしい数のドラゴンが生息しているって設定になってる。そしてドラゴンに見つかったら、死ぞ。
なので『風の裂け目』という、気流が乱れるせいで、竜がやってこない渓谷のみが砂漠への抜け道。
「あの山ってカルデラなんだよね?」
メグが遠くに白む山に目を細めた。
私の荷物はメグがほぼ全部持ってくれようとした。そうしたほうが「前進速度、速いでしょ」だって。
有難いやら、申し訳ないやら。
アリシアも乱子も、体力ないから。
まぁ、今はスギタさんとタカヤマさんも、分散して持ってくれている。
「ですわね」
「ドラゴンがいないのはなんで?」
「土に愚者の毒が染み込んでるって話(設定)ですわ、多分大地がヒ素に侵されてる」
「愚者の毒?」
「ファンタジー小説なんかでおなじみの硫化ヒ素ですわね。銀を黒くする毒ですわね」
「メグちゃんわかんない」
「まぁ、知らない人のほうが多いですわよ――知らないのが普通ですわ。多くのカルデラでは天然のろ過フィルターがあって水は安全なんですけれど、たまに運悪くヒ素がろ過できない地形が生まれることがあるんですわ。あそこがそうですわね」
そして土壌にヒ素を含むなら、人も住めない。地球でも、ある地域の井戸は水にヒ素が含まれてるって問題になってた。
あの辺りは赤土も少ないだろうしなぁ。
メグが思い出す顔になった。
「地球にもカルデラがいくつか有ったなぁ。でも天然水が売られるほど綺麗な水だったよ?」
「恐らく天然のろ過フィルターが、しっかり働いていたんですわね、」
多分阿蘇のこと言ってるんだろうなぁ。あそこの水は、世界でも有数の名水なんだよね。
「そんなヒ素のせいで、ドラゴンがカルデラ火山に棲むのを避けるんですわ。彼らは巨体を維持するために大量の水を飲みますのよ。けれどヒ素は、暗殺にも使われる毒。毎日少しずつ飲めば、身体を少しずつ蝕んでいく。そんな水を毎日飲むなんて、自分で自分を暗殺しているようなものですわ」
「なるほど、たしかに」
あのカルデラの水が綺麗ならなぁ、住め――いや、お隣さんがドラゴンなんてご近所トラブル真っしぐらだ。
~~~
――アリシア記念館アイテムNo2 『単位』――
アリシア様がお作りになられた、非常にわかりやすく扱いやすい単位。
そしてこれらを測るアイテムの分度器、モノサシ、そして重り。
なおドワーフ作の分度器、モノサシ、重り正確な原基は記念館の金庫の奥に、厳重に仕舞われている。
ここに展示されているのは、アリシア様のお手製の分度器と、モノサシと、重り(石)である。




